#14 和の心と協力
この時期は部活動体験の時期である。僕が部長を務める茶道部にも、昨日やはり何人もの一年生が来た。この部は今部員が僕一人なので、少し嬉しい。その中の一人…黒髪で髪が若干長めの生徒に目をつけた。他の人に比べ痺れている様子ではないし、落ち着いて茶会に参加していた。…隣の一人がすぐに痺れたりしたからでもあるが。僕の家は茶道界では結構有名で、その影響で僕も昔から茶道を嗜んできた。だから、僕は痺れなんてほぼ感じない。他人が痺れているかは、見ればわかる。
終わって一年生が帰った後、講師である叔父に呼ばれた。
「茶ノ助。お前、一年生を睨んでいただろう。」
叔父は若干苛立っているようだ。僕は睨んだつもりではないのに。僕の癖が出てしまった。この癖のせいで、僕は一匹狼だと言われるようになり、部員も友人も失う事になったのだ。
「いえ、睨んだつもりは…」
「意識せずとも行なっている事もあるのだ。現に意識が逸れていたぞ。全く、その精神は何処からなのだ。これだからいつまでも半人前なのだ。」
そう言い放ち、叔父は部室を出た。仮入部、明日もあると聞いたけど…正直、行く気が失せた。
翌日、僕は授業には出ずに屋上にいた。今は三年生、周りは受験生だが、僕は違う。僕は一人っ子なので、高校卒業後は完全に茶道の世界に入るつもりだ。学校に行けば、嫌でも茶道の事を考える羽目になる。少し、忘れたい。そうして、僕は休んでいた。連れ戻されないかって?大丈夫、仮にされそうになっても、僕のスキルを使えば追い払える。来るとしたら、叔父か顧問かだろう。
「先輩!此処に居たんですね!」
僕を探しに来たようだ。一応確認しておく。…来たのは予想したどちらでもなく、昨日仮入部に来た一年生男子と、その友人と見られる女子だ。そういえば、時計は見ていない。
「願寺先生から事情を聞いて、来たんです。仮入部に参加したいので予定通…」
「帰ってくれ!」
僕は男子生徒に向かってそう言った。すると、彼は出入口に向かって歩き出した。
「いけませんわ、谷黒さん!」
女子生徒が、男子生徒…谷黒という生徒の手首を掴んだ。それで彼は我に返り、青いプリズムソードを構えた。僕が抹茶色のプリズムソードを出したからだろう。
「ありがとう、柳沢。」
「いえ。…言霊が、先輩のスキルなのですか。」
柳沢という女子生徒は鋭い。そう、僕のスキルは『言霊使い』。特に感情を込めた時に起こりやすく、僕の言葉が相手の行動を支配する。極端な例でいうと、此処で飛び降りろと言ったら、相手はすぐにでも飛び降りてしまう。そういう、人を束縛するスキルなのだ。そういう事を話しつつも、男子生徒と剣劇をしている。光なので自分のはすり抜けるが、相手のは普通に掠る。それにしても彼、素人にしては中々強い。
「やっぱり、そうなんですね。それと…昨日の事で悩んでいるんですよね。」
谷黒君にも気づかれていた。いや、それほど分かりやすかっただけだ。
「…そうだ。講師が僕の叔父で、家系の関係もあってやたらと厳しく当たられる。…昨日、性格まで指摘される羽目になったし。」
「あの、昨日こちらを睨んでいたように思えたのですが…。」
「あぁ、叔父にその事で怒られたんだ。確かに君の方を見た。…しかし、睨んだのではなく、感心して目をつけただけだ。」
「そうですか…。」
彼は少し嬉しそうだった。しかし、すぐに表情を戻した。でも、ソードは仕舞っていた。僕も仕舞った。
「…ずっと一人で抱え込んでいたんですね。」
僕は静かに頷いた。僕は何をしているのだろう、一年生に身の上話を聞いてもらうなんて。これこそ、僕の勝手なエゴだ。…すると、彼は僕をいきなり抱きしめた。
「…すみません、急に。でも、大丈夫ですよ。先輩は一人じゃありません。俺、入部届出してきたんです。ですから、辛い事があれば相談して下さい。」
そう言って彼は僕を離した。…え、入る?この部に?
「はい。ついでに言いますと、彼女も今日仮入部に行きたがっていて。」
「そうなのです。私も、仮入部はまだですが入部を考えていますの。茶道の経験は少ないですがありますし。」
「ちょ、それは俺も初耳なんだけど。」
え?え?新入部員が…二人?この時点で?僕は思わず力が抜けて、床に座り込んだ。
「そこまで驚かなくても…。」
「いや、つい感極まって。…分かった、戻るとする。…ありがとう、谷黒君、柳沢さん。」
「名前呼び捨てでいいですよ。」
「そうか。…自己紹介まだだったな。改めて…僕は大和茶ノ助、3年A組で茶道部部長だ。」
「宜しくお願いします、大和先輩。俺は谷黒晴人、1年A組です。」
「私は柳沢朱音と申します、クラスは谷黒さんと同じA組ですわ。」
「宜しく。晴人、朱音。」
僕達は部室に向かった。もう、今なら大丈夫だ。彼らがいる。
「終わっちゃったんですね、仮入部期間。」
「そうだな。」
仮入部期間はあまり長くなく、結局新入部員は晴人と朱音だけだが、部活として成立する人数にはなった。まぁ、僕は三年生だが。
「ですが、三人なのでとりあえずは廃部の危機もなくなりましたわね。」
「まぁ、来年一人以上勧誘すれば良い訳だし。」
あぁ、他人とこんなに談笑したのはいつぶりだろうか。暫くはこのメンバーでやっていくわけだ。二人に頼るのもいいが、僕ももっとしっかりしなくては。
甘蜜です。今日は!押しカプを!見るよ!
さて、本編は茶之助視点です。パイセンですよパイセン。高校の特別講座という時間に、私は今茶道を教わっています。その影響で、茶之助達がやっているのも裏千家イメージです。まぁ、13話書いた時はまだ授業を受ける前でしたけれとも。次話は合宿編です。ちょいぐだぐだかもです。