#13 次代当主の葛藤
部活動説明会が終わり、仮入部に行く事に。
「今日から仮入部かぁ。私はやっぱ吹部だな。やっぱ低音、これが勝つる!」
「俺もだな。クラリネット持ってきてるし。」
小倉、わざわざそれ持ってきてたのはそういう事か…。
「でも皆大体は決めてるんだね。晴人君、何処か行く?」
「あぁ、茶道部。今日活動日だし。」
「茶道ねぇ…僕も行くよ。入るかはさておき。」
あぁ、こいつはそうだろうな…。
茶道部に行ってみると、俺達以外にも何人かいた。B組率高いな。
「こんにちは、部長の大和です。講師の方がいらっしゃいますので、どうぞ参加下さい。」
大和先輩…やっぱり着物だ。そうして、講師の先生が入室した。あれ、先輩にどこか似てるような…?
「今日は宜しくお願いします。皆さんは一年生、ですね?今日は、抹茶を使います。お菓子はこちらです。」
うわぁ、美味しそう。いや、茶道体験の為に来てるんだから、メインはお茶だ。
稽古が始まり、皆落ち着いて先生の指示に従っている。皆集中しているように見えるけど、足も痺れている人が殆どだろう。俺も若干痺れている。西ノ宮は多分一番早く痺れだしたな。もう目が死んでる。先輩、これいつもなんて凄いな。
「一年生の皆さん、痺れていますか?少し崩しても結構ですよ。」
言われて、一年生はほぼ全員姿勢を崩す。先輩と先生はそのままだ。やっぱ、慣れなんだろうな。…何だろう、さっきまでと違って、先輩が睨んでいた気がする。
「では、今日の仮入部はこれで終わりです。」
仮入部が終わると、一緒にやっていた一年生は皆ざわついている。不評らしい。俺は部屋を出る時に、後ろを振り返ってみる。先生が先輩に注意しているようだ。どういう事だ…?
「晴人くーん、どうしたの?」
「いや、何でもない。」
「ふーん。それにしても、凄く痺れたよね。」
「お前、多分最初に痺れ出してたぞ。」
「え、やっぱり?あ、あと…先輩、僕達が姿勢崩した時に睨んでなかった?晴人君の方。」
やっぱり、西ノ宮も思ってたのか…って俺かよ!
「晴人君、部活どうする?僕はやっぱり無所属にする。」
「俺は入るぞ、茶道部。」
「え、マジで⁉」
おい、それは失礼だろ。ここ部室前だし。とりあえず、寮に戻るか。入部届けも貰ったし、明日にでも書いて出すか。
翌日、放課後に入部届けを出して、それから茶道部の仮入部に行く事にした。本来はないけど、仮入部期間だからと先生も来てくださったそうだ。…この部の顧問って、確か担任だったな。昨日は休みの日だっただけだ。終学活も終わったので、教卓の前に行く。
「あの、先生…入部届です。」
「あら、谷黒君入ってくれるのね?ありがとう。」
「いえ…それで、今日も仮入部に行くつもりなんですけど…。」
「あら、それは嬉しいけど…大和君、今日休みみたいよ。体調が悪い訳でもなく、日誌も不明の所に丸がついてる。」
大和先輩…どうしたんだ?
「昨日の仮入部で、何かあったのかも…こんな事聞くのもあれだけど、昨日何か変わった事はなかった?彼について。態度とか。」
「えぇと…睨んだような目付きになってたり、仮入部終了後に講師の先生に注意されていたような…。いや、気にしすぎですかね…。」
「ありがとう。やっぱりねぇ…。」
先生は嫌な予感が当たったという反応をしている。
「な、何か?」
「あぁ…彼、一匹狼だからねぇ…人にそんな感じで接する事って、少なくないのよ。これだから部員が減っていくのよ…。それと、講師は大和君の叔父にあたる人だから、余計にね…。」
「あれ、先輩の家って…。」
「茶道界では結構有名な大和家よ。」
やっぱり凄い人なのか!
「あれ、でもなんで今日休みなんですかね?」
「さぁね。でもまぁ、彼の事だから精神的にくるんじゃない?困ったわ、今日も仮入部に来る子達がいるのに…」
俺以外にも、仮入部に行く人はいる。そりゃそうだ。
「…すみません、その話って…。」
柳沢!そうだ、ここは教室だから他の人もいるしな。でもこいつが食いついたって事は…。
「あの…私も今日、仮入部に行くつもりでしたの。」
「そう、嬉しいけどこんな状況で…。」
どうしようか、俺にできる事は…。
「私、部長さんの所に直接行きますわ。谷黒さんも、良ければご一緒して頂きたいのですが…。」
柳沢⁉…そうだ、こいつもお嬢様だ。正直、遠藤以上にズレている。急にそんな事決めるあたり、流石すぎる。どうしようか、でも先輩の為になるなら…
「…俺も行きます。」
「あら、二人共…。それじゃあ、お願いするわね。」
「「はい!」」
俺はそれを引き受ける事にした。先月までの俺なら面倒臭がってやらないだろうな。
「でも先生、先輩がいそうな所って何処ですかね?」
「彼、割と一人でいるの。だから、屋上か寮かの二択ね。この間みたいな事に備えて、一緒に行きなさい。」
「はい…そういえば、この間のって仰りますが、何があったのですか?」
そうだ、あの場にいたのは俺を含めて七人だけ。小倉の事を考慮して詳しくは話していない。少なくとも生徒は、ちゃんと知らない人が多いのだ。
「谷黒君は知っているけれど、放課後にちょっと小倉君に関して事件があって、戦闘にね…」
「そう、ですか…。」
『戦闘』という単語が出た時、柳沢も信じられないという顔をしていた。俺も驚いたけど、それどころじゃなかったんだって!
「…柳沢、出来るだけこの件は内緒にしてくれないか?」
「勿論ですわ。…あ、早く行かないと!行きますわよ!」
俺達は駆け出した。