#3 何かがおかしい学校
翌朝、少し早めに起きた。今日は何が起こるだろう。しかし、今日一日でこの学校が普通じゃない事を実感する事になる。
まず最初に気付いたのはリビングに来た時。リビングは共同スペースで、各学年男女別で棟が分かれている。当然、B組の人達もいる。
「おはよう万作…ってお前、首に『Mn』って書いてあるぞ⁉」
「え?…いや、晴人もでしょ!『Co』ってあるよ、首の左前方に。」
「朝から騒がしいね二人と…も⁉何か書いてあるよ…?」
「そう言ってる西ノ宮もだよ。『Cu』って。」
「⁉」
俺ら三人は、洗面所に行って鏡を見た。俺には『Co』、万作には『Mn』、西ノ宮には『Cu』と書いてある。洗っても全く落ちない。何だよ、これ。
「この三つの共通点…元素記号だね。晴人君のはコバルト、万作君のはマンガン、僕のは銅。でも謎だね。リビング戻ろうか。」
元素記号…?とか考えながら、リビングに戻った。…あれ、クラスメイトと別のクラスの人が何やら話している。容姿も声も似てるな。
「…お兄ちゃん、何か書いてあるよ…?」
「落ち着いて。お前の首にも何か書いてある。…あ、起きてたんだね。」
「お、おはよう。」
リビングにいたのは、クラスメイトの野口敦也とB組の野口悦也という生徒。双子だそうだけど、正直見分けにくい。
「…あぁ、見分けがつかないって言いたいんだよね?仕方ないよ、一卵性だし。名前で呼んでね。服が赤い方がオレ、兄の敦也。」
「ふ、服が青いボクが、弟の悦也です…すみません。」
謝らなくていいと思うな。
「なるほどね…。僕達もだけど、君達二人の首にも元素記号があるね。ほら、鏡見てごらん。」
いつの間に持ってきたらしい折りたたみ式の手鏡を、西ノ宮は渡す。
「っていつの間に⁉」
「え、さっきも持ってたけど?というかいつも持ち歩いてるよ。」
「じゃあ洗面所行く必要…」
「だって回すの面倒くさいし。…それより、二人共確認してみて。」
さらっと話題を戻される。まぁ、本題はそっちだしな。鏡を見た野口兄弟は、驚いた表情をした。敦也には『Ga』、悦也には『Ge』と書かれている。
「な、何これ…。お兄ちゃん…!」
「落ち着いて、悦也。…へぇ、埋め込まれてるのか。だとしたら昨日の夜だね…。」
ふと時計を見ると、もう8時だ。朝礼は20分からだから、15分には教室にいなきゃいけない。
「やばっ、もうこんな時間だ。」
俺達は急いで校舎に向かった。
クラスに入ると、俺達以外の皆にもやはり、元素記号が書いてある。渡部には『Y』とある。
「おはよう。…ねぇ、なんか書いてあるよね⁉何これ⁉」
「おはよう。書かれてるのは俺達A組だけじゃないらしいんだ。B組の人にもあったぞ。書かれている文字は元素記号らしいんだ。西ノ宮曰く」
「え…そうなの、銅君?」
「うん。それも、番号まで凝ってある。ざっと見た所、このクラスの人は元素番号39番までの奇数が出席番号順に書かれている。そして、朝会ったB君の子は偶数。そしてA組は20人、B組は19人。僕が何を言いたいか分かる?」
え…B組の人は38番までの偶数の元素記号が書かれている…?なんか、語彙力ない気がするけど。
「その通り。あくまで僕の推測だけどね。…ちょうどこれから朝礼だし、はっきり分かると思うよ。校長についても、変わってる筈だからね。」
「み、皆さん…おはようございます。正直先生も混乱していますが、廊下に並んで朝礼に行きましょう。」
願寺先生には『JH』と書かれている。…流石に先生は元素記号じゃないけど、状況は似ている。
それから俺達は廊下に出席番号順で並ばされ、体育館に向かった。俺達のクラスは一番右に並ぶ事にはなっているけど、先輩達も先生達も動揺しているのは分かる。そうこうしているうちに朝礼が始まり、先輩達と向き合って軽く挨拶をした。若干見づらかったけど、首に文字…元素記号が書かれているのを確認できた。そして、一人の男の人が壇上に上がった。西ノ宮の父親、すなわち前の副校長らしい。
「皆さんおはようございます。今日は皆さんにいくつかお知らせがあります。まず一つ目…先代の校長先生が三ヶ月前から失踪していて、殺害されていた事が先月分かりました。」
「…っ、爺さん…。」
いきなりかなり重要なのがきたな…。前校長、殺されてたなんて…。
「二つ目…その関係で、校長が変わります。」
ん、校長がとしか言っていない…。副校長は?
「私は変わらず副校長とさせて頂きます。そして三つ目、これは新校長の方針ですが…皆さん気づいたかと思いますが、昨夜の間に生徒や教員全員の首元に、ある装置を埋め込ませていただきました。質問がありましたらどうぞ。」
そ、装置⁉それ絶対危ないやつだよな?今度の校長は何考えているんだ…?先輩達が次々に手を挙げる。西ノ宮とかも手を挙げる。
「今年から全寮制になったのも、関係しているんですか…?」
「そうです。学校の敷地内に様々な設備があるのはその為です。基本的には敷地外には出られません。」
「僕達にとって得になる事はありますか?」
「ありますよ。先生方も含め全員に一つ特殊スキルを与えています。全校生徒の中で一人だけ、スキルを二つ持つ人もいます。タブレットにそれぞれのスキルを書いて送りましたよ。」
は?特殊スキルって、所謂超能力とか異能力の事?
「それでは、朝礼を終わります。普段の朝礼は放送朝礼です。では、1−Aから順に戻って下さい。」
割とあっという間に終わった。教室に戻って調べなきゃ。
甘蜜です。遂にタイトル詐欺になりましたね。
現実ではハロウィンが近いですが、こちらはまだ春ですね。今後の展開としては、自己紹介や委員会決め等の後、行事やら何やらで主人公やヒロインが周囲の人間を変える、みたいな感じです。平和そうではありますが、前提がアレなのでね…。次回は自己紹介です。1-Aの人達のスキル一覧としても閲覧頂けると幸いです。伏線あります。