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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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出発準備3

「馬車を買う? 冗談にもならないよ」

「いや、俺もなんとなく言っただけだけど……」


 何の話かと聞いてきたアリサにカナメが馬車の話をすると、アリサの第一声はそれだった。


「そもそも、馬車は動く宝石箱なんて呼ばれててね。盗賊連中にとっては最優先で狙いたい対象だし、こそ泥も町では宿や家より空き巣しやすいってんで凄く狙うんだよ」

「動く宝石箱って。でも聞いた話じゃ乗ってる人達が自衛するんだろ?」

「まあね。でも元々乗合馬車に乗るのは長旅する体力のない人達が多いから。大人数で囲んじゃえば勝算は高くなるよね」


 まあ、確かに人数で勝れば勝率は上がるだろう。上がるだろうが……だからといって無傷では済まないはずだ。


「……分からないな。なんでそこまでして人を襲うんだ? 冒険者になるんじゃダメなのか?」

「理由は色々ですね。ですがまあ、冒険者になったとしても戦う技能が無ければ得られる報酬は微々たるものですから」

「え、でも人を……」

「弱いからだよ」


 イリスの言葉に疑問符を浮かべるカナメにアリサはそう告げる。


「人間はモンスターより弱いし、素材じゃなくてお金そのものやお金になるものを持ってる。旅をする人間は特にそういうものを多く持ってるし、馬車に乗るとなれば余分に持ってるかもしれない」

「あまり話題にしたくない事ではありますが、女子供を戦利品とする盗賊もいます」

「戦利品って……人を売るのか!?」


 奴隷、という言葉が頭に浮かぶカナメに、イリスは悲しそうに首を縦に振る。


「ええ。人が他人を所有物とする事は大抵の国では禁じられていますが、それでも「人」を所有したがる者はいつの時代にもいます」


 その多くは歪んだ目的の為であるが、色々なルートを渡り何処かの養子として売られる事もある。

 人の売買を裏でこっそりと行う商人もいると言われ、厳しい取り締まりにも関わらず絶滅しない背景には、ある一定以上の権力を持つ者達がバックに居続けるからだという説もある。


「だから盗賊は、見つけたら殲滅が基本。カナメも盗賊が「人間に見える」からって躊躇ったらダメだよ?」

「……ああ」


 ぎゅっと拳を握るカナメの眼前で手をパンと叩くと、アリサは「さて、と。じゃあ馬車の話をしよっか」と大きめの声で叫ぶ。

 暗い思考に陥りかけたカナメの気分転換であることはカナメにも分かり、それ故にカナメは小さく笑って頷く。


「とりあえず、乗合馬車はダメだったね」

「え、見つからなかったんですの?」

「いえ、見つかりすぎたのです」


 そう言って部屋に入ってきたのはハインツで、その手には温かい湯気をたてる薬草茶の載った盆がある。


「見つかりすぎたって……どういう意味ですの?」

「はい。簡単に言えば、私達を乗せたがる馬車が多すぎたということです」

「私達と乗りたがる連中も多かったね。面倒な話だよ」

「あー……」


 ハインツとアリサの言葉にイリスは頷くが、エリーゼとカナメは疑問符を浮かべ顔を見合わせる。


「えっと……ちょっと待って。確か乗合馬車ってのは自分達で身を守る必要があって、だから……あっ」

「なるほど。そういうことですのね」

「はい。私達はこの町で少しばかり有名になりすぎました」


 ミーズの町で大活躍したカナメ達の名前と顔は当時町の中に居た者の中では良く知られている。

 確かな実力者であるカナメ達が乗合馬車に乗るというならば同乗する者達としては安心だし、乗合馬車の御者としても「この人達が乗ってるからうちの馬車は安心だよ」と言えるというわけだ。


「で、でもまあ……それならどれでも選び放題だったんじゃないか?」

「あのさ、カナメ。よく考えてみて?」


 薬草茶を配り始めるハインツから一杯受け取って飲み干すと、アリサはカナメにズイと顔を近づける。


「私達と一緒に乗りたがる連中は、当然私達に防衛力を期待してるわけじゃない」

「あ、ああ」

「つまりそうなると、いざという時に用心棒よろしく駆り出されるわけだよ?」

「まあ……うん。そうだな?」


 頷くカナメに、アリサは真面目そのものな顔で「つまり」と前置きする。


「タダ働きさせられるんだよ。護衛みたいな金をジャブジャブ取れる仕事で、タダ働き」

「え、いや。でもほら、謝礼とかそういうのだってあるかも」

「そんな薬草採りより安そうな駄賃貰って「そんなつもりじゃないんですが……でもありがとうございます」とかってお礼まで言うの? カナメ、安全ってタダじゃないんだよ? 商売道具だよ?」

「え、えっと……ごめん」

「言っとくけど、英雄譚の主人公のやってる事を本当にやったら何処かで騙されて身ぐるみ剥がされて、最終的に野垂れ死ぬからね? 冒険者の身体と行動は商売道具なんだからね?」

「分かったって! ごめんってば!」


 本気の目でカナメの両肩を掴むアリサにカナメが必死で謝ると、アリサは「分かってくれたらいいよ」と笑顔で手を離す。


「話は分かりましたけど、それならどうするんですの? まさか聖国まで徒歩で行くつもりですの?」

「んー、それも考えたんだけど……ちょっとお金になる話も舞い込んできてね」


 アリサは指を一本立てて、にんまりと笑う。


「隊商の護衛。しかもギルドを通さない直接依頼! 凄いでしょ?」

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