雪灯祭③ 舞踏会
来ていただいてありがとうございます!
「ありがとう、ルミリエさん!貴女のおかげで満足のいくドレスが仕上がったのよ!」
「お役に立てて良かったです」
今回の雪灯祭の二日目の舞踏会はアマーリエ王女殿下とリンジー様に頼まれて幻影の魔術を使ってドレスのデザインを手伝わせてもらった。
学園の特別室にデザイナーを呼んで、私の幻影をデザイン画におこしてもらった。それをそれぞれフランシス様やマルク―ル侯爵家のお抱えの仕立て屋さんにドレスにしてもらったそう。アマーリエ王女殿下は深い青い色のドレス。リンジー様はシックなボルドーのドレス。二人ともとても似合ってた。アマーリエ王女殿下はフランシス様に、リンジー様はシモン様にエスコートされてお城の中の会場にいらっしゃる。
ノエル君と二人で王族の方々にご挨拶に伺った時にそんな風にお礼を言ってもらえた。お二人に喜んでもらえて私もとても嬉しかった。
そんな私はといえば、今回もノエル君にドレスやアクセサリーを贈ってもらって、朝からてんやわんやでお仕度をしてもらった。ドレスの色は桜色。とっても綺麗な色でアクセサリーは真珠のような宝石とやっぱり桜色をした綺麗な宝石を花をモチーフに仕立てたものだった。
雪灯祭のドレスコードは何か一つ白いものを身に付けること。ドレスでもいいけど、こちらの世界でも結婚式のドレスは白い色のものが多いので、あまり白いドレスは着る人はいないんだって。ちょこちょこ前世と似てる所があるんだよね。私の「白」はこの白い石だ。ノエル君の胸にも同じ白い丸い宝石と桜色の花のモチーフのピンがついてる。お揃い……。ちょっと恥ずかしい……。でも嬉しい。このネックレスと髪飾りとピンはノエル君がイメージを伝えて孤児院出身の職人に制作してもらったんだって。とっても可愛くてすぐにお気に入りになった。
「ドレスも髪飾りもとても似合ってる。前に見せてもらったましろの世界の花をイメージして作ってもらったんだ。気に入った?」
ノエル君は私を見て満足したように笑ってた。
「はい。とても可愛くて素敵です。ありがとうございます、ノエル様」
「……あのね、ルミリエ、前から言おうと思ってたんだけど……」
「はい?」
ちょうどこの時ダンスの音楽の演奏が始まったのでノエル君が私の手を取った。
「この話はまた今度でいいか。僕と踊っていただけますか?」
「はい。喜んで」
ダンスは正直まだ苦手で慣れてないけど、ノエル君と踊るのはとても楽しかった。あっという間に一曲目が終わって休んでいると、ノエル君はご令嬢様方に囲まれてしまった。弾き出されてしまう私……。うーんやっぱりノエル君は人気があるなぁ。
私はそっと壁際に下がった。お城の大きな窓の外は雪が一段と激しくなってるのが見える。
「これだけ雪が積もってたら、あれが出来そう……」
前から、というか前世からやってみたかったことがあるんだ。ちょっとやってみちゃおうかな……。ちょっと恥ずかしいんだけど。そんなことを考えていたら声をかけられた。
「何が出来そうなの?」
「シモン様!いえ、あのちょっと雪遊びがしてみたいな、なんて……」
「そうか、ルミリエ嬢は今まであまり外に出られなかったんだよね。大変だったね。でも、今は元気になって良かったね」
「ありがとうございます」
私は内心ちょっと驚いていた。シモン様とだけお話しする機会は今まで無かったような気がする。いつもリンジー様とご一緒で、あれ?リンジー様は?
「リンジー様はご一緒では無いのですか?」
「リンジーは今ベルナール殿下と踊っているよ。ほら」
シモン様が指さした方を見るとお二人が楽しそうに踊ってる!気が付かなかった!結構仲が良さそうに見える。お二人とも美男美女だしダンスもお上手でとっても素敵。
「いいの?ノエル、囲まれちゃってるよ?」
シモン様が心配そうに尋ねてくれた。
「ノエル様は人気があるので、私なんかが独占しちゃうのは駄目かなって……」
「……婚約者なんだし、独占が普通だと思うけど。ルミリエ嬢はちょっと自己評価が低すぎるのでは?」
「え?」
「前にも言ったと思うけど、君はいつも努力してるし、凄い力も持ってる。ノエルからも聞いてるけど、魔物と対峙してすぐに対策ができて戦えたのも素晴らしいと思うんだ」
前世でゲームで戦ってたなんて言えない……。実際に戦うことはしてないんだけど、イメージトレーニングは出来てたのかも。それに前回も今回も生身の体で戦ってなかったし、怖かったけど死の恐怖とかは無かったから思いっきりいけたんだと思うんだよね。
「そんなことはないです。自分では戦ってなくて、ノエル様に頼ってばかりなので」
「何を言ってるんだい?ルミリエ嬢の魔術は普通とは違う。最初はリンジーも不思議がってた。やけに現実感がある幻影だと。時が経てば消えるけれど、それはルミリエ嬢がそう思い込んでいたからじゃないのか?今は現実に影響するようになってるんだし。もしもそうならそれは多分魔術じゃない。魔法と呼ばれるものなんじゃないか?隣の大陸の山脈の向こう側にあるという精霊の国。そこには精霊魔法が息づいている。それと同種が同系列の魔法かもしれないじゃないか。ああ、興味が尽きないよ!」
熱を持って語り続けるシモン様に圧倒されちゃった。シモン様って本当に魔術関連の事が好きなんだね。
「ノエルの婚約者じゃなかったら……」
シモン様が言葉を切って私を見つめている。え?それってどういう……。
「たくさん実験に協力してもらうのにっ!!」
ですよねー。ああ、びっくりした……。あんまりにも真剣な顔だったからドキッとしちゃったよ。拳を握り締めて悔しそう。安心したらつい吹き出しちゃって笑いが止まらなくなっちゃった。
「…………ふふっシモン様は面白い方ですねっ」
「…………そんな風にも笑うんだ……」
「あ、すみませんっ。笑ったりして。面白いなんて、失礼しました」
「ううん、気にしないで。ルミリエ嬢は笑うと幼い感じになるんだね」
シモン様は眼鏡の奥で目を細めた。
「そうでしょうか?子どもっぽいですか?」
大人っぽいメイクとか教わるべき?
「あ、ううん。そうじゃなくて、その方が自然な感じでいいと思うんだ。それにそのドレスもネックレスも髪飾りも似合ってる。ノエルは流石だ。センスがいいし、君の良さを良く分かってると思う」
「はい!ノエル様は素晴らしい方です!」
ノエル君のことを褒めてもらえてとっても嬉しかった。
「随分と楽しそうだね。何の話をしてたの?」
肩を掴まれてノエル君に抱き寄せられた。驚いた。いつの間に?ご令嬢様方はいいのかな?
「ノエル様!今ちょうどノエル様が凄いってお話をしてたんですよ!」
「…………そうなの?そんな話しなくていいよ……」
ノエル君、ちょっと照れてるみたい。赤くなってる。かわいい!
「ノエル、やっと戻って来たの?ルミリエ嬢から目を離さない方がいいよ。さっきから結構見られてる」
シモン様が眼鏡を直しながらちらりと周りに目を向けた。
「!……そうか、ありがとう、シモン……」
ノエル君は少し顔を逸らした。見られてるって私が?あ、そうか!魔物騒ぎの事が知られちゃってるから?やっぱり魔物の出現が無いこの国ではかなりの大事だったんだよね。私はそっと周りを見回した。そういえば、確かに視線を感じるかも……。でもてっきりノエル君やシモン様を見てるんだと思ってた……。私、何か変な事してないよね?急に心配になって来た。私がおかしなことするとノエル君まで恥かいちゃうんだよね。気をつけなくちゃ!
あれ?なんだか不思議な感じな人がいる。ほのかに体が光ってるみたい?本当にほんのりだけど。金色の髪に白っぽい光……?なんとなく外国の人かなって思った。あ、広間から出て行っちゃった。昨日のランタンの光と似てるような……?気のせいだったのかな?
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