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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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42/521

騎士団と交渉しよう

 門から先に入ると、そこにはよく整地されたグラウンドのような場所が広がっていた。

 あちこちに設置された灯りの火が広場を照らし、荷物らしきものが一箇所に集められているのも見える。


「ここでお待ちを。すぐに副支部長が参ります」

「あら、結局外で待たせるんですのね?」


 エリーゼの皮肉じみた言葉に騎士は黙殺したままその場に立つ。

 恐らくは見張りも兼ねているのだろうが……そうやって待たされる間にも、他の騎士達が何度も近くを走り抜けていく。

 そうやって忙しく動き回る騎士達だが、門の前に立っていた全身鎧の騎士は少なく、大抵は部分鎧の組み合わせであった。

 具体的には肩鎧、胸部鎧、腕部鎧に篭手、脚部鎧……その他の部分からは鎖鎧が見えている。

 全身鎧よりは重くないのだろうが、それでも結構な重量がありそうだ。


「……あれでよく走り回れるな」

「金属鎧は手軽に手堅い防御力を得られますもの。男爵家の擁する騎士団ならこんなものでしょうが、大貴族や国の騎士団はもっと色々工夫してますわよ?」

「ふーん……」


 どうでもいいような雑談をしているように見せながらも、要の目は辺りを注意深く見回している。

 いくら騎士団の建物だからといって、武装した騎士達が慌しく動き回っているというのはただ事ではない。

 どう考えても「ダンジョン決壊」に対応するためのものなのだろうが……アリサの報告でこの状況が始まったのなら、アリサが捕まる理由が無い。

 となると村長の恐らくは嘘八百を並べ立てたであろう報告を受けて動き出したのだろう……が、その村長らしき姿は何処にも無い。

 ひょっとしたら村長が「善意の報告者」として保護されていたりしないだろうか……と思ったのだが、そんな簡単にはいかないようだ。

 それでも諦めきれずに要は視線を巡らせていたが……エリーゼに軽く袖を引かれて、パッと視線を正面に戻す。


「彼等が我々に抗議をしたいという者達か?」

「ハッ!」


 要達の正面に二人の騎士を随伴して現れたのは、随分と不健康そうな顔色をした男であった。

 真っ赤な服は派手な金色のボタンや装飾がキラキラと光り、ツヤツヤと輝く金髪と整えた髭が「偉そう」な雰囲気をかもし出す。

 よく言えば全体的に細身であり、あまり「騎士らしい」体格ではないのだが……先程の騎士の言葉を聞く限り、彼が「副支部長」である。

 ならばと要は副支部長へと詰め寄ろうとし……しかし、前に出ようとしたその瞬間に腕に腕を絡めてきたエリーゼによってガッチリとホールドされてしまう。

 要が抗議の声をあげるその前に最前列にいたハインツが一礼し、副支部長はそれを見てフンと鼻を鳴らす。


「バトラーナイトだそうだが。あまりうちの若い騎士を脅かさないで貰いたいものだな」

「これは申し訳ありません。身分の証明を求められたもので、一番信用して頂きやすいものを提示させていただきました次第にございます」

「確かにな。天秤の神ヴェラールは騎士ならば誰もが信奉する神。他のどれよりも、ヴェラール神殿の保証が一番効くであろう」


 副支部長はそう言って頷くと「で?」と声をあげる。


「そのヴェラール神殿が認定するバトラーナイト殿が、何の抗議をしにきた。まさか主人を探しにきたというわけでもないだろう?」


 そう言って、副支部長はハインツの背後の要とエリーゼに視線を向け……すぐにエリーゼのほうへと視線を固定する。

 まあ、弓だけがキラキラと豪華な要はこの面子では従者にしか見えないから当たり前ではあるだろう。


「となると、我々に抗議したいというのはそこの娘か。我々も大仕事の直前で忙しいのでね……手短にお願いしたいものだが」

「まさに、その大仕事……ダンジョン決壊に関することですわ」


 エリーゼはそう答えると、道を譲るようにすっと横に移動したハインツには視線も向けずに副支部長と向き合う。

 自信に満ちたその表情とは裏腹に副支部長は「ダンジョン決壊」と聞いて一気に警戒した視線を向けてくる。


「なんのことか分からんね」

「ご冗談を。無実の冒険者を犯人として捕らえた件……伝わっていないとでも?」

「……そういえば、捕縛の現場には男も一人いたと聞いているが」


 そう言って視線を向けてくる副支部長を要は睨み返し、しかし副支部長は怯みもしない。


「その件については、すでに証言がとれていてね。君達が何を言ったところでどうなるものでもない。だがまあ、抗議があったという件だけは記録を」

「その証言とやら、本当に信用できるのでして?」


 副支部長を遮るように放たれたエリーゼの言葉に、副支部長は気分を害したように眉をひそめ……しかし、あくまで落ち着いた口調で「勿論だ」と返す。

 だが、エリーゼは馬鹿にしたように肩をすくめてみせる。


「証言など、ただの言葉ですわ。そんなものだけを証拠として並べているようでは、ヴェラールもお怒りになるのではなくて?」

「信用できる立場の者の発言だと報告を受けている。大体、そこまで言うのであれば別の証拠があるんだろうな?」


 言外に「なければ許さない」という意味を込める副支部長に、エリーゼは全く怯まずに「当然ですわ」と返す。


「たった一つの事実で説明できますもの。レッドドラゴンを屠る実力者に……ダンジョンを隠蔽する意味があるとでも?」

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