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前世の終わり

来ていただいてありがとうございます!




夕日が差し込む台所。いつの間にか食卓で妹と向き合って座ってた。ネージュ伯爵家とは比べ物にならないくらい狭いアパート。でも居心地のいい場所。懐かしい。そう思えてしまうのが悲しかった。


「まだお母さん帰ってきてないんだね」


前世の妹、真綾(まあや)が私のお気に入りのマグカップに紅茶を入れてくれた。いつもはお姉ちゃんの私が真綾のコーヒーを淹れてあげてたのにね。


「うん。最近お母さん昇進して忙しくなったんだよ」


「そうなんだ!良かったね!」


真綾の話はお母さんのことや高校のこと、おじいちゃんおばあちゃんのこと。真白(わたし)の話は今生きてる別の世界のこと。二人で報告会。


「異世界転生か。まさかそんなことになってるなんて。小説みたいね!真白が伯爵令嬢かあ、あははは。婚約者の人どんな人?かっこいいんだ!いいね!私も一人に絞ろうかな。そのうちにね」


「真綾ってば相変わらずモテるんだねぇ」


妹は引っ込み思案の私とは違って友達がたくさんいる。コミュ力が凄いのだ。


「何言ってんの?真白だってモテてたよ?気が付かなかっただけで」


真綾は自分のカップのコーヒーを一口。


「え?そんなことは無いと思うよ?」


「はああ。そういうとこだよねー。けっこうガチの男の子達いたのに……。かわいそ」


真綾は頬杖をついて私を呆れたように見てる。


「え?」


うーん、あんまり男子と話したことも無いんだけどなぁ。


「まあ、その話はいいや。本題に入ろ。時間も無いことだし。あの仮面の男から聞いたよ。今の真白が病弱なのはこっちの世界を襲った魔物のせいなのよね」


「え?そうなの?」


そうだったんだ……。知らなかった。ちょっとビックリ。魔物の影響って強いんだね。


「ちょっとアイツ説明してないの?!サイアク!そうよ。魂に傷があるんだって。ノエルだっけ?その人のおかげで今はその傷をかなり抑えられてるの。でもカンペキじゃないのよ」


真綾は腕を組んだ。あ、これこの子がイライラしてる時の仕草だ。けっこう珍しい。そして懐かしい。そして私はまた少し思い出す。ノエル君。私が魔法少女に選んで、一緒に魔物と戦ってもらった……。


「やっぱりそうなんだ。ノエル君のお願いは私のために使ってくれたんだ。申し訳ないことをしちゃった。せっかくのお願いなのに……」


「はああああっ。また勘違いしてるし。ノエル君は真白に元気で生きててほしいから、それを願ってくれたんでしょ?だったらそれはそのノエル君の願いだから、いいんだよ!」




『離れて行かないで』


あの秋桜の夜のノエル君の言葉を思い出した。それと一緒にたくさんもらった楽しい時間と言葉も、一気に思い出す。その瞬間もやがかかってたような頭が一気に晴れた。


「うん……ありがと、真綾」


涙が零れた。


「私も同じよ。だから私の力もあげるわ」


「真綾の力?」


「うん。私の魔力ってやつ?真白にもあるでしょ?私のと真白のを合わせて、バーンと健康になっちゃいなよ。こっちの世界じゃ使えない力だもん。そっちで役に立ててよ。魔法の力!」


真綾の体の中から光が溢れて、真綾の両手に集まってくる。


「魔法の力」


魔術とは違う力。真綾は私にその光を渡してくれた。光が私の中に満ちていく。胸にかけてたフローティングロケットが虹色に輝き始めた。


「うん。願いを叶える力だって、神様が言ってたよ。これでもう大丈夫。真白は負けないよ。何でもできる。私も、私もさ、真白が守ってくれた世界で私も頑張るよ!じゃあねお姉ちゃん。今度こそ本当にさよなら」


「うん、ありがとう。私も私の世界で頑張るよ!本当にさよなら。お母さんのことお願いね」


だんだんと薄れていく懐かしい前世の家の光景。ああ、もう本当にここへは帰ってこれないんだね。涙がまた零れる。真綾も泣いてる。それでも二人とも笑顔だった。最後に手を振る真綾の姿も消えた。




「今から帰るから。待っててね!ノエル君」


私は(そら)を駆けた。






「え?何あれ?」


戻る途中で気をひかれて見た先にあったものは、なんかとんでもないものだった。




ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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