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二話 気配

 最近人の気配がする。

 私は都内の賃貸マンションに一人暮らしをしているのだが、時々私以外の人の気配がするのだ。

 気配といっても人の足音が聞こえたり、鏡に何か映ったりするわけではないのだが、留守をして家に帰って来た時、物の配置が微妙に変わっていたりする。


 私は仕事柄夕方出勤し、朝帰宅するという生活を営んでいるわけであるが、置いてあったリモコンの位置が変わっていたり、使ってもいない食器がシンクに置かれていたりなどの小さな変化が起こっている。


 最初は気のせいだと思っていたのだが、徐々に違和感が大きくなり、今では私の留守中に誰かが出入りしているという確信にも似た気持ちを持つに至ったのだ。

 ただ部屋が荒らされていない事から、泥棒ではなさそうなのだが。

 もしやマンションの管理人が合鍵を使い、侵入しているのではとも考えだした。


 私は考えた挙句、部屋の中をビデオカメラで撮影する事にしたのだ。

 夕方にカメラをセットし仕事に出かける。これで侵入者の正体が判明するであろう。



 朝帰宅して玄関を開ける。特に変わった事はないのだが、やはり違和感を感じる。

 リビングへ行きキッチンの蛇口をひねり水を一杯のむと、不安な気持ちが少しばかり落ち着いてきた。

 椅子を動かし踏み台にすると、棚の上に置いていたビデオカメラに手を伸ばした。

 果たしてカメラは何を映しだすのであろうか。

 

 意を決してビデオカメラを再生してみる。

 カメラの液晶画面は部屋のリビングを映し出している。しばらく何の変化も無かったのだが……来た。

 玄関のドアが開く音がして、男がズカズカと部屋に入ってくる。男は冷蔵庫を開け、ビールを取り出すとドッカリと床に腰を下ろし、テレビを見だした。

 誰だコイツ……


 全く見覚えのない男が、我が物顔で私の部屋でくつろいでいたのだ。

 その後も男は立ち去る様子もなく、風呂に入り、挙句の果てには睡眠までとり始めてしまった。

 この男は大胆にも私の留守中に普通に生活していたのだ。

 カメラを早送りし朝になるまで見ていたが、何事も無かったかのように起床し、朝ごはんを食べている。


 やがて男は身支度を整え、玄関から出て行った。

 この男は一体何が目的なのだ。あまりの異常事態に思考が停止する。


 これはもう警察に行くしかないと思った時、玄関のドアが開く音がした。

 

 驚いて玄関を見て見るのだが、誰もいない。

 さてはビデオカメラの音か? 男が忘れ物をして帰って来たのかも知れない。

 そう思いビデオカメラを見て見るのだが、無人の部屋を映すのみだった。


 いや、違う……これは。

 誰もいないのにひとりでにキッチンの蛇口から水が出て来たのだ。

 そしてひとりでに椅子が動き……それからしばらくして映像は止まった。


 唖然とする。怪奇現象? いやこれは……。


 そうだ思い出した、俺は死んだのだ。ベランダから飛び降り、自殺したのだ。

 急速に近づく地面とグシャっという音が最後の記憶だ。

 今の俺は幽霊なのか、しかしそれが分かったところでどうすれば良いのだろう。

 成仏する方法など思い付かない……

 落ち着け、死んでるのだから時間など十分あるだろう。ゆっくり考えて最善の方法を見つけ出すのだ。

 ひとまず今は休もう、幽霊といえど頭は疲れるのだ。



――――――



 最近人の気配がする。

 私は都内の賃貸マンションに一人暮らしをしているのだが、時々私以外の人の気配がするのだ。

 気配といっても人の足音が聞こえたり、鏡に何か映ったりするわけではないのだが、留守をして家に帰って来た時、物の配置が微妙に変わっていたりする。


 私は仕事柄夕方出勤し、朝帰宅するという生活を営んでいるわけであるが、置いてあったリモコンの位置が変わっていたり、使ってもいない食器がシンクに置かれていたりなどの小さな変化が起こっている。





 


自殺した人の魂は永遠に彷徨うといいます。

果たして主人公は何度、同じ行動をとっているのでしょうか?

そしてこれからも同じ行動をとり続けるのでしょうか?

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