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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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387/521

合流、そして

 ……アリサとラファエラの合流から、更に時間が経過して。イリス、ルウネ、レヴェルと次々に合流出来たカナメは、ようやくアリサを発見した。


「アリサ! ……と、あれ?」

「やあ、カナメ」


 カナメは、視線の向こうにいるアリサと……その隣にいるラファエラに気付き、駆け寄ろうとしていた足を止める。


「おいおい、どうしたんだい。まさか君まで私を警戒してるのか?」

「え? あ、いや……そういうわけじゃないんだけど。なんでいるのかなあって」

「先回りしてたからに決まってるだろ、言わせるなよ」

「ええ……? だったらなんで最初から」

「君が種族年齢問わず女の子を侍らすハーレム野郎だと言われないように配慮したつもりだったんだが」


 反論一つ出ない完璧な理由に、カナメは思わず目を逸らす。

 そんなつもりはないのだが、確かに男女比ではそういうことになっている。

 その分クラン本部は今男性率が高いんだぞ……とそんなことを考えながら、カナメはラファエラに向き直る。


「えーと。てことはラファエラも此処からは同行するってことでいいんだよな?」

「是非そうさせてもらいたいね」


 言いながら、ラファエラはカナメの背中のオウカに……そして、立っている魔操騎士(ゴーレムナイト)に視線を向ける。


「随分仲良くなったみたいだね」

「仲良くなんかなってないわよ!」

「はは……」


 苦笑するカナメの背中からオウカが慌てたように降りると、カナメは集まった仲間達を見回す。


「ようやく全員集合できたな」

「これでまだ3階層だってんだからね。先が思いやられるよ」

「確かに。他の現存するダンジョンと比べても少しばかり……」


 その先を言い淀むイリスの姿に、アリサはラファエラの言葉を思い出す。

 ダンジョンが人を選別している。

 それが真実であるのかどうかは分かるはずもないが、もしそうだとしたら……この先には、何が。


「だとしても、此処から先は楽になると思うよ」

「ああ、ついに「それ」使うってことなのね」

「そういうこと。此処まで他の人と一人も会わなかったし、イリスさんとも合流できたしな」


 カナメとレヴェルは、同時に竜鱗騎士(ドラグーン)へと視線を向ける。

 そう、天井と地面の間に広い隙間のあるこのダンジョンであれば、同時に竜鱗騎士(ドラグーン)による飛行が大きなアドバンテージになる。

 問題の一つはそれを他人に見られて大騒ぎになる事だったが……この階層に人が居ないというのであれば、何の問題もない。

 実際の飛行時における問題としては、モンスターの遠距離攻撃があったが……これはイリスの障壁(ガード)系の魔法があれば何の問題もない。


「防御はイリスさん。どうしても迎撃しなけりゃいけない時は、俺とエリーゼでどうにかなる。だろ?」

「そうですね」

「お任せですわ、カナメ様!」


 二人の同意を受けて、カナメは竜鱗騎士(ドラグーン)達に指示を出す。


「俺達を運んでくれ。実際に運ぶ以外の奴は、周囲の警戒とガードだ」


 その命令を受けると同時に、竜鱗騎士(ドラグーン)達は一切の迷いも混乱もなく動き出す。

 それぞれの近くに立っていた竜鱗騎士(ドラグーン)が一人ずつを抱え、空中へと浮かび上がる。


「このまま階段まで行きたいけど……まだ場所分からないんだよな」

「ああ、それなら私が知ってる。位置としては北西なんだが、まずは「地上」に降りないと話にならない。東に行きたまえ。そこに転移装置がある」


 ラファエラの言葉に従い、カナメ達が東に飛んでいくと……やがて眼下に奇妙なモノが見えてくる。


「ああ、あれだ」

「降りてくれ。あ、ゆっく……うわ! ゆっくり、ゆっくり!」


 急降下する竜鱗騎士(ドラグーン)に慌ててカナメが指示を出し、カナメ達は地上へと降りる。

 小さな広場のようになっている其処には小さな祭壇のような、あるいは墓のようなものがある。

 白い石で出来た石段に、石碑のような何か。

 その上部には右側を黄色、左側を黒という配色の丸い宝石のようなものが嵌っている。

 そして、石碑には文字が書かれており……警戒しながら近づいたカナメは、それをゆっくりと読み上げる。


「正気に戻りたくば祈りを捧げ、正しき位置に戻すべし……か。なんとなく意味は分かるような気もするけれど、正しい位置っていうのは……」


 カナメの視線は、二色に分けられた宝石に向けられる。

 今は右側が黄色、左側が黒。

 恐らくはこれが「正しくない」のだろう。

 これを正しくすれば「正気」……つまり、「地上」に戻るという解釈であっているはずだ。


「右が黒、左が黄で合ってるはずよ」

「え? あ、単純に逆でいいんだ?」

「ええ。それは恐らくイルムルイの色に対応してるはずよ」


 レヴェルの言葉にカナメは「イルムルイ?」と聞き返すが、それにレヴェルは「正気と狂気の神よ」と返してくる。


「正気と狂気の二面神イルムルイ。右半分を黒、左半分を黄の仮面を被った奴よ。正気がどうのこうのって言っていて、その二色を使ってるなら……間違いないわ」

「イルムルイ……そんな神の事は、聖国には伝わっていませんが……」

「伝わってない神の方が多いわよ。信仰を得やすい神のみ持ち上げたってところじゃないかしら?」

「うっ……」


 イリスが黙ってしまったのを見て、レヴェルは肩をすくめる。

 今の時代の信仰に今更レヴェルが口を出すつもりはないし、イリスに言っても意味がない事を知っているからだ。


「あー……とにかく祈りを捧げるってことはたぶん魔力を流すんだよな」

「ああ、それで私は戻れた」

「よし、じゃあ全員俺の近くに!」


 竜鱗騎士(ドラグーン)を含む全員がカナメの近くに集まった事を確認すると、カナメは石碑に魔力を流す。

 すると石碑に嵌っていた宝石がゆっくりと回転を始め……それが先程の逆位置になると同時に、カナメ達の姿は光に包まれ「地上」へと転移していた。

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