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雪灯祭④ 心の色

来ていただいてありがとうございます!




「いたいた!ルミリエ、兄さま、ノエル様。こんな隅っこで何してるの?」


踊り終えたリンジー様がこちらへやって来た。後ろにはベルナール殿下も。


「あら?お兄様、何だかご機嫌ね?こういった舞踏会はお好きじゃないのに」


「そう?別にいつもと変わらないよ。舞踏会は苦手だしね」


「おやおや、それは勿体ないな。麗しいご婦人方が着飾ってるのは見てて楽しいじゃないか」


リンジー様とシオン様の会話にベルナール殿下が入ってきた。わあ、学園にいる時も思ってたけど、綺麗な人達が揃ってるとなんだか眩しい……!今日は皆さんドレスアップしてるから更にパワーアップって感じ。今、ここにはいないけどアマーリエ王女殿下とフランシス様も美男美女だし綺麗な人がたくさん見られて嬉しい。しかも綺麗なドレスの女の人がいっぱいで見てるだけで楽しいよー!眼福っていうの?ベルナール殿下のお言葉にうんうんと頷いてるとノエル君が小さな声で話しかけてきた。


「ルミリエ、ごめん一人にして。近くにいると思ってて……」


「いいえ。気にしないでください。私は大丈夫ですから」


「……そう」


「ノエル様は素敵ですから、皆さんお話したいんですよ!」


「…………」


あれ?ノエル君の表情が少し変みたい……?どうしたんだろう?


「へえ、ノエルでもそんな顔するんだね」


ベルナール殿下が何だか楽しそう?


「ベルナール殿下、何を仰ってるんですか?」


ノエル君は何だか怒ってるみたい……?どうしたんだろう?不思議に思ってたら、


「ルミリエ嬢、良かったら私と踊っていただけますか?」


え?ベルナール殿下に、王子様にダンスに誘われた?


「!」


「え?」


ノエル様と何故かシモン様が驚いてる。どうしよう、王族の方のお誘いはお断りできない。ノエル君をちらっと見ると頷いてくれたのでお誘いをお受けした。


「喜んで」






曲は習った中では一番ゆったりしたもので一番踊りやすいものだったので心底ホッとした。本当にダンスは苦手なんだよね。


「ノエルがあんな顔するようになったなんて、本当に驚いたよ」


ベルナール殿下が何かを思い出すように微笑んでる。


「え?」


「何に対しても無関心でいつもつまらなそうな顔をしてたんだよ。君にこんなに執着してるなんて。……だからね、少しはやきもちやいてあげてね。女の子達に囲まれたノエル、困ってた。次は助けてあげて」


「助ける?私がですか?」


ノエル君のことを?ノエル君楽しくなかった?


「ノエルはね、ああいうのが一番苦手なんだよ。ルミリエ嬢と一緒にいたくてここにいるのに離れちゃ駄目じゃない」


そう言ってウィンク。そっか、ノエル君はたくさんの人の中にいるのは苦手なんだ。私とおんなじだ。そういえば最初に会った時も一人で昼寝してたっけ。


「はい。ノエル様がお疲れにならないように、気を付けます!!」


「……うーん、ちょっと違うんだけど、まあいっか」


曲が終わって一礼する。


「ベルナール殿下、ご指導ありがとうございました」


「ぷっ、固いなあ……、でも面白くていいね」


ベルナール殿下が笑いながら離れるとあっという間に綺麗なご婦人方に囲まれてしまった。




振り返るとノエル君がまたご令嬢様方に囲まれてる。シモン様とリンジー様は何処へ行ったのかな?あ、ちょっと離れたところでお二人で踊ってたんだ。ノエル君……笑ってるけど確かに顔が強張ってるみたい。私、気の使い方間違えちゃってたのかな?あ、ご令嬢様の一人がノエル君の腕触った!それを見た瞬間、その腕を後ろから引っ張ってた。ご令嬢様の手が離れた。良かった。


「ルミリエ?」


「ノエル様」


笑顔でノエル君の顔を見上げた。驚いた後にホッとしたようなノエル君の表情に私もホッとした。すっごく嫌だった。ノエル君に他の女の人が触るのは。ダンスなら仕方がないのかもしれないけど。ノエル君が嬉しそうに笑ってる。あれ?女の子達、波がひくようにいなくなっちゃった。


「ルミリエ、ありがとう。助かったよ」


「いえ」


ノエル君やっぱり困ってたんだ。私はさっき女の子に触られてた辺りに触れた。払うように。


「どうしたの?」


「お清めです!」


「オキヨメ?」


「ぷっ。ルミリエも女の子よねー。ノエル様、久しぶりに私とも踊ってくださる?」


戻って来たリンジー様が笑いながらノエル君をダンスに誘った。


「ルミリエはお兄様の相手をお願いね」


「リ、リンジー?!」


リンジー様はノエル君を引っ張ってフロアに出ていく。シモン様は途方にくれたようにしてる。


「シモン様はダンスはお好きじゃないのですか?」


「そういう訳じゃないんだけど、いや、やっぱりちょっと苦手かな……」


シモン様は眼鏡を直しながら少し俯いてしまう。


「私も一緒です!ダンスはまだまだ苦手で。今まで殆ど経験も無いですし。ご無理はなさらないでください」


「いや!苦手を苦手のままは良くない!」


「へ?」


「ルミリエ嬢一曲お願いできますか?」


「っ!は、はい!私で良ければ喜んで」


次の曲はちょっとだけ激しめだったから、途中つっかえつっかえになってしまってたけど、シモン様はずっと優しくリードしてくださった。うーん、シモン様すっごくダンスが上手だよ?苦手なんてことはなさそう。なんとか足を踏むっていうベタな失敗はせずに乗り切った!


「シモン様ありがとうございました。やっぱりまだダメダメですね、私は」


「大丈夫、充分踊れてたよ。今の曲は難しいところも多いから」


「シモン様はお優しいんですね」


「っそんなことは……」


わ、シモン様真っ赤だ。恥ずかしがりやさんなのかな?





「もー、そんな端っこで踊ってたの?お兄様ったら、あら、顔真っ赤ね。本ばかり読んでないで体力つけた方がいいわよ?」


「うるさいな。余計なお世話だよ」


踊り終えたリンジー様とノエル君が戻って来た。リンジー様はダンスが得意みたい。さっきみたいな曲も楽しそうに踊ってた。反対にノエル君は今ちょっとぐったりしてる?どうしよう、お願いがあったんだけど言い出しづらい。ノエル君は私の隣に戻ってきてそっと背中に手を当てた。


「さあ、そろそろ帰ろうか、ルミリエ。今夜は少し疲れてるようだし」


「そうなの?大丈夫?」


リンジー様とシモン様が私を同時に見た。実はそんなに疲れてはいないんだけど、これはノエル君と事前に相談してあったことだった。あまり体力が無いことを強調しておこうって。


「昨日も今日も楽しくて、はしゃぎすぎちゃって。でも休めば大丈夫です。今夜はこれで失礼します」


リンジー様とシモン様にご挨拶をしてノエル君と広間を後にする。人がほとんどいない廊下を通って庭園の近くを通った。あ、雪が止んで雲間から月が見えてる。ゆったりとした曲が遠くに聞こえてきた。やっぱりノエル君にお願いしてみよう。そう思って足を止めた。


「ルミリエ?どうしたの?本当に疲れた?」


「ノエル君。私どうしても最後はノエル君とダンスを踊りたいんです!ダメですか?」


ノエル君は無言。やっぱり大人しく帰れば良かったかな。後悔しかけたころ、ノエル君が私の手を取った。


「寒いから少しだけだよ?」


そう言ったノエル君の顔は今までにない程優しい笑顔で……。遠くに聞こえる音楽に合わせてノエル君と私はゆっくりと踊り始めた。お願いしてみて良かった……。幻想的な雪のランタンの灯り。空には月明り。白い雪の庭園の中のノエル君はとっても綺麗。


「ベルナール殿下やシモン様とのダンスはとても楽しかったです。でもちょっと緊張しました。やっぱりノエル君が一番です」


私はそっとノエル君の胸に頭を預けてみた。ちょっと甘えすぎかなって離れようとした時、ノエル君の動きが止まった。


「……今夜は嬉しいことばかりしてくれるんだね」


そう言って抱きしめられて口付けられた。どうしよう、誰か通りかかるかもしれないのに……。終わらない口付けに何も考えられなくなってしまう。







いつの間にか二人で乗っていた馬車が到着した先は何故かサフィーリエ公爵家で、両家には私がこちらに泊まることはあらかじめ伝達済みだったみたい。私は全然聞いてなかったよ?





ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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