4話 冒険者
ミルさんと話をして俺は今、異世界にいることが分かった。そして現状では帰る方法がないということも。ミルさんのいうには俺は冒険者になるといいらしい。
「ミルさん、俺は今帰ることを目的にしています。なのに冒険者になれとはどういうことですか?」
俺はミルさんに尋ねる。
「冒険者になることにはメリットがあるからです。まず冒険者には基本誰でもなる事ができます。例外的になれないのは過去に犯罪歴があったりする人だけです。そして冒険者になると冒険者ギルドが身分の証明をしてくれます。この街では、ダンジョンがあることもあり毎日多くの人が死んでいきます。それでも冒険者ギルドに所属していれば、場合にもよりますが救助が求められたりします。それに身元が分かれば最悪家族や知り合いに連絡が出来ます。」
「それでも俺が冒険者になる必要はないのでは?」
「いいえ、あなたは冒険者にならなくてはなりません。あなたの身元が分からないのですよ。第一あなたは帰りたいと言いますがこの世界に生まれたならば絶対に受けているはずの神の祝福を受けていなかった。それだけであなたはこの近くで生まれ育ったのではないことが分かります。それでいて出身も分からない、誰もあなたを知らないのです。身分証明がないのは犯罪者であることが多くそのため身元の分からない人がこの街にいることは憲兵に捕まって処刑されてもおかしくないほどのことですからね」
ようするに、この街にいるには身分証明が必須らしい。だが、
「俺が帰れたら関係ないのでは」
「では聞かせていただきます。あなたは帰り方が分かるのですか?どうしてここにいるかも分からないのに」
俺は、言葉を返せなかった。実際にその通りだから。
「帰り方が分からない以上この街に滞在することになります。身分証明ができなくてはこの街で生きるのは難しいでしょう。だから冒険者になるべきなのです。」
ミルさんはさらに続ける。
「冒険者になれば、あなたの帰る場所も方法も見つかるかもしれませんよ。」
その一言が決め手になった。
「分かりました。俺冒険者になります。」
ミルさんはそれを聞き微笑んだ。
「それでいいのです。さあ、急いで彼らとともに冒険者ギルドへ行きなさい、受付の時間が終了してしまいますよ。」
それを聞き俺は慌てる。ミルさんはそれを見て笑いだす。
「今日の宿は教会の部屋を貸しますからしっかりとギルドで登録してきなさい。そしてあなたの帰る場所の話をきかせてくださいな。」
「ありがとうございました。いってきます。」
「いってらっしゃい、あなたに女神の祝福を。」
俺はミルさんと別れ、ここに連れてきてくれた彼らを探す。そういえば、名前も知らないことに今更気が付いた。教会を出ると前で彼らは待っていた。
「祝福は受けたかい、俺の言葉分かるか?」
ついてこいと手でしていた男性が声をかけてくる。
「分かります。でも急がないと冒険者ギルドに登録ができなくなるんです。」
「落ち着け、まだ受付終了までは2時間はある。ゆっくりギルドへ向かっても間に合うくらいにな。」
男性が笑いながら言う。俺はそれを聞き恥ずかしさを感じた。
「まあ、ギルドに向かいながら自己紹介でもしようや。」
「賛成、名前知りたいもの」「そうだね、聞きたいこともあるし」
助けた女性ともう1人の男性が答える。俺は、彼らの事も知りたいし連れて行ってくれる間のいい話になりそうと思い、
「分かりました、でもギルドへの案内お願いしますね。」
「おう、任せとけ」
彼らは歩き出す、俺もその中に入って歩く。
「それじゃ、自己紹介といこう。俺はマク、このパーティーのリーダーで盾での守りを担当している。」
案内をしてくれている男性がいう。見た目はでかくて毛深い感じだが悪い人ではなさそうだ。
「次は私、ダンジョンでは助けてくれてありがとうね。名前はサナ、これでも剣士なんだ。」
金髪巨乳の彼女が俺に向かって笑顔を向ける。可愛い、それ以外思い浮かばない。
「僕は、ヒュウ。ダンジョンでは後衛の守りも前衛もする何でも屋かな。君に聞きたいことはいっぱいあるがそれはみんなの自己紹介が終わってからにするよ。」
もう1人の男性がいう。短めの黒髪で長身、モデルみたいな顔、モテそうだ。
「私は、ユン。後衛の魔法職。」
こちらは、黒髪ロングで小さな女性、見た目はかなり若い。無口系とでもいえばいいのかな。
「うちはクリス、斥候職をしてるの。あとダンジョンではサナの事助けてくれてありがとう。」
そしてピンク髪の短い髪、背はそこそこある、モデル体型の美人だな。
「これがうちのパーティメンバーだ。そしてパーティ名はダンジョンバスターだ。」
マクが堂々というと、サナが
「今回の探索は失敗したけどね。」とおどける。
「誰も死ななかったから問題ない」「運よくだけど」「まあ、無事に帰ってこれたんだから素直に喜ぼうよ」「そうだよね、ここにいれてほんとに嬉しい」
ユン以外がそれぞれワイワイ話し出す。俺はユンを見る。ユンは肩をすくめて
「いつものこと」
という。俺は、彼らに囲まれながら思った。
いつ自己紹介しようと。






