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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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221/521

ジェリーとの戦い

 ぞぶぞぶと。ぐじゅぐじゅと。

 心を蝕むような気味の悪い音を立てながらジェリーはカナメ達へと向かってくる。

 丁度大人一人を飲み込めるような、そんな不気味な津波にも似た姿。


豪風の矢(ボレアスアロー)!」


 手の中に生まれた矢を放ち、再びジェリーを遠くへと吹き飛ばす。

 だが、それでは意味がない。吹き飛ばすだけでは、勝てない。


「くそっ、こんな時に限って点かねえ……おいカナメ! この際火じゃなくてもいい。なんか他の魔法!」

「他のって……そうだ、これだけ明るければ光……! って矢作成(クレスタ)! 豪風の矢(ボレアスアロー)!」


 完全にカナメ達をターゲットにしたらしいジェリーが戻ってくるのをカナメは再び吹き飛ばし、ダンジョンに満ちる光を掴む。

 この状況を打破できる矢を求め……カナメの中に、それを可能とするかもしれない矢が浮かぶ。


暗き光の矢(オウルスアロー)盲人の矢(ウェルズアロー)黒光の矢(デムライトアロー)呪光の矢(エイハスアロー)万物灼く滅光の矢ウル・ラウラーレアロー光獄の矢(ラファズアロー)拒絶する怨光の矢(エリケウンアロー)……脳を焼き切らんばかりに入り込む情報の群れに、カナメは思わず光を手放す。


「う、うわあああっ!?」

「おい、カナメ!?」

「なんでもない……矢作成(クレスタ)! 豪風の矢(ボレアスアロー)!」


 再びジェリーを風で吹き飛ばしながら、カナメは荒い息を吐く。

 光……先程の光。

 アレから流れ込んできたモノは、明らかに普通ではなかった。

 どの矢も、以前カナメが「光」を掴んだ時にはなかったものばかりだ。

 というよりも……なんとなく、触れてはいけないもののような気がする。

 だが、他の手段。あれを倒す手段は、他にあるのか。


「エル!」

「んだよ! くそっ、なんで点かねえんだ!」

「逃げるって選択は!」

「絶対追ってくるだろ! 下手すっと騎士にも被害出んぞあれ!」

矢作成(クレスタ)! 豪風の矢(ボレアスアロー)! ……分かった。ちょっとヤバいかもしれない手があるんだけど、何があっても恨まな……」

「あんならやれバカ!」

「聞いたぞ、恨むなよ!」


 カナメは、再び光を掴む。

 全てではないが、この光から出来る矢のリストは分かった。

 ならば……どれでもいいから、一番「危なくなさそう」なのを選ぶ。


矢作成(クレスタ)……黒光の矢(デムライトアロー)!」


 カナメの掴んだ光が、収縮する。

 鈍く、低く遠く響く……雄叫びのような音を立てながら、カナメの手の中で黒い矢の形をとる。

 それは黒でありながら、光沢のような輝きを持つ矢。

 つるりとしたその表面はしかし、美しいというよりも気味の悪さばかりが際立つ。

 触れているだけでぞわりとし鳥肌の立ちそうなそれを、カナメは向かってくるジェリーへ向けて放つ。

 ヴオン、と。

 カナメの手を離れた矢は解けて黒い線となる。

 いや、それは線ではない。

 文字通りの黒い光であり……それが光速でジェリーを貫いたのだ。

 黒い光の線はジェリーに吸い込まれるようにして消えていき……何故か、ジェリーはそのまま動きを止めている。


「な、なんだあ……?」


 火を点けようとする手を止めてエルはジェリーを見て……カナメも、すぐに次の攻撃に移れるように弓を構えなおす。

 ひょっとしたら、矢の選択を失敗したのか。

 そんな想像をカナメがした瞬間、ジェリーの身体から黒い光が溢れだす。

 先程呑み込んだ黒い光をすべて吐き出すかのようなジェリーのソレが終わる、その刹那。

 襲い掛かるようなポーズだったジェリーの身体が、音を立てて崩れる。

 半液状であった身体が、完全な液状に。

 まるで氷像が溶けて水になるかのようにジェリーの身体は床へと流れ落ち……そして、そこには何も残らない。

 先程の邪妖精(イヴィルズ)と同じように、消えてしまったのだろう。

 それ自体は、驚く事ではない。

 ない、が。


「すげえな、今の矢……」

「……」


 エルの呟きに、カナメは答えない。

 黒光の矢(デムライトアロー)

 どういう矢なのかは見ても分からないが、恐ろしく危険な矢であることは確かだ。

 一番危険では無さそうな矢を選んでこれなら、他の矢は一体どんな効果を持つ矢なのか。

 いや……そもそも、これはもしかして……破壊神ゼルフェクトの力ではないのだろうか?

 あの時、カナメがレヴェルの力を持つ矢を作ったように、これも……。


「なあなあ、カナメ!」

「うわっ!?」


 肩を組んでくるエルに、カナメは思わず思考を中断してしまう。


「な、なんだよ!?」

「今ので分かったけどよ、お前の矢の魔法ってあれか。その辺の物を魔法の矢に出来るんだな!?」

「え? あ、ああ」

「なら、その矢売れば大儲けじゃねえか! なんでやらねえの!?」


 何故かといえば売る気が無いからだし、ダリアの言っていた事が正しければ……カナメの矢はカナメか、カナメと「魔力の混ざった」者にしか扱えない。

 とはいえ、そんな事をエルに説明するのも……とカナメは「いや、色々と面倒があってさ」と適当に誤魔化す。


「ふーん……ま、いいけどよ。まあ、あれだな。お前ならこのダンジョンの壁でも矢とか作れそうだよな」

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