エリザとの出会い エディ
僕の名前はエディです。10才です。
おとーさんとおかーさんはいません。小さい頃に捨てられて、孤児院で暮らしています。
僕は小さくてすぐ風邪をひいてしまうので、大きくて強い男の子と、そのお友達にいつもいじめられています。僕は、みんなに嫌われているらしいです。僕を大事にしてくれる人は誰もいない。すごく悲しいです。
ある日、いつものようにお遣いを押し付けられて、1人で街を歩いていました。そしたら、ある家の前に孤児院の先生と警察が集まっているのを見つけました。少し気になって覗いてみれば、1人のぼろぼろの女の子が大人たちに囲まれています。
ふと、目があいました。
「っ!」
女の子の暗い暗い目から、目がはなせなくなりました。
女の子のことを知りたい。話してみたい。笑顔を見たい。僕のことを知ってほしい。僕を頼ってほしい。
数え切れないほどの願望が僕の胸に浮かび上がり、それに突き動かされるように伸ばした手は、しかし女の子に届くことはありませんでした。
「エディ君。こんなところで何しているの?危ないからあっちへいってなさい」
「あっ……分かりました」
先生の体で女の子の姿が隠されてしまいました。簡単に答えてすぐにどいてもらったけど、もう女の子はどこにも見当たりません。
もう一生会えない。そんなのは絶対に嫌です。でも、僕に出来ることなんて何もありません。だから、一人みじめに帰るしかありませんでした。
どうすればあの子に会えるか考えていたその日。奇跡がおきました。
なんと、その子が孤児院にやって来たんです。名前はエリザ。やっぱりとっても可愛いです。
来たのは夕方で、その後すぐに夕飯の時間になりました。
僕は嫌われていて周りの席は空いていたので、エリザちゃんは僕の隣の席に座りました。
この時初めて、自分が嫌われていて良かったと思いました。
「ぁ、あの、はじめまして。僕、エディって言います」
「……」
話しかけてみたけど、エリザちゃんは僕をジッと見たまま何も言いません。
ぼ、僕、何か間違えちゃったのでしょうか。ど、どうしよう……エリザちゃんにだけは絶対に嫌われたくないのに……。
「いいなぁ……」
「え?何?」
エリザちゃんが何か呟きましたが、混乱していた僕は、エリザちゃんの言葉を聞き取ることが出来ませんでした。
「あなた、もうすぐ死ぬよ」
「……へ?…」
エリザちゃんの声は小さかったのに、なぜか部屋中に反響するように広がりました。みんなが驚いたようにこっちを向いてきます。
確かに僕は体が弱いので死んでしまう可能性は十分にあるけど、どうしてエリザちゃんは断言出来るのかな?
「魔力が多すぎて、体がたえきれていない。このままだと1年以内に死ぬ」
エリザちゃんの言葉に、その場が静まり返りました。そうか、僕の体が弱いのは、魔力のせいだったんですね。死ぬのに抵抗はないけど、死んだら、エリザちゃんと会うことは出来なくなるよね?そしてもしかしたら、僕が死んだあと、エリザちゃんは僕以外の男と……
想像するだけで、そいつを自分から死なせてと懇願するまでなぶりたくなります。
「エディ君、ちょっと来て」
これからについて考えていると、先生達に呼ばれました。先生達は忙しそうに動き回っています。
連れて来られた場所には、見知らぬ男の人がいました。そして、僕の体を触り始めた男の人は、しばらくして先生達と何か話し始めました。
こうしていると、先生達が自分を大切にしてくれていたんだと分かります。エリザちゃんに出会って、エリザちゃん以外がどうでもよくなったからこそ気付けた。でも、今更気付いたところで意味はありません。もう、先生達に、エリザちゃん以外の人に興味はありません。
翌朝、僕は昨日来ていた男の人に引き取られました。結局エリザちゃんと全然話出来ませんでした。
僕は、魔力を使いこなせるように訓練を始めました。そうすれば、僕は死なないみたいです。それでも死ぬことは出来るのだし、選択肢は多い方がいいですよね。
新しい生活は思ったよりも大変で、真夜中にしかエリザちゃんに会えませんでした。話をすることが出来ないので辛いです。
10年後
僕は今日もエリザを見守っている。エリザが他人に笑顔を見せていても、それほど嫉妬の気持ちはわきあがらない。だって、それはエリザが演じている“優しい女の子”の笑顔。もはや別人の笑顔だ。でも、エリザの姿を見ている。エリザに触れている。エリザの香りを嗅いでいる。偽者の笑顔を見るのは許せるけど、それは許せない。嫉妬に狂いそうだ。あれ?もう狂っているのかな?まぁ、どうでもいいか。
エリザは他人の好意を信じない。人は、仲の良いように振る舞って、裏では悪口ばかり。そんな生き物だ。だから、エリザは人の好意を信用しない。僕はエリザに一目惚れしたんだ。あの暗い瞳を見て、自分の悩みなんてちっぽけなものだと気付いた。僕はエリザに救われた。エリザは素晴らしい存在なんだ。そんなエリザの望みを叶え、僕だけのエリザにしたい。
エリザに僕の愛を信じてもらうにはどうすれば良いんだろう。
そんなことを考えながらエリザを見守ること10年。エリザを守るためにそれなりに強くなったし、もうエリザ監禁しちゃおっかな、と考え始めていたある日、事件は起こった。
エリザが消えた。僕の目の前で。エリザの背後に男が現れたと思った瞬間、エリザは男と共にそこから消えていた。急いで周囲を探したけど、どこにも見当たらなかった。
それから僕は、エリザを探しながら自分を鍛えた。エリザが攫われた時、僕は何も出来なかった。あいつからエリザを取り返すためには、もっともっと強くならないといけない。
10年かかった……。
まさか地下にいるとは思わなかった。土の中に謎の空間つくって暮らしてた。
この10年間、精神的に辛かった。エリザがいない生活は地獄だった。最初の数ヶ月はエリザの私物で何とか耐えられたけど、すぐに本物が見たくなった。ほんと、地獄が天国に感じるほどの地獄だった。
けれどその先で、僕は更なる絶望をあじわった。
エリザは、死んでいた。まるで生きているような綺麗な状態で、けれど確かに、死んでいた。
僕の希望が、僕の宝が、僕の恩人が、僕の女神が、、、殺された?
誰に? 目の前でエリザを自分のもののように抱きしめている男に。
エリザは僕のなのに。僕のすべてなのに。僕だけの女神なのに。それを、こいつが殺したのか?この見知らぬ男が殺したのか?僕のエリザを。
許せない許せない許せない!!
エリザを抱きしめている。10年、エリザと暮らしていたのか。10年間、エリザを見て嗅いで触って食べていた?もしかして、キスもした?エリザを殺したものしか見れない、最後のエリザを見たのか?痛みに、苦しんでいた?それとも、見知らぬ男に怯えていた?それとも、、やっともらえた“死”に、今まで見たことのない最高の笑顔を見せていた?
なんて、なんて妬ましい。10年間、いろんなエリザを独占していたなんて。
エリザを殺したという行為そのものは、エリザが“死”を望んでいたからいいとして、殺すなら僕が殺したかった。そして僕も一緒に死にたかった。出来るならエリザに殺してもらいたかった。
そもそも僕からエリザを奪った時点で許せない。それなのに、こいつは……
「とりあえず、エリザを今すぐ返せ!!」
男の腕目がけて攻撃を放つ。そしてすぐにエリザを取り返す。男の方を見れば、死んでいた。
「……は?」
僕の放った攻撃は、男の心臓にあたっていた。こいつは、自分からあたりにいったのか。エリザがいなくなったから、死にたかったのか。違うかもしれないけど、きっとそうなんだろうなとなんとなく思った。まぁ、そんなこと関係ないか。そう思ったところで、僕の視界は暗転した。




