アマーリエ王女殿下のお茶会1
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「アマーリエ王女殿下がやっと復学されるそうよ!」
初雪がちらついた日の放課後、いつものように四人でお茶を飲みながらリンジー様が仰った。
「それはおめでたい事だね。一時はお命も危なかったと聞くし。良かった」
シモン様が眼鏡を直しながら笑った。
「魔術大会も観戦なさってたみたいよ」
「そうなんだ。本当に良かったね」
ノエル君はそう言って私に微笑んだ。
アマーリエ王女殿下。この国に入り込んだ夢の魔物の最初の被害者。ノエル君と私でどうにか魔物を封じ込めたけど、たくさん命の力を取られてしまって回復に時間がかかってしまったそう。ノエル君のお兄様のフランシス様がつきっきりで看病されていた。学園に来られるくらいに元気になったんだね。良かった。助けることができて。私はノエル君に笑い返した。
前に降った雪が根雪になった。これからは体調管理にも一層気を付けなくちゃって気合を入れていた頃。
「え?お茶会ですか?」
「そうなの!アマーリエ王女殿下がルミリエもご一緒にって」
リンジー様はこのモーネ王国(白の王国)の第一王女アマーリエ殿下とお知り合いで、今回学園で開かれるお茶会に招待されたんだって。さすが侯爵家だね。私が一緒でいいのかな?うちは伯爵家の中でもそんなにパッとしない感じなんだけど……。
あ、もちろん両親も親戚も使用人さん達に至るまで良い人達ぞろいなんだけど、それゆえに政治の中枢からは程遠いんだよね。そういう欲がない両親のことが私は大好き。
それにしても、いいなぁ。本物のお姫様かぁ。王女様の夢の中でチラッと見ただけで、私もお会いしてみたいなと思ってた。本物のお姫様なんて見たことないもんね。
「是非お会いしたいです。でも良いのでしょうか?」
「平気よ。そんなに格式張ったお茶会じゃないわ。気軽に参加して大丈夫よ。ただ、一年生には数少ないチャンスだから、みんなに羨ましがられるかもね!」
アマーリエ王女殿下のお茶会は殿下がホワイトリリー学園に入学されてから週に一回程度開かれていて、毎回女子生徒が数人ランダムに招待される。弟王子のベルナール殿下も御一緒されることもあるそうで、みんなお呼ばれしたいお茶会なのだそう。
アマーリエ王女殿下は長いこと休学されてたけど、復学第一回目のお茶会に招待していただけたみたい。どうして私?って思ったけど、リンジー様と仲良くさせていただいてるからそのおまけかな?なんて軽く考えてた。
「さ、行きましょ!他にはどなたが招待されてるのかしら!楽しみね!」
「え?今からなんですか?心の準備がっ」
「大丈夫、大丈夫!お茶とお菓子を頂いて少しお話しするだけよ!今日はノエル様、用事で城へ行ってるんでしょ?時間あるわよね?」
「はい。そうでなんですけど……」
「じゃあ、行きましょうー!」
リンジー様が私の腕を組んで引っ張ってく。魔術大会以来リンジー様との距離が縮まったみたいで嬉しい。前世の友達といるみたいで楽しいな。身分差があるからこっそり思ってるだけだけど。それにしてもお姫様かあ、今日はさすがに制服なんだろうけど、お城ではふわふわひらひらなんだろうなぁって想像しながらワクワクしてた。
特別室ってプレートがかけられたドアが開かれて感じた違和感。リンジー様も戸惑ってた。私達だけ?ベルナール殿下がいらっしゃるから、当たりのお茶会のはずだけど……?豪華な家具の設置された広い室内。2人の男女。他の女子生徒はいなかった。
「わたくしのお茶会へようこそ、リンジー・マルク―ル侯爵令嬢、ルミリエ・ネージュ伯爵令嬢」
「光栄ですわ。アマーリエ王女殿下。学園では初めてですわね。今日は私達だけなのでしょうか?」
一緒にご挨拶をしながら、少し戸惑ったようなリンジー様の声に私も緊張してきた。
「ええ、わたくしも病み上がりなので今日はお二人だけなのよ。さあ、おかけになって」
なんだろう?リンジー様の顔が強張ってる。ベルナール王子殿下の顔も。そして何よりアマーリエ王女殿下の視線が怖いんですけど……。怒ってるみたい。え?私?何かしちゃった?席についてお茶を頂いた。たぶん高級なんだろうお茶もお菓子も緊張で味が全然分からなかった。
アマーリエ王女殿下はベルナール王子殿下と同じ金色の髪、長い髪をハーフアップにしてる。そしてノエル君と同じような空色の瞳。柔らかい雰囲気のとてもお美しい方だ。しばらくはアマーリエ様とベルナール様、リンジー様の会話を静かに聞いていた。お茶会のお作法は多分学園内でも同じはず。身分の高い方へは話しかけてはいけない。原則。うん。でもとっても居づらい……。
「こほん。それでは場もあたたまってきたので今日の本題に入りましょうか」
「いや、全然あたたまってないけどね?」
王女様が切り出し、王子様が渋い表情で答えた。
「貴女とは初めましてよね?ルミリエさん、貴女はどうやってノエルに取り入ったのかしら?」
テーブルに両肘をついて、組んだ細い指に細い顎をのせた王女様は涼やかにううん、冷たく微笑んだ。ベルナール殿下とリンジー様が息を吞む音が聞こえた。
「え?」
取り入った?私がノエル君に?まさかの糾弾?もしかして断罪?やっぱり王女様はノエル君のことが好きだったとか?頭の中はパニック状態だったよ。
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