表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

プリュドの後悔


村長のデニスさんの家で、久しぶりのベッドに寝転がると、私はほうっと息をついた。


「やっぱりベッドはいいね」

「ワラにシーツかぶせただけだけどね。でも外じゃないだけずっとましだわ」


憎まれ口をたたきつつ、アイシャもわらのベッドに倒れこんだ。

マルク村でもそうだったけれど、農民が大半を占める田舎の村にベッドなんて高級品はない。

当然、私の家のベッドも、木の台に厚での布を重ねただけのものだった。


「アイシャの家は村長さんだったから、ちゃんとしたベッドがあったりした?」

「そんなことないわ。うちのお父様はベッドにお金をかけるくらいなら、作物の種を買うような人だもの」

「はは、確かに」


アイシャのお父さんは、本当にいい村長さんなのである。


「それより、聖女様はわらのベッドで大丈夫なの?」


もうひとつのわらベッドに腰を下ろしたプリュドのほうを見ながら、アイシャがこそっと耳打ちしてきた。


「プリュドは慣れてるから大丈夫だよ。ね、プリュド」

「当り前ですの。ロゼットと大陸中を旅した私をなめないで欲しいですの」

「そ、それは確かに。失礼いたしました、聖女様」


アイシャは慌てて頭を下げる。

私にとってはなじみ深いけど、アイシャにとっては違うんだった。

そこで私は、アイシャにプリュドをちゃんと紹介していないことを思い出した。

どんな関係なのかを聞かれると困ると思って先延ばしにしちゃったけど……そろそろアイシャにも、私の前世のことを話さないといけないかな。

さすがにごまかせないよね。


「アイシャ、この子はプリュド。勇者パーティにいた僧侶だよ。プリュド、この子は友達のアイシャ」

「え? あ、初めまして、レティの友達のアイシャです」

「……プリュドですの。ロゼット……レティの親友ですの!」


ちょっと怒ったような口調で、しかし私のほうをちらちらと窺いながらプリュドがアイシャに自己紹介した。

親友……だったかな。うん、まあいいけど。

しかし。

アイシャはその言葉に、ものすごく反応した。

わらのベッドから立ち上がり、プリュドに詰め寄るアイシャ。

腰に手を当て、ビシィッ! と指を突きつける。


「レティの親友は、私よ! なによ、聖女様だからって。私はレティとずっと一緒にいるのよ!」

「なっ! 生意気ですの! プリュドなんて前世から一緒ですの!」

「前世ぇ? なーにを……」


そこまで言って、アイシャはハッとこちらに向き直った。

ごくりとつばを飲み込むと、真剣な表情で言葉を紡ぐ。

言い逃れは許さない、といった迫力がある。


「……ねえ、レティの前世って、もしかして、勇者ロゼット?」

「……へへ、うん、そうだよ」

「やっぱりいいいいいいい! あー、すっきりした! これで今夜はよく眠れそうだわ」


胸のつかえがとれたといった様子のアイシャに、私は首を傾げた。


「もっと詳しく聞かなくていいの?」

「レティが話したくないことを無理に聞こうとは思わないわ。いつか話してくれたらいい」

「アイシャ……」


正直、自分でもなんで前世の記憶があるのかわからなかった私はほっとした。

隠し事をしたいわけじゃないんだけどね。


「アイシャ、ありがと」

「ふんっ!」


アイシャは照れてそっぽを向いてしまった。


「プリュドの存在を忘れるなあああああ!」


完全に忘れ去られたプリュドは、地団駄をふんでわらを巻き上げるのだった。


しばらく騒いでいたけど、さすがに眠くなってきた。

何故か二人とも私と一緒に寝ると言ってきかなくて、三つに分かれていたわら山はひとつにくっついている。

隣に潜り込んだアイシャは、早々に寝息を立て始めた。

プリュドも同じくぴったりと寄り添ってきた。


「プリュドも疲れてるでしょ? ちょっと眠ろう」

「うん……ロゼット。ずっと謝りたかったですの」


ロゼットと前世の名前を呼んだプリュドに、前世でのことかな? と考えたけど、プリュドに謝られるようなことは特に思いつかなかった。


「なにを?」

「ロゼットを、守れなかった。プリュドがもっと回復魔法が上手ければ、強力な障壁をはれていれば、ロゼットは死ななかったですの。ロゼットが死んだのは、プリュドのせいですの」 


苦しそうに、辛そうにそう呟くと、プリュドは大粒の涙をこぼした。

うさぎみたいに真っ赤な瞳から、あとからあとから涙があふれる。

そんなプリュドのふわふわの髪の毛を、よしよしと撫でる。


「プリュドも、私たちも、あの時出せる全力だったよ」

「でも……っ!」

「もし、とか、こうだったら、とか言いっこなしだよ。私たちは最善を尽くした。それにこうやってまた会えたんだから、いいじゃない」

「ロゼット……!」


泣きつかれてプリュドが眠ってしまうまで、私はプリュドの柔らかい髪を撫で続けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ