自殺未遂
4作目(?)です
貴女がいたから死ねなかった。
貴男がいたから生きていたかった。
貴女と離れ離れにはなりたくなかった。
貴男とずっと一緒にいたかった。
貴方の所為で……
4月になった。
新しいクラス、新しい出席番号、新しい担任。
まだ二年生になったばかりだからか、
それとも僕がいつも教室にこもっている所為なのか
今まで見たこともい人がクラスに沢山いた。
君はその中の一人に過ぎなかった。
中野皐。
夏休み最後の日まで下の名前が読めなかったのを覚えている。
特別接点があるわけでもなかったから夏休みになるまで君のことはクラスの中心的な存在。そう、所謂陽キャ女子としか思っていなかった。
そして事は起こった。
夏休み最後の日、父親の虐待に耐えかねた僕はとうとう自殺しようと決意した。
しかし結果としてそれは失敗に終わった。
飛び降りるために登ったビルの屋上に君がいた。
あっ、中野なんちゃらさんだ…なんてそんなことを少し思った。
しかし名前も知らない彼女なんかよりも僕は地面のほうが近く感じられた。
僕は屋上の縁に立つ。
風の音が大きい。
そんな風の音に掻き消されそうになりながらも
「待って!」
という彼女の声が聞こえてきた。
もう遅い。
もう遅いんだ。
僕は頭から飛び込んだ。
否
ほんとに飛んだ気がした。
刹那
僕の体はガクンッと空中で静止する。
頭を下にした宙吊りの状態で。
右足首に掴まれた感覚があった。