#6 二つ目のスキル
会長達と別れた後、俺はすぐに渡部にメッセージを送った。
『会長達と会ってきたんだけど、明日ゆっくり話そうって。お前も来ていいって言ってたけど、来るか?明日の午前10時な。』
するとすぐに「行く」と返ってきた。でも、なんで呼び出したのだろうか。俺の予想が合っていたら、スキルの事だろう。それも、二つ目の。此方としてはありがたい。
そして翌日。少し早めに広場に着いた。6つの寮棟は、この広場を囲むように建っている。
「あ、晴人君だ!昨日はお誘いありがとねー。会長、どんな人なの?」
「あぁ、所謂カリスマってやつだな。スキルは『全知』だってさ。」
カリスマって意味は何となく分かる。でも、会長がどんな人か聞かれても答えにくい。
「…成程ね、確かにそれはありそうだね。」
「渡部、もしかして俺の心読んでスキルの事知ってたのか?」
「うん。でも何か“力”がかかって、話せなかったんだよねー。晴人君も同じ理由なんだよ、きっと。」
そうか、あの時のは只の緊張じゃないとは思ってたけど…そういう事なのか。
「ごめんねー、待たせちゃった?」
会長だ。渡部とは初対面だったな。
「あ、会長!いえ、今来たばかりです。」
「会長、じゃなくていいのよ。金、でお願い。」
あっはい…。
「初めまして、渡部小鳥です。ある程度は晴人君から聞きました。」
「初めまして、西ノ宮金よ。ふふ、私も貴方や晴人君達の事はスキルのおかげで知っているわ。」
この二人、スキルのおかげで情報量豊富だからな。
「あ、此処じゃ話しにくいから、生徒会室に行きましょうか。」
休日だけど、生徒会室に向かった。
「うわぁ、本当に来ちゃいましたけど…入って大丈夫なんですか?」
「良いのよ。それに、内容が内容だし。」
渡部はちょっと嬉しそうだ。生徒会室って、殆どの人が入れないからな。俺達は普通に入ったけど。それにしても…本部役員、あれで全員なのか。いや、他の年はもっといたみたいだけども。
「それじゃあ、本題なんだけど…貴方達も、二つ目のスキルについて何か知っているのでしょう?」
「はい。金先輩も…ですか?」
「えぇ。私のスキルは『全知』だからね。」
やっぱり、スキルの事なのか。
「父さんが言っていた“第二のスキル”…『結界』は、晴人君が持っている。この事を知っているのは、今の所私達三人だけよ。」
そう、俺のスキルは『“気”使い』…そして『結界』だ。
「あの…自己紹介の時にスキルも話す事になっていて、晴人君は何かの“力”がかかって話せなかったんです。一つ目の方は銅君が代弁してくれましたが、タブレットを覗いた時は一つしか見えなかったみたいです。」
「やっぱりね…そのスキルにはちょっと制限があるみたいで、わざわざ此処に移動したのもそれのせいなの。今は、スキルの事を知らない人がいると話す事が出来ないの。広場だと多くの生徒が通るから難しいだろうし。」
「あの、その制限って解除出来るんですか?」
「出来るわよ。そのスキルの事を、貴方を除いたクラスメイト三人以上に知ってもらう事よ。小鳥ちゃんの他に二人には知られないと…私はカウントされないからね。」
「知ってもらうって…スキルについて書いても見えないし、そもそも話せないんですよね?」
「えぇ。だから、実際に目の前で使わなきゃ駄目なのよ。昨日一緒に来た子達のうちの二人、とかね。」
えぇ…いつやればいいんだよ…。それに、『結界』って強そうだけど扱い難しそうじゃん。『“気”使い』も大概だろうけど。
「あの、実際に目の前でと言ってましたけど、扱い方って分かりま…」
「それは自分で見つけなさい。私や小鳥ちゃんのは戦闘向きではないの。貴方は戦闘向きのスキルを二つも持っているのよ、狙われたりするかもしれないわ。だから、自主練とかで鍛えておきなさい。」
「え、戦闘って…あるんですか、そんなの。」
「えぇ、そうみたい。だから、小鳥ちゃんも鍛えた方がいいわよ。じゃあ晴人君、早速だけどまずは一つ目の方から鍛えましょう。手の中央に意識を集中させて、何か熱いものをイメージして。」
は、はぁ…。とりあえず、言われた通りにしてみる。熱いもの…エネルギー?が溜まったのは分かるけど、次はどうすればいいのか。
「そう、それが“気”を溜めた状態よ。…ちょっと外に出て、其処の何もない所を見つめて、エネルギーを飛ばすイメージをして。」
言われた通り、校庭の方に飛ばすイメージをした。…すると、俺の手から太いレーザーみたいなものが放たれた。
「すごい、か○は○波みたいだ!格好良いー!」
渡部が興奮している。金先輩もニコニコしている。
「そう、それよ!…でも、もっと早く威力も強くしたいわね。そんな感じでトレーニングを積んでみてね。じゃあ、私はここで失礼するわね。」
「ありがとうございました!」
先輩は満足げに帰っていった。
「それにしても、さっきの格好良かったよー!私も頑張らないと…!」
「おい、照れるだろ。」
「本当の事だもーん。出来る事があれば手伝うからさ、お互い頑張ろ!じゃあ、寮戻ろう。」
「あぁ。」
とりあえず、寮に戻った。そして急いで準備した。