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両手の中の

来ていただいてありがとうございます!



わぁ、また雪がたくさん降ってきた。窓枠にも積もり始めてる。


「ルミリエ様、お寒くないですか?」


新人だと言うメイドのクレアさんが温かい香茶を持ってきてくれた。


「ええ、大丈夫。ありがとう、クレア」


「お勉強もほどほどになさいませんと。ノエル様がご心配なさいますよ?」


「そうね。もうちょっとだけ」


クレアさんは仕方がないというようにため息をついて部屋を出て行った。クレアさんは私には何故か甘いので好きなようにさせてくれる。


「ふう、また熱でちゃった……元気になったって聞いてたのにな……覚えてないけど」


体がだるいな。でも不安でなんか凄く勉強しなきゃって思うの。学園に通ってるんならなおさら。本当に覚えてないんだけど。でも教科書は何度も開いた跡があって書き込みもしてあって、授業のノートもある。制服もクローゼットにあって。学校へ通えてたんだなって思える。


そしてノエル様が毎日お見舞いに来てくれる。婚約も本当っぽい。だからかな。不安になる。もっと勉強しないとノエル様に会えなくなっちゃう気がする。だって、私他に取り柄が無いし。かといってものすごく頭が良い訳じゃないから、学園の授業にはついていかないと駄目だと思うの。ノエル様今日も来てくれるかな?出来るなら私も学園に行きたい。でも怖い気もする。複雑。


「綺麗……」


ベッドの上で教科書を広げながら、右手にアイスブルーの宝石のネックレス。左手にはフローティングロケット。二つともノエル様に頂いたもの。見てると安心する。嬉しい気持ちになれる。でも……。


「ああ、何だかまた頭が痛いかも」


体も重いみたい。クレアさんの言う通り寝た方が良いかな。もうちょっと勉強したかったけど。私は教科書を閉じてベッドに潜り込んだ。ノエル様のネックレスとフローティングロケットを握りしめて。












「そしてここはどこなの?私は部屋で寝てたはずよね?」


目の前に広がるのはインペリアルトパーズの空。柱がいっぱい。虹がかかってて綺麗な所……。


「ギリシャの神殿みたい。ん?ギリシャって何だっけ?そうそう、神殿があるところで!」


今の世界と違う前の世界の……。そう、前世の。私には前世があって一度命を落として、ってなんで忘れてたんだろう……!


「あれれ?うさぎちゃんまた来ちゃったの?なんだ今度はまだ生きてるじゃない」


「何てこと言うんですか!あれ?白い仮面の人?え?私死んじゃった?やだっ透けてる?なんか白いワンピース着てて幽霊みたいなんだけど、どうなってるのこれぇ?!」


私は頭を掴んで叫んでしまった。ブルーダイヤモンドのネックレスとフローティングロケットが揺れてる。夢かな?それとも本当に……?


「うーん。大丈夫みたいだよ?でも記憶が封じられてるみたいだね?面白いことになってるね」


私の目を覗き込んだ白い仮面の人の表情は分からないけど、声で楽しそうにしてるのは分かった。


「全然面白くないんですが……」


「ちょうど良かった。妹ちゃんが話したいって言ってるよ」


「妹、ルミリエ()には妹なんて、……ひょっとして真綾(まあや)?」


真白は前世の私の名前。そして真綾は真白(わたし)の妹。少しずつ思い出してきた。


「うん、行ってらっしゃい。妹ちゃんのお願い、やっと叶えてあげられるよ」


「真綾のお願いって……」


「お姉ちゃんが困ってたら力になりたいって」


私の意識はそのまま弾かれて遠くへ飛ばされた。懐かしい()のところへ。











『城の兵士 上級捜査官二人の会話』


「これは何だろうな?マウティ商会の倉庫から出てきたんだけど」


「丸い、壺?そんなに重くないな……。蓋っていうか紙が巻いてあるのか。こんなんで中身大丈夫か?」


「何が入ってんだろな?やっぱ薬かな?ちょっと開けてみるか?」


「おいおい、やめておけよ。何がでてくるか分からないぞ。ネージュ伯爵家の件、忘れたのか?」


「おっとそうだったな。ご令嬢が怪しげな薬を送り付けられたんだったな」


「おい!そのことは!」


「分かってるよ。箝口令が敷かれてるんだよな。下手したら処罰対象だ。公爵家が動いてるんだったな」


「しかし、マウティ商会も馬鹿なことをしたよな。欲をかかなけりゃいい商売が出来てたんだろうに」


「はは、まったくだな。今回のことで商会は取り潰しだもんな」










『同時刻 メイリリー学園の花壇付近にて』


「ん?なんだこの壺?もしかして何かいいものが入っていたりして」


「おい、やめておけよ。見るからに怪しいじゃないか。学園の警備課に持って行こう」


「ええ、なんだよつまらないな、はあ、しょうがないか。うわっ油が付いてる?手がすべっ……」


不気味な紙の紐で封じられていた丸い壺を拾った男子生徒は塗布されていた油のせいでそれを落としてしまう。大きな音と共に壺は割れ、紙の封印は破れてしまった。


「うわっ何やってるんだよ!」


「なんか油がついてたんだよ……え?」


「ん?どうした?」


振り返るとそこには見上げるほど大きくて黒い闇がわだかまっていた。











ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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