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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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私がいるよ

「そうだよ、これはアルハザールの剣。あのヴィルデラルトのせいで、どうにも使えるようになったみたい」

「それじゃ、アリサも……」

「んー」


 アルハザールの剣を壁に立て掛けると、アリサは頬を掻く。


「カナメのように、ってのは無理かな。使えるようになって分かったけど、カナメの力はたぶん「本来のレクスオール」よりもずっと上だと思う。私は後付けで使えるようにはなってるけど、なんていうのかな。世界から魔力を引き出してる感じがある」

「世界から……か」

「うん。なんていうのかな、世界に満ちるアルハザールの力を引き出してるみたいな……そんな感じ?」


 その言葉に、カナメは黙り込み……何かを考えるように手を握り、再度開く。


「……矢作成(クレスタ)


 その瞬間、アリサがピクリと反応する。


「あ、カナメ。この反応ってまさか」

戦神の矢(アルハザールアロー)


 そして、カナメの手の中に赤い矢が現れる。

 弓神の矢(レクスオールアロー)のように、他の矢とは一段違う強い力を秘めた矢。

 戦神の矢(アルハザールアロー)が、カナメの手の中にあった。


「……そういう、ことなのか」


 あの時、帝国の地下でディオスとルヴェルが現れた時。どうして彼等が現れたのか分からなかった。

 カナメは、魔法の神ディオスと縁深いわけではない。

 命の神ルヴェルとも同じだ。妹神である死の神レヴェルとは縁深くなってしまったが、それは関係ないはずだ。

 ならば、何故彼等は現れたのか?

 その答えは、簡単だ。

 矢作成(クレスタ)。それこそが答えだった。

 この魔法があらゆるものを矢にするというのなら、世界に満ちる神々の力とて例外ではない。

 カナメがそうであると認識さえすれば、それすらも矢に変えられる。

 矢作成(クレスタ)は……カナメは、世界に触れ借り受ける力を持っている。

 故に、繋がっていた。知らずのうちに、カナメは神々の力とも繋がっていた。

 つまりは、そういうことだったのだ。

 触れられぬはずのレヴェルの反響(エコー)がカナメ限定とはいえ触れられたのも、それが理由。

 そんなに前から、ずっとヒントは出ていたのだ。

 当のカナメ本人が、いつまでもそれに気付いていなかった。

 それに気付いていたら。カナメは……ここに至るまでの間、あとどれだけを救えたのだろう?


「こら、カナメ」


 そんなカナメの頭が、軽くコツンと叩かれる。


「あ、アリサ?」

「まためんどくさい事考えてたでしょ」

「いや、そんなことは」

「そんなことあるでしょ。誤魔化そうたって、そうはいかないよ」

「そんなことないって」

「いいや、そんなことあるね」

「ないよ」

「あるって」

「ないない」

「ある……ってこら!」


 カナメの頭に軽くチョップを入れ、アリサは笑う。


「まったく、もう。途中からふざけてたでしょ」

「はは……」


 笑い返しながらも、カナメは軽くなっている心を自覚する。

 そんな事ができるのもきっと、アリサがいるからなのだろう。

 出会った時からずっと……アリサには、頼りっぱなしだ。


「アリサ」

「ん?」

「ありがとう」

「どしたの、突然」


 疑問符を浮かべるアリサに、カナメは内心で苦笑する。

 そう、アリサはいつもこうなのだ。

 アリサにとってはこれが自然で、たいしたことはないことなのだ。

 そこに何の計算もないから……だから、カナメは救われてきた。


「アリサがいなかったら、たぶん……俺はここまで来れなかったよ」

「別に私一人の力ってわけでもないし。最終的にはカナメ自身の力だよ、それは」

「だとしても、ありがとう。思えば、そんな事もずっと言えてなかった気がする」


 支えられていた。

 でも、カナメがアリサを支えた事なんてどれほどあっただろうか?

 助けになりたいと思っていても、アリサはいつも強かった。

 それは単純に力ではなく、心の話。

 弱かったカナメはいつもアリサに支えられていて。

 だからこそ、カナメはアリサのようになりたかったのだ。


「……いつも、アリサには助けられてた。俺の行動基準も「アリサならどうするだろう」とか、そんな事ばっかり考えてた気がするよ」

「買いかぶりだよ、それは。私はたいした人間じゃない」

「俺の英雄はアリサだよ。それはこの先、何があっても変わらない」

「重いなあ」


 苦笑するアリサに、カナメも笑う。

 そう、それだけは変わらない。

 カナメがこの世界に来て今日にいたるまで。その根底には、いつもアリサがあった。

 アリサのようにカッコよく。そんな心が、今のカナメを形作った。


「……あのさ、アリサ」

「ん?」

「俺、絶対に守るよ。ゼルフェクトに勝って、この世界を守る」


 そんなカナメの言葉にアリサは、悪戯っぽく笑う。


「私はそんな事、絶対言わないけど?」

「ああ。だからこれは、アリサを尊敬してる俺自身の台詞。アリサが、じゃなくて……俺自身がどうしたいかの、決意表明だよ」

「ふーん……」


 アリサはカナメの顔をじっと覗き込むと、その体を軽く抱きしめるように腕をカナメの背中に回す。


「そっか。じゃあ私も、それに付き合ったげる」

「……いいのか?」

「うん。たぶん他の誰もついてこれなくなるだろうしね。だから、私が傍にいてあげる」


 感謝しなよ、と。冗談めかして言うアリサを……カナメは、強く抱きしめた。

 守る。その決意を、胸に強く秘めて。

次回更新は10/25です。

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