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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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236/521

聖都を侵す闇

 其処は、聖都の中でも特に神聖な場所の一つ。

 レクスオール神殿と呼ばれる場所の礼拝堂に、二人の男達が居た。

 明かりの消えた礼拝堂の中は、暗く……互いの顔も明確ではない。


「そうか。ダンジョンでそんな騒ぎがあったか」


 呟くフードを目深に被った男に、もう一人の男は無言。

「そんな騒ぎ」とは、この日ダンジョンであったという「想定外のモンスターが第2階層」に出現した事件のことである。

 すでに聖騎士団から各神殿への伝達が終わり、ダンジョンは調査の為に一時的に立ち入り禁止となっている。

 場合によっては神官騎士も投入されるが……聖国のダンジョンが決壊などという事になれば歴史的事件になってしまうし、そうではないという証明の為に聖騎士団は今頃必死だろう。

 すでに街では「一体何が起こったのか、まさか破壊神の復活の兆候があったのではないか」と噂が流れているほどだ。

 そしてそれは、彼等にとってあまり良い傾向ではなかった。


「……俺達の関与を疑っているのならば、それは少々的外れというものだな。アレは誰かに制御可能なものではない」


 続けてそう言うフードの男に、もう一人の……神官服の男はようやく口を開く。


「どうかな。私には想像のつかぬ方法をお前達が心得ているとしても、私は驚かん」

「そう思うなら思えばいい。証明する義理までは無い」


 無言のまま睨み合う二人だが……やがて、神官服の男のほうが溜息をついて無言の空間を終わらせる。


「まあ、いい。それより、どうするつもりだ? 今が大事な時期だということぐらい、お前にも分かっているだろう」

「お前こそ、どうするつもりだ。あんなモノが出てきた以上、担ぎ上げる流れは避けられないぞ?」

「……排斥の為の流れは作っている。今出てこられて困るのはこちらも同じだ」

「ということは「本物」というわけ、だな?」


 再び、無言。そのまま永遠に続くかと思われる無言を打ち破ったのは、やはり神官服の男。


「分からん。見れば理解できるものと思っていたが、本物とも偽物とも判じ難いところだ」

「そうか。偽物ならいいが、本物となると……こちらとしても少々考えねばならん」

「何をする気だ」

「排除する。アレは俺達の心をざわめかせる……今後の事を考えれば、確実に排除せねばならんものだ」


 フードの男の言葉に、神官服の男は嘲笑めいた笑みを浮かべる。


「排除? 出来るのか? 力尽くでどうにか出来るモノでないことは学習したと思ったが」

「確かにな。クラートテルランは失敗した。もし今この街にいるのがその時と同一人物であるならば、正面から挑んだところで勝ち目は薄い」


 だが、とフードの男は続ける。


「相手はレクスオールだ。たとえ本物だとしても、殺す手段はいくらでもある」

「暗殺か」

「神々はその膨大な魔力で常に自分を覆い防御を固めていたと伝え聞く。だが、それは絶対的なものではない」

「……絶対的な防御であれば、今のようにはなっていなかっただろうからな」

「そうだ。だから……たとえば」


 言いながら、フードの男は服の内側から宝石のついたナイフを取り出す。


「こういうモノに強い魔力を込める事で、その防御を貫く事も可能だ」


 フードの男の持っているナイフは魔法石のついた、いわゆる魔法使い用のナイフであり……多くダンジョンから見つかる魔法の品でもある。

 仕組みとしては単純で、魔法石に魔力を流すことでナイフ自体が魔力で強化されるというだけのものだ。


「随分簡単に破れるのだな、神々の防御というものは」

「元々補助的なものだったらしい。肉体強化の魔法の強力なものと思えば、そこまで不思議なものではなかろう?」


 実際には、そこまで単純なものではない。魔力障壁(マナガード)は物理攻撃にも魔法攻撃にも対処可能なものであり、弱い魔法程度は無傷で切り抜けることも可能だ。

 どの程度弾くのかについては伝わっておらず、フードの男のセリフもあくまで理論上可能という程度のものだ。

 しかし、そんなことまで細かく説明してやる義理もない。


「……まあ、出来るというのならば止めはしない。しないが……露見はするなよ」

「そこまで単純ではない。駒など、いくらでも作れるのだからな。それよりも」

「こちらは順調だ。心配されるまでもない」

「ならばいい」


 その会話が何を示しているかは不明だ。

 不明だが……きっと何か怪しげなものであることは間違いないだろう。


「……確認するが。今回の件、お前はどう考えている?」

「神の復活ではないだろう。恐らくは、幾つかの偶発的要素が重なったと思われる。お前達の言うところの「モンスター」は古ければ古いほど知恵を獲得する……そうした中で「上の異常」に興味を持って出てきた者がいるとしても不思議では無い」

「フン。お前たちの言うところ、か。そういえばお前達はモンスターと呼ぶことを嫌うのだったな」

「流石にヴーンをモンスターと呼ぶなとは言わんさ。だが、俺達は違う」


 空を覆う雲が流れ、月の光が礼拝堂の窓から入り込む。

 そうして僅かに照らされたフードの男の肌は……鮮やかな、緑色。


「異人。そう呼んでもらおうか、普人よ」


 その言葉を聞く者は、彼等以外には居ない。

 この「異人」の男と……神官服の男以外には、誰も。

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