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精霊の石

来ていただいてありがとうございます!



書き方戻しました。読みづらかったら申し訳ありません。



「これを見てくれないか?ノエル!ルミリエ嬢!」


そう言ってシモン様が持ってきた箱から取り出したのは平たい丸い光沢のある金属のようなものだった。ブルーレイに似てるかなって思ったけどそれよりも厚い。


「これに魔力をかけるとね」

シモン様がその魔術道具に魔力を込めると不明瞭だけど映像がその上に投影された。数秒だと思うけど花と人が映ってたみたい。

「へえ、見たものを記録する魔術道具か」

ノエル君も興味津々でその魔術道具を調べたり、魔力を込めたりしてる。映し出されたものはシモン様と同じような映像だった。

「面白いだろう?ノエル。ルミリエ嬢にもやってみてほしいんだ」

「え?私がですか?」

「うん。ルミリエ嬢の力は少し変わってるみたいだから」

「そうですか」

私はノエル君を見上げた。ノエル君が頷いてくれたので魔力を込めてみる。


「あっ」

映像が出た。さっきよりも鮮明に。綺麗な女の人がバラみたいな花がたくさん咲く庭を歩いてる。

「綺麗な人……」

「へえ、ルミリエ凄いじゃない」

ノエル君が感心して映像を珍し気に見てる。

「…………っ!!ルミリエ嬢っ!!凄いよ!凄すぎるっ!!」

シモン様が魔術道具を持ったままの私の手に自分の手を重ねた。とても興奮してるみたいで頬が赤くなって、眼鏡の奥の瞳がキラキラと輝いてる。

「シモン」

ノエル君の氷点下の声に我に返ったシモン様。

「ごめんねっ。ルミリエ嬢っ。つい……」

慌てて手を離すシモン様。ちょっと驚いたけど、シモン様は本当に魔術の事が好きなんだなってちょっと微笑ましくなったよ。


その後もシモン様が雪灯祭で手に入れた魔術道具を色々試した。私の力で動くものもいくつかあったけど、大体のものは動かなくて用途も良く分からないものばかりだった。それでも私は色々なものを見せてもらえて楽しかった。


「後はこれかな」

シモン様が最後だといって取り出したのは手のひらサイズの石だった。石って普通は冷たいよね?でもシモン様が持ってきたこの石は……。

「なんだか温かい気がしますね」

私はそのピンク色の石を両手で包んで頬にあててみた。

「やっぱりあったかい」

ローズクォーツみたいな石なんだけど、そこは魔術の世界!ほのかに光を放ってる。暗いところで光るのじゃなくて今みたいに明るい昼間でも光ってる。

「光ってますし、不思議な石ですね。こういうものはたくさんあるのですか?シモン様」

「光ってる?」

ノエル君が不思議そうな顔をしてる。そういうお顔をしてると出会った頃の少し幼い感じのノエル君を思い出してちょっと嬉しくなっちゃう。この一年ちょっとで随分背が伸びて大人っぽくなったから。

「僕にも光っては見えないかな。ルミリエ嬢にはそう見えるの?」

シモン様も戸惑ったような表情してる。そういえばシモン様も背が高い。ノエル君程じゃないけど前に「ノエルに追い越された!」って悔しそうにしてたっけ。お二人は本当に仲良しだ。


「正直それは今回手に入れたものの中ではハズレだと思ってたんだけど、違うのかな?何かの守護石かなと考えてた」

シモン様が私の手元を覗き込んだ。私はこれが一番気になってたから眺めまわしてみた。ふと魔法のランプ的な物語を思い出してしまった。ランプの形は全然してないんだけどね。

「そうですね。三回こすると何か出てくるかもしれませんね。なんちゃって」

私は思い付きで魔力を込めながらその石を三回こすってみた。


石は突然強い光を放った。眩しくて目を瞑ってしまった。

「うわっ!」

「ルミリエっ!!」


「なんか出た……?」

恐る恐る目を開けると目の前には透明な羽が生えた小さなピンク色の花?水晶でできたバラの花をさかさまにしてちいさな上半身をつけたようなものが飛んでる……。

「花の妖精?」

「失礼ね。私は精霊よ!」

「妖精と精霊ってどう違うの?」

「妖精は魔物に近いの!私はちがうもん」

「そうなんだぁ」

この世界って精霊も妖精もいるんだ!いつか会えるかな?


「なに普通に話してるんだ。ルミリエ」

「わわっ」

ノエル君が困ったような顔で私の肩を抱き寄せ、精霊ちゃんから距離を取らせた。

「失礼な子ね。私は何もしないわよ」

精霊ちゃんはプンプン怒ってる。

「あ、可愛い」

気を良くしたのか精霊ちゃんが近づいて来たので両手の手のひらを出すと乗ってきてくれた。

「やっぱりとっても可愛い」

「ちょっと、ルミリエっ」

ノエル君の焦ったような声をシモン様の興奮した声がかき消した。

「凄いっ!僕、精霊って初めて見たよっ」

シモン様が眼鏡を直しながら精霊ちゃんに顔を近づける。


「あなた達三人とも私が見えるの?随分私達と相性がいいのね……」

ノエル君、シモン様、私の間を飛び回ってた精霊ちゃんはそこで言葉を切ると私の方へやって来て、顔の前に止まった。

「そっか、私を目覚めさせたのが貴女だからなのね」

精霊ちゃんが瞳孔のない深い薄紅色の瞳で私の目を覗き込んだ。

「貴女って」

「私はルミリエ・ネージュです。よろしくね精霊ちゃん」

「ルミリエ……うん。よろしく。私は名前を持ってないから好きに呼んでいいわ」

「そうなんですね」

「それで?私にどんなご用?」

「え?」

「…………」

「…………」


数舜の間。


「ノエル君、どうしよう?」

困った私がノエル君を見上げるとノエル君は深くため息をついた。少しだけシモン様が複雑そうな表情をしてたのが目に入る。どうしたんだろう?

「ちょっと!用もないのに私を起こしたの?」

精霊ちゃんは怒ってるみたい。どうしよう。

「シモン、この石はお前の持ってきたものだ。何とかしてくれ」

ノエル君はそう言うとシモン様に光らなくなったピンク色の石を手渡した。

「そんなこと言われても……。それじゃあ、精霊さん?とりあえず僕の屋敷へ」

「ちょっと!私を目覚めさせたのはルミリエでしょう?私はルミリエの傍から離れないわよ!」

精霊ちゃんは私の髪に抱き着いて来た。


「えっと、もう一度石の中で眠ってもらうというのは……」

シモン様が提案するけど、精霊ちゃんはぷいっと横を向いてしまった。

「い、や!」

「…………ごめん。ノエル、ルミリエ嬢。しばらく頼める?僕も色々文献を探してみるから」

そう言いながらシモン様は申し訳なさそうに帰って行った。私とノエル君の元にはピンク色の石と精霊ちゃんが残されたのだった。


精霊ちゃんはサフィーリエ公爵家のお屋敷の中を探検してくると言って飛んで行ってしまった。ノエル君と私は慌てて追いかけたけど、不思議なことに他の人には精霊ちゃんの姿が見えてないようだった。

「『相性』とあの精霊は言ってた。僕達もルミリエが言ってた石の光は見えなかったし、ルミリエの力が作用してるのかもしれない。ルミリエは色々と規格外だからね」

「気が済めばここへ戻ってくるだろう。宿っていた精霊の石はここにあるし」

また二人きりになった部屋でソファに並んで座り、精霊の石を前にノエル君とお話してた。

「規格外……。迷惑かけちゃってごめんね、ノエル君」

元はと言えば私がうかつに魔力を込めてしまったからだよね。ちょっと落ち込んでしまった。


「前にも言ったけどルミリエはびっくり箱みたいで楽しいよ」

ノエル君はそう言って私を抱き寄せてくれた。顔を上げるとノエル君は優しく笑ってくれてる。私はホッとしてノエル君の肩に頭を預けた。窓の外は薄暗くなってきて、雪がチラチラと舞い落ちてる。暖炉では真っ赤な炎が熱を届けてくれてる。ノエル君はいつもあったかくて優しい。だから甘えすぎないように気をつけなきゃって思う。私が変わってるせいでノエル君に今日みたいに迷惑をかけちゃうこともあるんだ。

「私、ノエル君のそばにずっといられるようにもっと頑張るね」

私はノエル君の胸にそっと手を当ててノエル君の頬に口付けた。

「ありがとう、ノエル君」


「…………っ!だからっ、もう、無理なんだけど?」

そう言ってノエル君は私の唇をふさいだ。

「んっ」

次第に激しく、そして深くなっていく口付けに体の力が抜けそうになる。

「ノ、エル君……」

私の体を支えたノエル君はおでこや頬や耳元に何度も口付けを落とす。

「シモンの事もあるし、ちょっと抑えがきかなかった、ごめん」

「シモン様?シモン様がどうかしたの?魔術道具の事?」

「…………うん、まあそんなとこ」

ノエル君はまた私の頬に手をかけた。


「ただいまー!」

曖昧な言葉に首を捻った時、ちょうどお屋敷の探検を終えたらしい精霊ちゃんが戻って来た。慌てて少しだけ距離をとった。

「人間の住処ってどこも同じようなものねー!」

「おかえりなさい、精霊ちゃん」

「まあ、ここは前に見たとこよりずっと広いけどね」

「へえ、前にも誰かのお屋敷にいたことがあるんだね」


「はあ……。続きはしばらくお預けかな……恨むぞ、シモン……」

私の手の上で飛び跳ねる精霊ちゃんの話を聞きながら、ノエル君の呟きが耳に入る。


私も少し残念だなって思った。そしてそんな自分に驚いてしまったのだった。

「どうしたの?ルミリエ。顔真っ赤だよ?」

「ええっと、うん。何でもないよ?精霊ちゃん。ちょっとこの部屋熱いのかも……」

「そう?」

「ルミリエ?大丈夫なの?」

心配するノエル君にとても本当の事を言えるはずもなく、私は笑って何ともないって答えた。


私は自分に戸惑ってしまってその夜は自分の屋敷へ帰っても勉強に全然身が入らなかった……。







ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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