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精霊の道③

来ていただいてありがとうございます!


 

「そんな……ノエル君!」

私は追いかけようとして止められた。


「ダメよ!!ルミリエ!!」

「待って!ルミリエ嬢!!」

「落ち着いて!今からそこに飛び込んでも同じ場所へは決して行けないわ」

「ローズちゃんっ!!シモン様っ!!でもっ、ノエル君が!!」

消えてしまった……。涙が零れた。後から後から溢れて止まらない。


『ナカナイデ』

『ゴメンナサイ』


「謝ってすむ問題じゃないのよ、あんた達!」

ローズちゃんが精霊達に怒ってる。


……違う。それは違うわ。だって、ここは精霊の世界だもの。


「ロ、ーズ、ちゃん……」

「すまない……ルミリエ嬢。僕のせいでノエルが……」

真っ青な顔のシモン様。でも、シモン様のせいじゃない。私が油断したからだ。

「いいえ、シモン様のせいではありません。私が軽く考えすぎていたのです」

私は涙を拭った。彼らの領域へ何の対策も無く踏み込んでしまったのだから。ローズちゃんに危険があるって言われてたのに、私がノエル君の手を離してしまった。手を離さないでって言われていたのに。


「私も想定外だったわ。ルミリエがこんなに精霊に好かれるとは」

ローズちゃんもシュンとしてる。精霊達も何だかシュンとなっているみたい。


こういう時は深呼吸だ。


「すぅーっはーっ……よし!」

パチンと私は自分の頬を打った。

「ノエル君を探しに行きます」





「探すって言ってもね……。ここはそう簡単な場所じゃないわ。精霊の世界への道は一本道だから私でも分かるけど、色々な世界が隣り合っている場所なのよ。ノエルが今いる場所を探すのはとても難しいわ……」

辛そうに言うローズちゃん。シモン様の表情も厳しいものになる。


ノエル君のいる場所……。私はノエル君に貰ったブルーダイヤモンドのネックレスを両手で握った。ノエル君の瞳の色の宝石。最初にノエル君を見つけた時を思い出していた。神様のいた世界から真っ直ぐにここへ向かってこれたあの時のこと。とっても綺麗なノエル君の魂の色。私は遠い世界からノエル君を見つけることが出来た。私の……


ノエル君……


微かな気配を感じる。たぶん、分かったと思う。私が行く方向。ノエル君のいる場所が。今度は虹色のフローティングロケットを取り出した。私は幻影の魔術が使える。そしてそれは現実にも作用する魔法なんだ。あの魔物が現れた時のように。ドレスが作れるのならきっとできるはず。イメージする。私の手の中に虹色に光る糸を巻いた糸巻きが現れた。


「よし、こんな感じね」

虹色の糸を引っ張ってみる。結構太い糸だ。でもロープって程じゃない。草の蔓みたい。これならいけそうだわ。

「!」

「ルミリエ嬢これは」

ローズちゃんもシモン様も驚いた顔をしてる。あれ?この世界にも糸巻きってあったよね?ドレスを作る洋服屋さんの工房で見かけたもの。


「糸巻できです。この糸の端を持っていてもらって、私はノエル君を探しに行ってきます」

「糸巻きは分かるわよ。問題はこの糸の方!凄いわねこれ。ルミリエの魔法なのね。呼ばれた時から不思議な感じだったけどルミリエ、貴女って一体何者なの?」

私はローズちゃんに糸の端を渡した。

「話は後で。ロースちゃん、糸の端を持っていてくれる?」

「ちょっと、一人で行くつもりなの?一体どうやって探すつもりなの?」

「うん。前にもねノエル君をこんな風に探したことがあるの。だからたぶんノエル君なら見つけられると思うんだ」


「ルミリエ嬢……君は……」

シモン様も何か言いたげだけど、とりあえず私は見つけたノエル君の気配を一刻も早く追いかけたかった。

「だけど帰り道は分からなくなっちゃう。だからこの糸を辿って帰って来る。ローズちゃんにはここで目印になってて欲しいの」

「…………分かったわ。必ず戻ってきなさいね」

「ローズ?君まで何を?ルミリエ嬢!君を危険に晒すわけにはいかない!僕が行くよ」

「でも、シモン様にはノエル君の居場所が分からないですよね?」

二重遭難になっちゃう。

「大丈夫です!私、結構こういうの慣れてるんです!」

私はシモン様に笑って見せた。



そうは言ったもののさっきから体が震えてる。ノエル君が見つからなかったらどうしようって凄く怖い。でもそんなの嫌だ。絶対ノエル君と一緒に帰るの!


ブルーダイヤモンドのネックレスを強く握りしめて、一歩を踏み出す。

「いい?ルミリエ、別の世界が見えても飛び込んでは駄目よ?その世界に落ちて二度と戻れなくなるわ!」

「うん。わかった。ありがとうローズちゃん」


「待って!ルミリエ嬢!!僕も行くよ!」

シモン様が糸を掴んだ。

「ちょっとシモン!あんたが行っても何もできないでしょう?」

糸の端を握りしめたローズちゃんが呆れたように言う。

「そうかもしれないけど……。ルミリエ嬢を一人で行かせるわけにはいかない!」

悔しそうに唇を嚙みしめるシモン様はそれでも決意を込めて顔を上げた。


「止めても無駄みたいね。そういうの嫌いじゃないけど」

ローズちゃんは仕方が無いっていうふうにため息をついた。

「シモン様、絶対に糸を離さないでくださいね」

「分かった」

改めて私とシモン様はローズちゃんの精霊の道を外れて暗い空間へ足を踏み入れた。



待っててね。ノエル君。今行くからね。











ここまでお読みいただいてありがとうございます!



この場合どっちが糸巻きを持つのが正解なんでしょう?糸巻きはルミリエの力の源なので今回はルミリエが糸巻きを持って捜索にでました。

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