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除霊の代金は体で支払ってもらうので気にしないでください  作者: 釧路太郎
離島編

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第三十一話 〆を食べることはできませんでした

 真白先生も忍ちゃんも出来上がったお鍋を美味しそうに食べているのだけれど、私には姿の見えない人の声が近くで聞こえてきている事が怖くてリラックスする事なんて出来なかった。

 食べることが出来ないとはいえ、忍ちゃんは毎回私に気を使って料理を出してくれているのだけれど、それを食べるのはいつも真白先生なのだ。私の代わりに真白先生が食べてくれているのは嬉しいのだけれど、ここに来てから毎回二人前の食事を平らげている真白先生は確実に太ってしまっていると思う。

 いつからか真白先生もその事に気付いて運動をしたりしているのだけれど、毎食毎食今までの倍近い量を食べることになっているので多少運動したところで焼け石に水状態なのだろう。ここ数日は自分から動くこともやめてじっと動かないことも多くなっていたのだ。

「アタシの分も用意してくれるのは嬉しいんだけどね、実はアタシって好き嫌い多いんだ。野菜とか食べること出来ないし、お肉も脂身が多いと無理なんだよね。なので、申し訳ないとは思うんだけど、アタシの分も君が食べてね」

 真白先生は私の分とこの人の分も食べることになってしまったようなのだけれど、お鍋が思っていたよりも美味しかったのか真白先生の箸が止まったり苦しそうな表情を浮かべるようなことは無かったのだ。

「そろそろい感じになってるし、〆にした方が良いんじゃないかな。アタシはうどんでも雑炊でもどっちでも好きだから大丈夫だし。あ、野菜は入れないでね」

「〆にしたいのはやまやまなんですけど、僕も鵜崎先生もお腹いっぱいになっちゃってるんで〆は明日の朝にしましょうよ。今ここで作ったとしても食べきれないと思いますし」

「そうは言うけどさ、アタシはまだ何も食べてないんだよ。それについては申し訳ないとか思ったりしないのかな?」

「別に思わないですけど。そもそもあなたはいったい何者なんですか?」

「何者かって言われてもね。その答えには困っちゃうけどさ、君達の言うところの神様ってやつだと思ってくれればいいよ。もっとも、神様にも色々なやつはいるしね。あいつらみたいに人間の事なんて駒としか思ってないやつもいれば、あいつらみたいに人間の幸せが一番の糧みたいなやつもいるし、逆に人間の苦しむところを見ることが一番の悦びってやつもいるからね。その点アタシはいたって普通の優しい神様だからね。最近じゃすっかり影も薄くなって忘れかけられてはいたけどさ、君達がここにこうしてきてくれたことでアタシももう少しこの世界で過ごすことが出来そうだよ。ところで、君達はいったい何の目的でここに来てるのさ?」

 真白先生の当初の目的は亀島と鳥島の調査だったと思うのだけれど、その詳しい内容は私も知らないのだ。忍ちゃんのお母さんとおばあちゃんがどうなっているのか調べることもしていたみたいだけど、ここにいる人の話が本当であればもう二人ともこの世界にはいないという事なのだろう。信じるか信じないかは忍ちゃん次第だと思うのだけれど、忍ちゃんの目は真っすぐに一点を見つめて疑うようなそぶりは一切見せていないのである。

「俺はただ本家の人達に言われてこの島でゆっくり過ごして来いって言われただけだからね。ちょっと最近は調子に乗りすぎた事があったからって事で、幽霊のいない場所に行ってのんびりして来いって言われたんだけどね。日本中探してもここみたいに幽霊が全くいない場所ってのは無いと思うんだけど、その理由なり原因は追及しなくてもいいよとは言われてたんだよな。今にして思えばさ、本家の人達ってここの事を完璧に把握してたって事なんだよな。そうなるとさ、このまま黙って帰るのも何か悔しいなって思っただけなんだよね。途中からは忍ちゃんのお母さんとおばあちゃんがどうなってるのか調べたいって思ってたりもしたけどさ」

「調べるって、どうやって調べるのさ。君には調べる手段も無いしどうすればいいのか試す手段だってないと思うんだけど。どうしてもって言うんだったらアタシが手を貸してもいいんだけどさ、たぶん君達の望むような結果にはならないと思うんだよね。そっちの女の子はお母さんとおばあちゃんが見つかればそれでいいと思ってるのかな?」

「それもありますけど、神様の話を聞いているとお母さんもばあちゃんももうこの世界にはいないんだなって思えてきました。たぶんですけど、神様は嘘をつけないんだと思います。そんな神様がいるってのをじいちゃんに聞いたことがあるんですけど、神様って夜になると星みたいに光って空を自由に飛び回る神様なんですか?」

「いや、そんな事は出来ないけど。そもそも、星みたいに光って空を飛ぶ理由がないよね。そんな風に目立ちたいなんて思ったことは無いけど。君はそんな風に空を飛びたいって思ってるのかな?」

「そんな事は思ってないです。僕はあんまり目立ちたくないって思ってますし」

「その割にはあの島でこの男の人とずっと一緒にいるのはかなり目立つ行為だと思うんだけどな。四六時中一緒にいて他人には言えないような事もしてたりするんだろ?」

 真白先生と忍ちゃんは他人に言えないような事はしているけれど、最後までしているのかと聞かれたらしていないと答えることが出来る。そんな関係なのだ。色々と試してみたりもしているのだけれど、どうしてなのか真白先生と忍ちゃんは最後の一線を越える事だけが出来ないのだ。

 私にはその経験が無いのでどうして失敗しているのか判断することも出来ないのだけれど、どちらもちゃんと準備は出来ているのにもかかわらず最後の一線を越える事だけが出来ずにいたのである。

「してないです。僕と鵜崎先生はそんなこと、してないです」

「でも、二人っきりで部屋に閉じこもって何かしてるってのは噂で聞いてるけど。あ、二人っきりではなくそこの幽霊ちゃんも一緒にいるみたいだけどさ、一緒にいても幽霊ちゃんは何もしてないって話も聞くし」

「あの、神様。どうしたら僕は鵜崎先生と最後までちゃんと出来るようになるんですか。教えてください」

「教えてって言われてもね。どうやって教えたらいいものやら。そもそもアタシが君に教える必要があるのかって話なんだよね」

「そこを何とかお願いします。僕は鵜崎先生としてみたいんです」

「まあ、その気持ちはわかるけどさ。じゃあ、アタシがこの人として見るからさ、それをじっくり見て勉強してよ。ね、君はそれでいいでしょ?」

 真白先生はその提案に乗り気ではないようだったのだけれど、最終的には首を縦に振っていた。

「そうだよね。神様とエッチできるチャンスなんて普通はないんだし、断る理由もないよね」

「いや、神様とかを相手にしたこともありますけど。そんなに珍しいことでもないと思いますよ」

 真白先生の言っている事は強がりでも何でもなく、今までに何度か仕事の都合で神様の相手をしたことがあるという話なのだ。真白先生の魅力は人間だけではなく神様にも通用するのだという事を知っている私はこの事について口を挟むつもりはないのだ。

 ただ、今までと違って相手が見えないこの状況は私が嫌な気持ちにならずに済むので会ないかと安心感を覚えていたのだった。

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