記憶 -レイ視点-
ぼくは、エディに連れられてエリザのいる部屋から少し離れた部屋に来ていた。
エディがぼくだけ連れてきた理由は分かっている。
エディを見た瞬間、エディがぼくと同じだと分かっていた。エディもきっと、ぼくを見てすぐに気づいたんだろう。
「それで、レイはやっぱり覚えてるの?」
入った瞬間、エディはそう聞いてきた。さっきからずっと目が怖いなぁ。まぁ、当たり前か。
「もちろん、覚えてるよ」
“何を”かは言わなくても分かる。
-ぼく達には-
「ぼくは、エリザを初めて見た時に、エディに殺されたときまでの記憶を思い出したんだ」
「僕も同じ。初めてエリザを見たとき、君を殺したときまでの記憶を思い出した」
-もう一つの生の記憶がある-
20年前、エリザを初めて見たその瞬間。
ぼくのなかに、その先の約20年分の記憶が流れ込んできた。
その記憶では、ぼくはエリザをだんだんと好きになり、神聖な存在だと思うようになっていた。でも、その理由は分からなくて、エリザの性格や癖、生活の様子や身体のことなど、たくさんのことを調べた。でも、エリザのことをどんなに知ってもなんでそんな気持ちになるか分からなくて、解剖して、体の内側までみれれば分かるかな、と。ふと、そんなことを思った。だから、エリザを殺して、解剖した。それでも、その気持ちの理由は分からなかった。
殺したのには、エリザが死を望んでいたから、という理由もあった。エリザが死にたいと思っていなかったら、きっとぼくは殺していなかった。
理由が何だとしても、エリザをこの世から消したぼくが憎かったんだろう。10年後に、エディがぼくを見つけ出し、エリザの死体を見つけた瞬間、ぼくを殺した。大事に保存していたエリザの死体を眺めながら暮らして10年。特に生きたいとも思っていなかったぼくは、おとなしくエディに殺された。
それは、ぼくが2回目の生を生きているのか。
それとも、時間が巻き戻ったのか。
分からなかったけど、ぼくはその記憶を有効活用することにした。
その記憶から、エリザを解剖したとしてもなにも分からないことは分かっていた。だから、今回は解剖はしないことにした。
そしてぼくは、エリザにヤンデレを教えた。エリザが見つけやすいところにヤンデレの小説をおけば、エリザはすぐにはまった。
少しでも、エリザの笑顔を見たいというのと、ぼくはどうやらヤンデレっぽいから、エリザがヤンデレに好意的になってくれたら良いなという思いからだった。
それから、記憶と同じように影からエリザを眺め続けた。死体より、生きているエリザの方がずっとキレイだなと思った。ある時、ぼくと同じようにエリザを見つめているエディを見つけ、この人もぼくと同じで記憶があるんだな、と理由もなく思った。どうでも良いことだったからスルーしていたけど。
でも、これから一緒に暮らしていくなら、その事について話しておかないとダメだよね。ずっと睨まれながら生活するのもイヤだし。
「前回は、エリザが死を望んでいた。それに今回、レイがエリザにヤンデレを教えたおかげでエリザがすぐに僕を受け入れてくれた。だから、僕はもうエリザを殺したことについては忘れることにする。今回は、絶対に殺さないでね」
「もちろん」
エディが憎しみを抑え込むようにしながら言った。忘れきれてない気がするけど、まぁいっか。ぼくはエリザが生きるのを楽しんでいるなら、絶対に殺さないよ。
「そう。なら良かった……それからもう1つ、話したいことがあるんだけど」
「話したいこと?」
エディがぼくに話したいことって、なんだろう?
「エリザに認められることで、僕たち5人はここに生きている。でも、エリザに認められていないような奴らが、エリザと同じ場所に生きているなんて耐えられない。だから僕は……エリザが生きる場所をもっとキレイにしようと思うんだ。協力してくれる?」
「当たりまえだよ。エリザのためになるなら、ぼくは何だってする」
ぼくはすぐにそう答えた。
そして、どこか壊れたようなエリザの笑顔を思い出し、最高の幸せにエリザと同じ笑みを浮かべた。




