#2 自分は劣れてなんかない
校舎を出た時、筆箱を忘れた事に気付いた。しかもどこに置いていたか忘れてしまった。他に筆記用具は持ってきていないから、忘れたらプロフィールカード書く宿題が出来ない!下駄箱で靴を履き替え、駆け足で階段を登る。すると途中で渡部に会った。
「ごめん、筆箱探しに…」
「あ、探すの手伝うよ!教室行くんでしょ?ちょうど私も晴人君に用があって…。」
「良かった、これでプロフィールカード書けるね!…」
筆箱はすぐに見つかった。今日体調不良で休んだ、柳沢という女子の机の上だった。まぁ自分の左隣だった訳だな。帰ろうとしたが、渡部は何か言いたげだ。
「あのさ、晴人君…さっきの、やっぱ変だったよ。何か辛い事があるなら話して。」
あの時、俺は感情を隠したくて慌ててしまった。やっぱり、バレてたか。
「あぁ…。でも、なんでそれを?」
「えへへ…気になっちゃって、万作君に聞いたんだ。昔、いじめられていたんだってね。…でも、なんでそこまで念入りに話しかけてるの?」
万作、いつの間に…まぁ、幼馴染だし。
「その…俺、周りの人達にどうやったら追いつけるかとか考えちゃって。俺、何かできる事あるのかなとか。」
「自分に自信が持てない、って事なんだね。」
そうだ。あれは、中学の頃だった。当時の俺はいじめられていた。
『谷黒って、本当役立たずだよなー。チビだし、成績も良くねぇし。』
『なー。まさに木偶の棒だよな。』
毎日、こんな事を言われたり蹴られたりしたけど、俺は言い返せなかった。今もいじめっ子とは顔も合わせたくない。いつの間にか俺は泣いていたらしく。
「…泣く程辛かったんだね。大丈夫、私は晴人君に才能があると思うよ。」
「…え?俺に、才能?」
「私ね、今までは動物にしか興味がなくて。友達、あんま作ってなかったんだ。だけどね、晴人君と話してて凄く楽しかったの!そういう才能だよ!勉強とか運動とか、そういうのだけじゃないと思うんだ、才能って。だから、もっと自信持ってよ。…気が済むまで泣きな。」
「う…うわあああっっ!」
自分でも子供っぽいと思うくらい泣いた。でも、自分をここまで評価してくれて嬉しかった。環境だけじゃなく、俺自身も変わらなきゃ。周りに感謝の気持ちを伝える為に。
「あ、お昼時だったね!…万作君とか銅君も部屋に呼んでるけど、晴人君も一緒に食べる?」
「うん、そうする。…あれ、二人共もう帰ってたよな?じゃあ二人の事待たせてるんじゃ…。」
「…あ!」
忘れてたんかいっ。
「だろうなと思ったよ、俺に昔の晴人について聞いてきたし。」
「本当ごめんね!誘ったの私なのに…。」
「いいよいいよ。それで晴人君の気持ちが楽になったんだからね。」
良かった、二人共許してくれたみたいだ…!
「あ、話変えるけど…にしてもこの寮、本当新しいよね。俺は一通り廻ってみたけど、設備も最新の物ばかりで。本屋とかも敷地内にあるし。」
「え、凄くないそれ⁉本屋あるとか、外でなくていいじゃーん。銅君、学園長これだけ設備揃えるって凄いね!いつからなの、この制度。」
「え、今年からだよ?」
今年からって…そんな情報、説明会の時言われてないし、資料にも載ってなんか…。
「そうだ、この代知らないんだよね…今年からだよ。それと、載ってないのも無理ないよ。だって、爺さんが三ヶ月前に急に言い出したんだ。」
「三ヶ月前⁉受験直前じゃないか。随分急だなぁ。」
「三ヶ月前といえば…その事を言い出した次の日から、爺さんを誰も見ていないんだ。先生達も、身内も。」
「え⁉それ、学校は大丈夫なの?」
「父さんが副校長やってるから何とかね。でも、父さんは爺さんと同じ様な考えの人で、自由を愛する人なんだ。全寮制なんて学校に縛られるだけだって言ってたくらいだ。急にこんな校則作るかなぁ。」
それってもしかして、学校もかなりヤバいことになってるんじゃ…まさか。
「まぁ、何かしら明日言われるだろうし。俺達はとりあえず待ってた方がいいよな?」
「うん、そうだね。」
きっと明日言われる。大丈夫だ、休んでいよう。とりあえず、今日は遊ぶ事にした。
甘蜜です。最近冷え込んできましたよね。
さて、小説の方は二話目です。後半は伏線となっております。あれ、急展開…と思った方もいると思いますが、その訳は次回。概要欄を見れば察するかとも思いますが…。
それでは、また次回!