崇拝 -イワン視点-
あの後、疲れていたのか、エリザはすぐに眠ってしまった。ベットの周りをおれたちが囲って座っているのに、あっという間に眠ってしまうなんて……おれたちの事を信頼してくれているのかな。そう考えると、心の中が幸せで満たされる。
エリザの心の中の全てと言っていいほどの部分を覆っていた深い苦しみが跡形もなく消えた今、エリザは心の底から笑っている。
いま全員が見つめているエリザの寝顔は、以前の苦しそうな、泣きそうな寝顔ではない。閉じた瞳から、涙がながれることもない。
それは、驚くほどあどけない顔。まるで赤ん坊のようだと言ってもいい。その幼さは、実際の年齢を考えれば異常かもしれない。きっと、ただひたすらに他人に愛される完璧な人間を演じてきたエリザだから、エリザ自身の心は成長しないまま身体や演技力だけが成長したんだ。
エリザ自身の心には、幼いころからずっとずっと苦しみしかなかった。それを、今おれたちが共にいることで消し去ることができている。おれの存在が、エリザの心の助けになっている。それが、これ程嬉しいなんて、エリザと暮らし始めるまで知らなかった。
初めは、同じ世界に生きているというのが信じられなくて、おれにそんな資格はないと思って、愛するなんて、おこがましいことだと思って、死んでしまおうかとも考えた。でも今は、エリザにこの愛を捧げたほうがエリザは幸せになれると知っているから、エリザにおれの全てを捧げる。エリザはおれの神様だから、エリザのためならなんだってする。
イアンも、エディも、ルカも、エリザを愛しているし、神様のように思っている。
エリザは、特別な存在だ。底抜けに優しいわけでも、天性の才能があるわけでもない。でも、どこか暗さを感じさせる優しい言葉は、苦しんだことのない人の無責任な底抜けの優しさよりも、ずっと心に響いてくる。異常な程の努力は、特別な才能なんてなくても良いんだと、おれを励ましてくれる。エリザは、おれの生きる希望なんだ。
レイにとって、エリザはどんな存在だろうか。ただの愛する人?それとも、おれ達と同じか?
「それで、レイ。君は崇拝型?」
みんなでエリザの寝顔を見つめるなか、エディがレイに聞いた。
視線はもちろん、エリザに固定されたままだ。
「うん。崇拝型だよ。エリザが愛しい。エリザが尊い。でも、この気持ちがどこから来るのかずっと分からないんだ。一緒に暮らせば、またエリザの知らなかった一面がみられるかも知れないって思って、ここに来た」
「へー。まぁ、僕達と同じなら良いや。エリザを傷つけることはもうないだろうし」
エディ、何でこんなレイには冷たいんだろう。
おれ達には普通の態度なのに。
なんかあったのかな?まぁ、おれ達には関係ないことか。エディは優秀だし、自分でどうにかするよね。
「レイ、ちょっと来て、2人で話したいことがあるから」
「………分かった」
エディとレイが席をたった。早速問題解決しに行くのかな?じゃあ、おれはエリザの寝顔を眺めてよう。
うん、やっぱりエリザは最高にきれいで可愛い。世界一尊く素晴らしい存在だ。




