プロローグ
それは、とある早朝の一風景
「これは、やべーなー」
と男がため息まじりにつぶやいた。その男が見ていたのは、武魔士の能力が表示されるステータス表のリストの中のある一枚だった。男が見ていたステータス表のそのランクは、なんと最高位とされているSランクを示していた。学生としては異例のことに言葉が出なかった男は、トラン帝国という国のにある武魔学園最強武魔士である生徒会長だ、そう今年は、その武魔学園最強の生徒会長も驚くほど強い、そしてこの学園に正真正銘の化け物女武魔士が、入学したのだ。
彼女の名前は、デリダ・ユーフラテス・ハルバード。南コルフィード地方の北西に位置するティーノ帝国の王女で 次期女王でもある。
デリダは、攻撃力、防御力、マナ総量のすべてのステータスにおいてトップクラスで、彼女に勝る武魔士は世界を探しても2、3人だろう、、、。
同日、その男もまたトラン帝国の武魔学園に入学した。その男は・・・エージス・クラッド。
のちに学園最弱と言われる男だ。
このトラン帝国武魔学園は、この世界の中で優秀な武魔士が集まる学園であり、生徒一人一人が最強の称号を得ようと毎日訓練や自主練習に全力で励んでいる。
一方、南コルフィード地方北西に位置するティーノ帝国は、人口1800万ど小さな帝国であるにも関わらず、トラン帝国との対立をして来たが、昨年両帝国の和解が成立して、その第一歩目の取り組みとして、現第5王女のデリダ・ユーフラテス・ハルバード王女がトラン帝国の武魔学園に入学したということらしい。
このトラン帝国武魔学園には、毎年学園の序列を決めるための「序列決定戦」という学園主催の大会があり、今年の序列決定戦は一回戦から物凄い熱戦を繰り広げていた。
俺ことエージス・クラッドも一回戦はギリギリで勝ち進むことができたが、問題は二回戦だ。
俺の二回戦の相手は、あの最強武魔士デリダだったからだ。
彼女は、一回戦の相手にMHDを顕現させずに素手で相手をノックダウンさせたらしく、学園内ではその話で持ちきりになっていた。
二回戦当日、俺は早めに控え室に入り瞑想を始めた。俺はこの学園に来てから一度も試合前の瞑想を欠かしたことはない。
遠くから聞こえる他の試合の音、水のせせらぎ、風の音。
別に欠かしたところで何もないのだが、一番試合に集中できるのが、この瞑想だったのだ。
瞑想が終わったところで、控え室のドアがノックされた。
俺は、以前からかんがえていた作戦の手はずを整えてから、フィールドに向かった。
「イージスのマナを消費するのが、いやだったので試合直前まで温存しているところから始めて手筈通り行けば必ず勝てる。」
と思っていた。
フィールドの入場リフトに乗り込み、リフトが上がって行くと、少しずつ彼女も見えてきた。
やはり予想通り彼女は素手だ。そして試合開始の合図の電子音が鳴った瞬間、彼女と俺は行動を始めていた。彼女は俺と距離を置いて、こっちの出かたを伺っているが、俺はそんなの気にせず、作戦の手筈通りに行動していた・・・第1、第2、第3手順を終わらせて、第四手順に移ろうかと思ったその瞬間、いきなり彼女が距離を詰めてきて、俺に襲いかかった。
彼女の拳は、腹をえぐるかのように食い込んで行ったが、俺はすぐさまMHDを顕現させてその後の攻撃を、なんとか防いだ。
そして彼女が再び距離を置くと、MHDを顕現させるため、詠唱を始めた。
<我、目覚めるは、黄昏時に現れし天聖槍なりー、大地を裂き、蒼天を穿て無双の聖槍。汝、我の力となり、顕現せよ!ダーインスレイヴ!>
ようやく姿を現したMHDは、槍状のMHDで、公にするのは、おそらく今日が初めてだろう。
俺は予想外の出来事に、しばらく動けなかったが、はっと我に帰り、真っ向からの勝負に出たが、もちろんこれ以上の策はなく、ただただ突っ込んで行っただけだ。
しかし、真っ向からやり合っても決して劣っているわけではなかったが、彼女はMHDを二本顕現させ始め、俺はそれを一つの盾でしのいでいた。
しかし、突然彼女が攻撃をやめ俺と距離とった、そしてなんらかの構えをすると、一気に距離を詰めて、ハルバードでエージスのMHDを真っ二つに斬ってしまったのだ。
エージスのMHDは、マナが尽きて形を維持できず、同時に耐久力もゼロになってしまったのだ。
「これで終わりよ!」と彼女が叫びながら、俺を覆うかのようにMHDを突き出していた、
しかし、俺にはこの時のために秘策を考えていた。
魔術の方で、漆黒の剣を創り、彼女の攻撃を受け止めた。
「えっ」と驚きを隠せない様子だったが、俺はその隙を逃さなかった。
その瞬間、俺は今あるだけのマナを消費して聖剣を創り出し、彼女の胸を突き刺そうとした瞬間、俺が創り出したはずの剣があっという間に、破壊されてしまったのだ。
「なにっ!?」
と思わず、声を出してしまった。
「刀剣の破壊者よ」
と彼女が言ったその単語に俺は驚愕した。
刀剣の破壊者とは魔剣の中でも最強最悪の武器で創り出す時に使うマナの量は通常の50倍とも言われている。
そんな魔剣を扱えるということは、マナの量は半端ではない。
そこで俺が瞬時に考えた打開策は・・・
「とりあえず突っ込む!」
と作戦でもなんでもない作戦を考えついた俺は、もう一度顕現させたイージスを使って、彼女に正面から突っ込んでいった。
そして、互いの間合いに入ったところで、エージスは、不滅の聖剣デュランダルを、彼女は、ダーインスレイヴを相手の胸元に刺した その瞬間!・・・。
俺が目覚めたのは、病院の一室だった・・・。
おそらく、俺がデュランダルを刺したと同時に彼女のダーイブレイヴを俺の胸に刺さったのだ。世に言う相打ちという形で、決着したのだと俺はすぐに理解した。
俺はすぐに彼女のもとに向かうべく、病室のベッドから起き上がろうとした、その刹那・・・
全身に電撃が走ったような痛みが襲い、俺は立つこともできずに倒れた。
すぐに看護師の人が2、3人来た。俺はなんとか起き上がることができたが、悔しかった。
彼女と相討ちしたのは、大きいがやはりSランクを少しなめていたのかもしれない。
一週間後、俺は退院して学園にある練習場で彼女との一戦を思い返しながら、左手にイージス、右手にデュランダルという装備で次の試合に向けて、稽古を再開していた。その時!
「あんたも懲りないわね」
と稽古を中断して、声のした方を見た。その声の主は、他の誰でもない デリダだった。
「私と相討ちになった初めての人間なのに、誰もあんたの強さを知らないなんて、あんた友達とかいるの?」
「友達くらいいるよ。お前こそ強すぎて、友達できないんじゃないか?」
と俺が言うと彼女は分かりやすくギクッ!と反応して、強すぎて友達がいまだにできていないのを自供した。
「ところで、Sランク様が学園最弱の俺になんか用か?」
と本題を提示させた。
デリダはよっぽど俺と相討ちになったのが、不満らしく、再戦を要求したいということだった。
だが、俺はその要求を飲むことはできなかった。
なぜなら、俺は他にやらなければいけないことがあったからだ。
デリダは、事情を知ると納得して帰って行った。
俺は、デリダが帰った後もずっと稽古をしていたのだが、どうしても身が入らず稽古を諦め、家に向かった。
校舎の廊下を歩いていると、制服の右のポケットに入れている携帯型端末がひとりでに動いた。
こんにちは。沢谷天陸と申します。
今回やっと時間ができまして、記念すべき一作目のプロローグを投稿することができました!
これからもですね、投稿頻度をできるだけ落とさず投稿し続けられるようにしますので、皆さんどうぞ応援やGood、コメントよろしくお願いします。
では、また次のお話でお会いしましょう。
by sawatani