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シモンの詰問

来ていただいてありがとうございます。



学園の授業には何とか問題なくついて行けそうだった。領地で勉強を見てくれてた家庭教師の先生、ありがとう!今度帰れたらしっかりお礼を言おうと心に誓った。問題なのは魔術の授業なんだけど、この年まで魔術を使ったことが無いって説明したらとても驚かれた。今度実技の授業の前までに初等部へ行って調べてもらってくるように言われてしまった。ちょっと恥ずかしい?のかな。でもせっかくだから魔術、使ってみたい!


クラスはノエル君とは離れてしまった。授業終わりには教室で待ってるように言われてるんだけど、今日は移動教室の後、先生と少しお話をしていたから、少し遅くなってしまった。

「ルミリエ・ネージュ伯爵令嬢!」

急いで戻ろうと思っていたんだけど、シモン様に学園の廊下で呼び止められて、校舎裏に連れ出された。


「君、ちょっと怪しいんだよね。君は何者だ?いつノエルと会ったんだ?」

いきなり怖い声で質問された。やっぱりシモン様に嫌われてた。っていうか、疑われてたみたい。

「ちょっと調べさせてもらったんだけど、君、病気がちでほとんど領地から出てないよね?ノエルがそちら方面へ出かけたって話は聞いたことがないし。どういういきさつで婚約することになったの?」

シモン様は眼鏡を直すと、私を睨んだ。

「君、ノエルの兄上との縁談があったんだよね?それが破談になったからって、ノエルに責任を取らせるつもり?」

「そ、そんなことはありません。縁談のことは私も知らなくて……」

うう、私が転生者だって説明した方がいい?魔法少女の事も?そんなことしたら正気を疑われそう……。説明できないし、嘘をつくのも嫌だし、どうしたら……。


「それに君、何か魔術を使って、ノエルを洗脳してるんじゃないの?」

「え?」

ルミリエ(私)は療養の合間に結構勉強は頑張ってたけど、魔術の実践は全然だった。知識はあるけど自分にどんな魔術が使えるのか分からなかった。魔術を使うのにも体力が必要だし、起き上がるのがやっとだった私にはちょっと無理だったのだ。魔術の本も結構読んだけど、そんな魔術あったかな?もしかして禁術って言われてる魔術の事?

「私はまだ魔術を使ったことがありません。なので、自分がどんな力を持っているのか分からないんです」

私の言葉に、厳しい表情を浮かべるシモン様。


「ノエルがこんな風に女性に夢中になる事は今までになかった。絶対におかしいんだ。君、ノエルに何をした?今のノエルは以前と違って勉強や政治のことに身が入ってる。いい傾向なんだ。もし君が邪魔をするようなら、僕は君を許さない」

シモン様、すごく怒ってるみたい。本当にノエル君の事大切に思ってるんだ……。どうしよう、私は魔術を使って洗脳なんてしてないし……。





「それ以上言うなら、許さないのは僕の方だ」

ブリザードのような声が会話に割って入った。

「ノエル!」

「ノエル君……」

「姿が見えないと思ったら……。こんなところで人の婚約者に何してる?シモン」

あ、ノエル君怒ってる……。どうしよう、勝手に来ちゃったから、心配させちゃった……。

「君は、一体どうしてしまったんだ?ノエル。女性になんて興味なんかなかったのに!おかしいだろう?」


ノエル君はふうっと息をつくと空を見上げた。

「ルミリエとの婚約を望んだのは僕の方だ。僕が月明かりの下で初めて見た彼女に一目惚れしたんだ」

えええ?一目惚れ?そんなの初めて聞いた……。そうなの?うわぁ、顔熱くなってきたー。

「え?え?」

シモン様が戸惑ってる。

「初めてだったよ、こんな衝撃は。まるで別世界の扉が開いたみたいだった……。ずっと彼女と会えなくても気持ちは変わらなかった」

別世界……。まあ、確かに異世界から来たしね、私……。

「い、いや、あの、僕が聞きたいのは……」

シモン様はしどろもどろ……。

「やっと見つけて、説得して、口説き落として……。やっと婚約できたんだ。シモン、君はそれを邪魔するの?」

「そ、そんなつもりは……」

転生してるって分かって、お世話になったノエル君にお礼を言いたくて訪ねて行ったのは私の方なんだけど……。


「それに、色々なことに興味が湧いてきたのは、ルミリエのおかげなんだ。ルミリエがいなかったら、僕は変われなかった」

「ノエル君……」

魔法少女にしたこと、怒ってなくて本当に良かった……!

「…………」

シモン様が悔し気に俯いてしまった。


「……、でも、確かに僕は魔法にかかってしまったのかもしれない……」

え?!ノエル君?何を言い出すの?私、魔法なんて使ってないよ?

「やっぱり!」

シモン様が食い気味に顔を上げた。

「恋っていう魔法に」

そう言ってノエル君は私を引き寄せて抱きしめた。


「っ!バカバカしいっ!僕は帰る!」

顔を真っ赤にして、シモン様は去って行った。私の肩に顔をうずめたノエル君は震えていた。笑いをこらえてるみたい。

「ノエル君、真面目なシモン様をからかうのは良くないですよ?」

「からかってなんか無いよ。おかしかったのは自分の事だから」

ノエル君はまだおかしそうに笑いながら、私を見つめた。優しいアイスブルーの瞳。綺麗。綺麗な人だなぁ本当に。

「自分?ノエル君ですか?」

「うん。こんなに誰かさんを好きな自分がおかしいんだよ」

「っ……」

「あれ?さっきの冗談だと思ってた?」

ノエル君の顔が近づいてくる。

「あの、ちょっと待って……ノエル君」

ここは学園で、誰がくるか分からないよ?

「全部本当だし、僕は本気で言ったよ」

急に真面目な顔になるのずるい。逃げられない。ノエル君の腕の力が強まって唇が重なった。いつもより長いキスで頭がくらくらした。






後日、初等部の魔術鑑定の先生にみてもらった結果は、ちょっと不透明な感じだった。大きな鉱石の結晶に手をかざして魔力を流し込んだら、薄くて白っぽい光に虹色の光がこれも薄く混ざる感じに光った。魔力量は多いらしいんだけど、魔術の方向性が良く分からないみたい。光属性の魔力らしいんだけど、一般的な光属性の魔力とは違うんだって。ちょっと使ってみないと分からないって言われてしまった。鑑定結果を書面にしてもらって担当の教師に渡したら、

「興味深いな。実験、いや実践が楽しみだ」

って笑ってた。あれ?この先生怖い感じ?












ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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