3回目の転生
産まれた時はほんの少しの灯火のようだった意識が、次第に大きくなる炎のようにはっきりとしてきたころ。
私は自分が前世の記憶をもったまま、転生したらしいことに気づいた。
しかも都合二回目。
一度目の前世では日本の女子高生だった。
どうして死んだのかはよく覚えていないが、青春を満喫する前だったことは覚えている。
そして二度目の人生では、私は人類の希望、勇者だった。
日本人だったころのゲーム知識を活かして自分を磨いた私は勇者として順調に成長し、史上最年少、そして歴代最強と認められていた。
だがそんな私に比例するように、魔王も歴史上類を見ないほどの強さだった。
最強の魔王と、その影響で活性化した魔族や魔物によって、人類は危機に瀕していた。
各地を転戦して劣勢を押し返し、魔族を各個撃破で打ち破るのには時間がかかったが、なんとか魔王との最終決戦に持ち込んだ。
間近に相対した魔王の圧力はすさまじく、びりびりと肌が震えるのを感じた。
しかし私も、勇者として見出されてから魔王と相対するこの時まで、自分の全てを戦いに捧げてきた。
負けるつもりは毛頭なかった。
こいつを倒して……青春を取り戻すのよ!
「二度目の人生すら、ぜんっぜん楽しめなかったんだからあああああああ!」
全身全霊を込めて振り上げた聖剣を迎え撃つように、魔王の掌に信じられないくらい膨大な魔力が集まった。
「やああああああああああ!」
「くらえええええええええ!」
二つの影が、神速で交錯する。
「ぐ……は……」
放たれた魔王の最期の一撃……今までどんな魔物にも破られたことのなかった魔法障壁を貫いたそれは、私に致命傷を与えた。
しかし、同時に放たれた私の聖剣の一撃は、魔王の心臓を正確に打ち砕いたはず。
薄れゆく意識の中、同じように倒れた魔王との視線が交錯したとき。
魔王の声なき言葉が、私の頭の中に響いた。
「さすが、我が宿敵……必ずや来世で……」
なにが宿敵だ。
そんなことはどうでもいい。
達成感よりも、無念がおおきかった。
せっかく二度目の人生をもらったのに、こんなところで終わるのか。
「私の人生、なんだったんだろ……」
ぽろりと涙が頬を伝うと、私はそのまま永遠の眠りについた……はずだった。