十三話 親子
実話なので面白くないと思います。
今回はこれでご勘弁を。
あれは駅のホームを歩いている時でした。
私は前方に不審な二人組を発見したのです。
後ろ姿で顔は見えませんでしたが、明らかに異質な空気を纏っていました。
最近あまり見かけなくなりましたが、半袖半ズボン。帽子を斜め後ろに被り、ダボダボの服にジャラジャラとアクセサリーを付けている、いわゆるラッパーといった出で立ちなのですが、どこか奇妙でした。
ラッパーが悪いというのではありません、彼らは何か変なのです。近くを通る人をジロジロ見ているようなのです。特に若い女性を。
他の人も気味悪がっているようで、横を通り過ぎるときは少し距離をとって歩いていました。
私も乗り換えの為、そこを通らねばいけないので、彼らを観察しながら近づいていきます。
後ろ姿から見るに、一人は中肉中背、高校生でしょうか。もう一人は背が低くかなりの痩せ型で、体が出来上がっていない中学生といった印象でした。
ふと中肉中背が振り返りました。
その顔を見て驚きます。なんと四十歳ぐらいの中年だったのです。
なるほど、親子ですか。
恐らく中学生の方は、親の影響で同じ格好をしているのでしょう。
私は教育の大切さを感じながら歩いて行きます。
彼らとの距離が縮まっていきます。
私はなるべく目を合わせないようして進みます。
あと五メートル、三メートル、一メートル……通り過ぎました。
そのまま何事もなく私は彼らから遠ざかっていきます。
しかし、ある事が頭を過ぎりました。
もう一人の顔も見てみたい。
親の影響を受けた中学生の顔を。
しばし、心の中で葛藤が繰り広げられました。
見てみたい、でも振り返って目が合ったらどうするんだと。
しかし、気になって今日眠れないかも知れない。睡眠不足はお肌の大敵です。
安全を取るか、安眠を取るか。
私の心は揺れ動きました。
……私は意を決し、振り向きます。そして驚きました。
なんと中学生ではなく、ガリガリのお爺ちゃんだったのです。
私は思わず叫んでしまいました。
「お前が親かい!」と。