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みんなでお昼ご飯

来ていただいてありがとうございます!




「それで?どうして黙ってたの?アマーリエ王女殿下とのくだらない約束のこと」


遅めのお昼ご飯を食べながらノエル君は私に話しかける。ノエル君は私のすぐ隣の席に着いてる。こんなに近いと食べ辛いんじゃないかな?そうは思ったけど、ちょっと言い出せない雰囲気だった。何故か王女様との約束がノエル君にバレてしまってた。ノエル君の顔が怖い……。


あ、あったかいポタージュスープ美味しい。寒いからあったまる。温野菜のサラダも美味しいな。やっぱり寒い時はあったかいものだよね。この世界にも鍋とかあったらいいのに。あ、今度挑戦してみようかな。なんて現実逃避してみる。


「おいノエル、ご本人がいらっしゃるんだから、その、もうちょっと歯に衣着せたら?」


シモン様が同じ食卓で苦虫を嚙み潰したようにソテーされたお魚を食べてる。何故かネージュ伯爵家(ウチ)に、ノエル君、リンジー様、シモン様、ベルナール殿下、アマーリエ王女殿下までいらっしゃる。ネージュ伯爵家の人達は次々にやってくる高貴な方々に大騒ぎになってしまった……。なんかごめんね、みんな。ちなみに両親は領地の方でちょっと用事があって留守だった。



「あ、お構いなく」


なんてベルナール殿下がにっこりして、メイドさん達がポーッとなってるのを鋭い眼光でシャキッとさせたメイド頭のカルメさんと不測の事態に慌てず騒がすテキパキと指示を出す執事のリッチーさんのおかげで今みんなで美味しいご飯が食べられてる。


「…………」


一人だけとても居づらそうな感じでちょこんと席についていらっしゃるのはアマーリエ王女殿下だ。なんでも魔物が出現した時、絶対に逃げない自分も戦うと言って聞かず、あの場にいたそうだ。お姫様なのに無茶だなあ。ベルナール殿下もなんだけど、あの場ではノエル君に次いで戦闘力が高かったので、こちらは少しは理解できると思う。


突然の魔物の出現に興奮して動かなくなってしまったシモン様。そしてそんなシモン様を引っ張って逃げようとしたリンジー様も逃げ遅れてしまったんだって。




「あの、わたくし、何も知らずに酷いことを言ってしまって……」


もじもじと下を向いて指を合わせながらアマーリエ王女殿下が小さな声を出した。


「謝って済むことと済まないことってあるよね」


ぽそりと呟いたノエルくんはアマーリエ王女殿下の方を一切見ない。アマーリエ王女殿下は何も言えなくなってしまった。


「…………」


「ノ、ノエル君……、アマーリエ王女殿下はきっとノエル君のことが大事だからご心配で」


「その僕が一番大事なのがルミリエなんだけど?」


取り付く島もないや……。








「で?何だって皆さん僕の婚約者の家にお集まりなんですか?」


「いや、あの状況で放り出されても困るよ」


ベルナール殿下が頭をかきながら、顔を曇らせてる。


「そうよ。兵士さん達困ってたわ。一体何が起こったのかって。それに私だってルミリエのことが心配だったのよ!」


リンジー様が私を見てにっこり笑った。


「ルミリエ嬢のあの力って一体何?!」


シモン様は何故か目をキラキラさせてる。



私が前世の妹に会ったことや妹から新しい力を貰ったこと、私の力が進化(?)したことは皆さんが来る前にノエル君には説明してある。私の力はちょっと異質みたいでノエル君が難しい顔をして考え込んでた。とはいえ、もう結構な人数の前で魔法を使ってしまったので隠すのは無理だって判断したみたい。前世うんぬんは省いて、夢の魔物の事を公にすることになった。お昼ご飯の後に居間でお茶を飲みながら、ノエル君が皆さんに詳しく説明をした。


「……そんなことが……。我が国は地理的に魔物の襲来からは逃れてこれたけれど、これからはそうもいっていられないな。実はあの壺と同じものが複数マウティ商会の倉庫から見つかってるんだ」


ベルナール殿下が腕を組み、考え込んでいる。


「今までは形式上の戦闘訓練でしたが、魔物を持ち込む技術が開発されていたとなると、より実践的な訓練が必要になりますね」


シモン様が眼鏡を直しながら硬い表情をしてる。魔物を持ち込む技術っていうのはあの壺の事だよね。あの夢の魔物はちょっと違うところからやって来たんだけど、それを説明すると私の前世やら、神様やら、魔法少女の事も話さないといけなくなるのでノエル君が話さないって決めた。



「あの、ルミリエさん、助けてくれてありがとう。貴女凄いのね。わたくしは魔物を前にしてほとんど動けなくて役に立たなかったの……。貴女はどうしてあんな風に……」


アマーリエ王女殿下がおずおずと私に話しかけてくださった。前は緊張してたり色々あったりでちゃんと見てなかったけど、さすがお姫様!気品があって綺麗で可愛い。ぱぱっと何着か似合いそうなドレスやコスチュームを妄想してしまった。


「私はノエル様のサポートをしただけです。凄いのはノエル様です。それに怖いですよ、私も。でも、それ以上に欲しかったものがあったので。今回はノエル様が危ないと思って体(魂?)が動いてしまっただけです」


私は前回も今回も戦えてない。サポートしただけなんだよね。私も戦えたら良かったとは思うんだけど前世も今世も運動が駄目だから、まずは今世では体を鍛えることからかな。筋トレメニュー増やして頑張ろうと思ってる。


「そっかぁ。ノエル様が一方的に溺愛してる感じかと思ってたけど、ちゃんとルミリエもノエル様の事大好きなのね」


「リ、リンジー様っ」


そんなこと改めて言われちゃうと照れちゃうよ。


「当然でしょ。ルミリエは僕のためにここにいるんだから」


ノエル君は私の手を取って口もとへ。うわぁ、恥ずかしいっ。人前だと更にっ。でも、


「ノエル君、違いますよ?私がノエル君のそばにいたいんです」


そう。私は私の意志でここへ来たんだ。だから頑張るのは当たり前。王女殿下とのお約束が無くたって、もっと頑張らないと!




「…………いつもこんな感じなの?」


アマーリエ王女殿下の問いかけにベルナール殿下はどこか遠くを見てる。リンジー様とシモン様は諦めたかのように顔を見合せた後頷いた。


「…………相思相愛なのね。ごめんなさい。本当に余計なことだったのね。……可愛がってた弟が取られちゃったような気分だわ」


アマーリエ王女殿下は寂しそうだった。やっぱりノエル君のことも結構好きだったのかな?


「こちらといたしましては恩を仇で返された気分ですけどね」


「ノエル君、アマーリエ王女殿下は何もご存知なかったのですから」


ノエル君はまだかなり怒ってるみたい。全然王女様の方を見ようとしない。ベルナール殿下が肩をポンポンして励ましてるけど、王女様しょんぼりしちゃってる……。どうしたらいいんだろう?





「ルミリエ嬢!あの力って、一体どういうこと?いつもの君の魔術とは違ってたよね?どうして魔物の事が分かったの?君って一体何者なの?」


会話が途切れたのを見計らったように、シモン様が我慢できないというように話し始めた。そういえばシモン様は魔術の研究に熱心だった。魔術研究の盛んな隣国への留学を考えてるらしいってリンジー様が言ってたっけ。


「えっと……」


どう説明したらいいんだろう?うーん、前世の事を話さずに……、レベルアップしたとか?うーんどうやって?って聞かれたらどう答えればいいのかな?私が困っていたらリンジー様が助け舟を出してくれた。


「ちょっと待ってお兄様!今日はもうお暇しましょう。ルミリエは病み上がりだったのよ。忘れてたわ。もう休ませてあげなくては!」


「ええ?でも」


シモン様が不満の声を上げる。


「あ、私はもう……」


そこでノエル君が私の手を強めに握った。


「そうだよ。もう疲れただろう?休まないとね。シモン、その話は後日ゆっくり時間を取るよ」


ノエル君の天使の微笑み。でも圧を感じる。凄く感じるよ?


「う、うん。分かったよ。それじゃあルミリエ嬢お大事にね。今度じっくり話を聞かせてね」


シモン様も諦めきれなさそうだったけど、ノエル君の圧力に負けてた。結局、後日また詳しい事情説明をすることになって、今日は皆さんそれぞれに帰っていった。







みんなが帰って行ったあと、お茶を淹れ直してもらってやっと一息つけた。今はノエル君と二人きり。窓の外はまた雪がちらちら舞い始めてる。


「幸い壊れたのは学園のエントランス広場だけだから。校舎は無事だし、すぐに再開されるよ。大丈夫」


「そうですか。良かったです。あ、あのノエル君?」


一緒にソファーに座るのは分かる。そのまま肩を抱かれて、抱き寄せられて、頭やおでこや頬に何度も口づけられてる……。他に誰もいないけど、やっぱり恥ずかしい……。


「ルミリエに忘れられて寂しかったし、悲しかったし、ショックだったよ」


もし私がノエル君に忘れられたらと思うと胸がギュッと締め付けられた。


「ごめんなさい……」


「違うよ。君を責めるつもりはないんだ。僕が甘かった。済まなかった」


「そんな!ノエル君のせいじゃないです」


贈り物に違和感を感じた時点で怪しむべきだった。


「ううん。あの男は君を諦めてなかった。もっと警戒しておかなきゃいけなかったんだ」



ノエル君の手が私の頬に触れた。綺麗なアイスブルーの瞳が近づいて唇が重なった。風の音が強くなってきて、雪が強く降り始めた。


「ん……」


はっと短い息をついては繰り返される口づけに、頭の奥がクラクラする。窓を叩く雪の音だけが響く中、ノエル君と私はしばらくずっとそうして離れられずにいた。用事を済ませた両親の帰宅が知らされるまで。











ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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