001話 筋肉と異世界
眩い光に包まれた瞬間、俺は輝く雲の上に立っていた。
「ここは……?」
『ここは神界ですよ。剛力努さん』
目の前には美しく長い髪。綺麗な肌。大きな胸。前の世界では見たことのないような美女が立っていた。トラックに轢かれた時に話しかけてきた声と同じ声、つまり彼女が神なのだろう。
『あなたが転移する世界について先に説明しておこうと思い、こちらの世界へお呼び致しました。あなたの転移する世界の名はアレンティア。魔法やスキルといった前の世界にはない力が存在します』
魔法、スキルか……。あまり興味がないな。
『貴方が筋肉にしか興味ないのは知っています。ですが、スキルは自身の身体能力を高めるものもあるので覚えておいて損はないでしょう。そして貴方には転移してもらう代わりに、前の世界で困っていた肉体の限界値を無限に致します』
「それは非常に有難い。だが何故俺にここまでするんだ?」
『貴方には向こうの世界でダンジョンを攻略してほしいのです。一般的にダンジョンは50層までしか形成されないのですが、アレンティアのダンジョンは神の管理が及ばない層まで形成されてしまってとても困っているのです』
筋肉を鍛えながら、ダンジョンを攻略するだけか。全然悪い条件ではないな。
「分かった。是非引き受けさせてもらおう」
『有難うございます。それでは、またいつかお会いしましょう。貴方に神の祝福あれ』
俺の身体は再び光に包まれ、目を開けるとそこには新しい世界が広がっていた。
「ここが異世界か」
目の前には大きな道が一本。そしてその奥には街らしきものが見える。随分分かりやすい場所に転移してくれたが前の世界とあまり大差はないように感じる。
とりあえずあの街から始めるとしよう。俺の理想の肉体への第一歩を。