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幻影の魔術

来ていただいてありがとうございます。




持ち上がりの学園で友達をつくるのは途中から入って来た生徒には難しい。とっても魅力的な転入生とかミステリアスな雰囲気を持った美人だったりとかじゃない私には特に……。大体前世でもそんなに友達がいっぱいだった訳じゃないし、クラスの人気者だったって訳じゃないし。一人の親友と、二、三人クラスで話をしたり一緒にお昼を食べたりする子たちがいたくらい……。うーん、厳しいかも……。


しかも、しかもだよ?私はみんなの人気者の三人組の一人をいつの間にか奪い取っていった余所者みたいに思われてるんだよー。まあ、ずっと病気がちで誰とも交流が無かったし、珍しい黒髪だし、ついでに言えば転生者だし、完全に余所者なんだけれども……。そう。ノエル君とベルナール殿下とシモン様は見目麗しくて優秀なのにまだお相手が決まっていない、優良な婚約者候補だった。何で私がこんなことを知っているかって言うと、面と向かって言われたから……。




初日の授業終わりに、カトリーヌ様という侯爵家のご令嬢にお茶に誘われた。カトリーヌ様と五人のご令嬢たちに連れて行かれたのはカフェとか食堂とかではなくて、空き教室だった。いじめが始まるのかって身構えたけど、特に罵倒されたり暴力を振るわれたりってことは無かった。ただ、ただ、どんなに私がノエル君に似合わないかを説明されただけ。うー落ち込む……。


「ノエル様は本当に、学業も魔術の才能もおありなのよ」

「一時は王女殿下とのお話があったくらいなの」

「貴女には何か特別な才能がおありなの?」

「ノエル様の足を引っ張るくらいなら、わたくしだったら身を引きますわ……」

「病弱ってお伺いしてますけど、学園生活に耐えられますの?無理をなさらない方が良いのでは?ご両親も御心配でしょう?」

まあ、要約すれば「大人しく領地へ帰れ」ってことよね?でも、負けられないんだな!


「皆様。優しいアドバイスありがとうございます!確かに今は何もできないかもしれませんけど、これから頑張ってノエル様にふさわしくなれるように精進いたしますね」

私は精一杯の笑顔で頭を下げて、教室を出た。大丈夫。これくらいは覚悟してた。だって、あのノエル君と婚約してるんだもん。何もない私はきっと釣り合ってない。それでもノエル君のこと大好きだから、遅れてる分はきっと取り戻してみせる!






「とは言ったものの、勉強の方は何とかなりそうだけど、問題は魔術の方だよね?光の魔術って何ができるのかな?」

私は授業の合間の休み時間や自習の時間にも、校舎裏や空き教室で光を出す魔術の練習をするようになった。最初は小さな光が出せるくらいだったけど、ちょっと大きな光が出せるようになってきた。


光、ひかり……電気、ライト、懐中電灯、蛍光塗料、虹、プリズム、星……。

「虹かあ」

いろんな色の光……。雨上がりに見た虹。綺麗だったな……。

「あれ?」

両手を開いて考え込んでたらアーチを描いて手の上に虹が出現してた。小さな虹。雨は降ってない。ここは校舎裏の日陰で日も差してない。ってことはこれって私の魔術?え?魔術って幻をつくったりもできるんだ。すごいっ!もっといろんなもの出せるかな?実験、実験……!




気が付くと、白い天井が見える。私はベッドに寝かされてた。枕元ではノエル君が頬杖をついて私を見つめてた。

「……ノエル君?」

「気分はどう?」

「何ともありません……。え?ここは医務室?私どうして……」

私は慌てて起き上がった。

「良かった……何ともなくて……」

ノエル君の綺麗な瞳から涙が零れた。

「ノ、ノエル君?!どうしたんですか?」

「ごめん、安心しただけだから気にしないで。君、校舎裏で倒れてたんだ」

え?え?何で?混乱する私にノエル君が説明してくれた。


「魔力の使い過ぎだって。ルミリエは魔力量が多いけど、まだそれを使いこなすほどの体力が無いんだ」

「あ」

私調子に乗って魔術を使いすぎちゃったんだ……。

「ご、ごめんなさい……。私……」

「休み時間に一人で魔術の練習をしてたの?ルミリエが必死で勉強をしてるのは気が付いてたけど、魔術の練習まで始めたんだね」

「…………」

どうしよう、ノエル君に心配かけちゃった。いつも気にしてくれてるのに、どうしよう。こんなふうになるなんて思ってなかった。最近本当に体調が良かったから……。

「本当にごめんなさいっ」

俯いて謝るしかできなかった。ああ、バカだ私。嫌われちゃったかもしれない……。


「……シモンの他にも誰かに何か言われた?」

ノエル君が静かに尋ねてきた。

「…………っううん、そんなことないですっ!」

「…………そう」

ノエル君厳しい顔してる。ああ、ノエル君には分かっちゃってるみたいだ。でも今回の事は完全に私が悪いから……。

「魔術を使ってたら楽しくなっちゃって、つい調子に乗っちゃって……。ごめんなさい!私こんなだけど、嫌いにならないで!」

あ、涙が出てきた。これは駄目だ。泣くのはずるい……。でも止まらない。



「……何言ってるの」

ノエル君は呆れたように言って私を抱きしめた。

「今だって君を押し倒すの必死で我慢してるんだけど?」

「え?」

「……冗談だよ」

び、びっくりしたぁ……。驚きすぎて涙が引っ込んじゃった。


「それで?魔術の何がそんなに楽しかったの?」

「えっと、ちょっと恥ずかしいんですけど…………」

たぶんこんなの初歩中の初歩なんだろうなって思ったけど、せっかくできるようになったから。花を咲かせてみた。入学式の時に見たあの花に似た私の世界の桜の花を医務室中に。薄紅色のたくさんの桜とその花吹雪。その幻。懐かしい。

「これが私のいた世界の桜ってお花です」

「………………」


「ノエル君?」

あまりにも簡単な魔術すぎて呆れられちゃった?

「……今の、ルミリエがやったの?」

あれ?ノエル君すごく驚いてる?

「え?えっと、はい、そうです」

「なんて美しい……今のは一体……、香りや風まで……」

「ノエル君?あ、あの……」

「ルミリエ、今のを誰かの前で使った?」

「いいえ、できるようになったのは今日初めてですから……」

「良かった。しばらくは人前でこの力を使うのは禁止だよ。いいね」

何が何だか分からないけれど、ノエル君の真剣な表情を見て私は何度も頷いた。



「まったく、君はびっくり箱みたいだ……」

ノエル君は優しく笑うともう一度私を抱きしめてくれた。









ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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