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失われた記憶

来ていただいてありがとうございます!



目が覚めた時、見慣れない部屋にいた。薄暗い天井。いつもの私の部屋じゃない……。


「えっとここって……?あ、そうか王都のお屋敷の部屋だ。たぶん。あれ?何で?」


起き上がってお部屋を見回す。いくら考えてもここへ来た覚えがない。


「お嬢様っ!良かった。お目覚めになられたんですね!」


部屋に入って来た見たことのないメイドさんが慌てて走り去ってく。ドア開けっ放しだよ?慌てん坊な人なんだね。私ってまた熱を出して寝込んでたんだよね?でもどうして王都に?領地にいたはずなのに。不思議に思ってると、


「ルミリエっ」


うわあっ!とっても綺麗な男の人が入って来た!?白銀色の髪にアイスブルーの瞳。少し潤んでる?ベッドサイドに膝をついて私の手を握ってるこの人は誰?天使?天使なの?あ、そういえば手が痛い。包帯がまかれてる。いつ怪我したっけ?


「あ、あの、あなたはどなたですか?」


恥ずかしいのもあって手を引っ込めちゃった。


「え」


戸惑ったような顔も綺麗……。本当に綺麗な人……。女の人みたい。誰だろう?王都の治癒魔術師さんかな?でも私とそんなに年齢は変わらないように見える。


「父のお知り合いの方ですか?それとも親戚の方ですか?」


「ルミリエ?何を言ってるの?」


その綺麗な人は驚いたように目を見開いている。


「僕のこと分からないの?ルミリエ!……ましろ?」


「マシロ?」


マシロってなんだろう?聞き覚えが無いような気がするし、あるような気もする。思い出そうとすると頭に霧がかかったみたい。


「……っ!」



その後は何故か大騒ぎになった。両親がやって来たり、お友達という方が訪ねて来たり、治癒魔術師の方が呼ばれたり。


皆さんの話を合わせると、どうやら私は体調が良くなってメイリリー学園の高等部に入学したらしい。わー、本当なら嬉しいな。元気になったんだ私。覚えてないけど……。そして、最大の驚きは婚約してたこと!しかもサフィーリエ公爵家の三男のノエル様!って公爵家?!ちょっと信じられない。さっきの綺麗な男の人が私の婚約者だったよ。全く覚えてないけど……。


「貴女はある過去の一時期から現在までの記憶を失っているようですね」


来ていただいた治癒魔術師の方が説明してくれた。この方は私の婚約者だというノエル様に似ているみたい。


「忘却の魔術がかけられた香水だったようですね。大丈夫。しばらくすれば思い出せますよ」


優しい治癒魔術師の方の笑顔にちょっとだけ安心した。記憶が消えてるってことは不安だったけど、体の調子は自分でも信じられないくらい良くて……。でもあのノエル様の驚いた顔、悲しそうな顔が頭から離れなくてとても申し訳なくて。色々ぐるぐる考えてしまう。早く思い出したい。けど何を忘れてるのかも分からない。いつものように熱を出して目が覚めたら一年も経ってた。私は不安の闇の中にいる。


「ごめんね。ちょっとだけいいかな?」


診察が終わってもう一度ノエル様が部屋に入って来られた。もう一度会いたいなって思っていたから、ちょっと嬉しかった。婚約なんて何かの間違いだと思うし、そうならもう会えないかもしれないし。


「はい。どうぞ」


うわー!改めて見ると本当に綺麗な方だなあ。どうしよう緊張しちゃう。思わず視線を反らしちゃった。綺麗な男の人、ううん、そもそも男の人自体に耐性がないんだよー。許して欲しい。


「今は分からないかもしれないけど、君をこんな目に合わせた奴はもう捕まえてあるから。あの男は君に片恋して攫おうとしていたんだ」


「え?私、ですか?」


趣味の悪い人もいたものだ。何で私を……?うーん不思議。


「おかしな薬まで送りつけて……。それと今、記憶を戻す方法をシモンが調べてくれてる。不安だろうけれど、待っててね」


ノエル様は笑ってくださってるけど、顔色がとても悪い。ああ、ご迷惑をお掛けしてるんだなぁ。もう嫌われてしまっているかもしれない。できれば嫌われたくないな。


「はい。ありがとうございます。お手を煩わせて申し訳ございません」


私は丁寧に頭を下げた。失礼の無いようにできてるかな?


「……っ。それとこれを」


ノエル様は一瞬辛そうに顔を背けられてから、ポケットから取り出したものを渡して下さった。


「フローティングロケット?ですか?」


綺麗な透き通った石が入ってる。何だか懐かしい気がする。そしてとても切ない気持ち。どうしてだろう?


「お守りだから。持っていて」


そう言うと寂しそうに笑ってノエル様は部屋を出て行った。フローティングロケットを見つめていると


「あれ?何で涙が……。やだな……止まらない……。また熱を出しちゃう……」


困ったことに涙が止まらなくなってしまった。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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