九話 趣味
俺は趣味で小説を書いてる。最近書いてるのはホラーだ。
仕事、子育てなどの合間をぬってコツコツ書いている。
ちなみにこの事は誰にも言っていない。もちろん妻のA子にもだ。
執筆時間はもっぱら子供が寝静まった夜に書くのだが、妻がちょくちょく私のノートパソコンを覗いてくるのだ。
気になるのは分かるんだが、恥ずかしいからいつも適当にごまかしていた。
だがこの日はやけにしつこく聞いてきた。仕方がないので、ホラー小説を読んでいるとごまかした。
ちょうど、あるサイトで夏の怖い話2017という限定企画をやっていたので、それを教えてやった。
妻はスマホでそのサイトの小説を閲覧しだしたので、その日は心置きなく執筆作業に専念することができた。
時計を見る、深夜一時を回っていた。明日も仕事だ、そろそろ寝るか。
寝室に入るとぼんやりと光るスマートフォンのバックライトが見えた。
妻だ、まだ読んでいたのか。
「ほどほどにしろよ、目が悪くなるぞ」
「うん、もう少しだけ」
しょうがないな、あまり言うと怒るからな。先に寝るとしよう。
ベッドに寝転ぶと子供を起こさないように気をつけつつ、はだけたパジャマを直してやる。
「そうだ、ちなみにその中に一つだけ俺が書いたやつがあるぞ」
つい口を滑らして言ってしまったが、冗談ぽく言ったためか集中して読んでいるためか、妻からの返事は無かった。
――――――
翌朝パンと珈琲ををとりながら新聞を読んでいると、妻がスマホを見せてきた。
「ねえ、もしかしてあなたが書いたのって、これ?」
絶句した。スマホに映し出された文字。それは明らかに私が書いて投稿した小説。
たしか投稿作品は三百以上あったはずだが……
何故分かったのだろう? というか一晩で全部読んだのか?
「さ、さあどうだろうね? ……何でそう思った?」
「う~ん、なんとなく」
一度珈琲で喉を潤し、気持ちを切り替えて言った言葉だったが声が上ずっていたかも知れない。
お互い共働きで出勤時間が迫っている事もあってか、それ以上妻が追及してくることはなかった。
※この話はフィクションです。でも、奥さんには意外と隠し事はバレていたりするものですよね。
……なあ、見てるんだろ?
オチを当てられると悔しいので、こんな話も挟んでみました。
野球でいうチェンジアップでしょうか。
もちろんフィクションです。