表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

#1 入学式と小さな俺

 四月。それは出会いの月。俺は今凄くわくわくしている。それは、今日から憧れの高校生活が始まるからだ。全寮制で、学校の敷地内に寮もある。身長もあまり高くなく地味なので、中学時代は何故か『コバルト』というあだ名をつけられていた。名前から連想したのかもしれないけど。襟やボタンが珍しいジャケットをワイシャツの上に来て、長ズボンを履き、門をくぐる。そう、俺は今日から私立西ノ宮高校の生徒となるのだ。


 下駄箱で履き替えると、クラス分けの紙を貰う。俺は…A組出席番号十四番、谷黒(たにぐろ)晴人(はると)。これだ。


 教室についた。クラス数が少ないので、一・二年生は同じ階だ。何しろ、各学年二クラスらしいしな。


「お、おはよう。今日会わなかったな。」


俺より早く来ている奴が二人いる。一人はこいつ、椎名(しいな)万作(まんさく)という幼馴染。前の席らしい。家が近所で、幼稚園からずっと一緒だ。まさか高校も一緒になるとは。それにしても、何で学校で漫画読んでるんだ。


「え、高校だから煩く言われないでしょ。というか好きな事やっちゃいけない理由ってある?」


「確かにそうだけどさ…」


駄目だ、完全にオタクだ。あの頃は活発に外遊びしていたのに。今じゃ暗いし眼鏡かけてるし、何より漫画とかに熱中していて他の事に目もくれない。


「はぁ…えっと、宜しく」


「あ、おはよう。席、隣なんだね」


俺の左斜め後ろに座っている生徒がもう一人…天使の羽をモチーフにしている髪飾りをした女子だ。出席番号順に四列に並んでいるので、僕は左から二番目の後ろから二番目だ。という事は彼女は出席番号二十番、渡部小鳥(わたべことり)さんか。名前からして飛びそう。


「えっと…渡部さん、だよな?」


「呼び捨てでいいよー!私、かしこまったの苦手で…」


「じゃあ渡部、何でこんな早く来てるんだ?」


「えへへ…私鳥が好きでね、早く来たら沢山会えるなって。…どうしたの?」


「「可愛い」」


流石の万作も漫画を読む手を止めて聞いていたらしい。でも鳥に会う為に早めに…ちょっと珍しいかも。


 暫くして全員が揃った。担任は誰だろう。


「おはようございます。私は担任の願寺史頼(がんじしより)、教科は日本史です。」


ち、ちっちゃい…ざっと身長は150センチないくらいだろうか。女性にしても小柄だ。…いや、名前にツッコむべきだろうか。それにしてもこの先生、愛らしい。


「入学式お疲れ様です。先生は物を取りに行くので、その間近くの人と少し話してみて下さい。」


完全フリーか。既に朝、友達は出来た。とりあえず、近くの人に話しかけようかな。右隣は小倉(おぐら)(しょう)という男子生徒。音符のヘアピンを留めているあたり、かなりの音楽好きなのだろう。ただ、声は掛けづらい雰囲気だ。


一方、後ろの席は西ノ宮(にしのみや)(どう)という男子生徒。あれ、西ノ宮…?


「俺、谷黒晴人。宜しくな。」


「ぼ、僕に対し対等に話すなんて…明日は嵐だろうか」


急に何だ、この人。


「っとすまないね。僕は西ノ宮銅。自慢ではないけど、前校長の孫で副校長の次男なんだ。」


次男⁉兄弟がいるのか…。いや、それ自慢して良い事だと思うけど…


「兄弟ってのは…」


「二年に兄が、三年に姉がいるよ。二人共生徒会で、今年度もやるとか何とかと言っているんだ。入学早々だが、僕も理候補するつもりだよ。」


生徒会かぁ…俺は面倒臭そうだからやらないけど。あ、でも部活は入っておきたいなぁ。


「でもこの高校凄いな。私立だけど、制服の着崩し自由だし。」


「あぁ、うちは先祖代々自由をこよなく愛する人が多いからね。僕もこの校則は悪くないと思うよ。」


「あれ、晴人君また友達増えたの?流石だね!」


「いや、俺はクラスに馴染みたいってのが大きいけど…」


「渡部さん。遅れたけど宜しくね。」


「いいよいいよー、堅苦しくしなくて。宜しくね、銅君。」


この二人、席隣…なんだよな?


「あ、晴人君は周辺の子と話してる感じ?じゃあ右隣の人とは?」


「いや、まだなんだ。一回話してみようかな。…えっと、俺は谷黒晴人、宜しく。」


「ふーん…宜しく」


うわ、まさかの塩対応⁉


「こら、翔。愛想悪すぎ。ごめん、私は遠藤(えんどう)奈子(なこ)。コイツは小倉翔。コイツとは中学も一緒だったんだ。こんな奴だけど根はいいからさ。宜しくね。」


遠藤と小倉…友達以上に見えるのは気のせい、かな?


「にしても、谷黒はもう周りと話してるのか。」


「いや…俺、馴染めるようにするには何がいいか考えて…結果、やっぱり声を掛けるのが一番かなと」


「成程なー、私もそういうタイプなんだ。」


「…いや、それ以外にも理由あるだろ。」


「困ってるだr…っておい、本当愛想悪いぞ。谷黒、そんな思い詰めなくていいからな…どうした?」


「…いや、何でもない。あ、そろそろ先生来るぞ。」


先生が戻ってきて、配布物を配る。量が多かったようだ。


「明日は全校朝礼があるので、服装を正しておくように。また、自己紹介をするので内容を考えてきてください。タブレットも使います。ホームルームを終わります。」


「ありがとうごさいました、さようなら。」


「さようなら。」


やっと部屋に戻れる…!俺は少し急ぎめに教室を出た。


「晴人君、ちょっと話…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ