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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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炎の邪妖精

「復活した……!?」


 確かに「ただの骨」に戻ったはずの炎の邪妖精(イヴィルズ)は、何事もなかったかのようにそこに立つ。

 一体何故。不滅などあるはずもない。たとえ骨人形(スケルトン)であろうと、己を超える魔力を叩き付けられれば消滅する。

 そういうものであり、それが魔力の常識だ。だが目の前のコレは、復活している。

 混乱するダリアの耳に、カナメの「違う」という呟きが届く。


「……今、何処かから魔力が流れてきた。どうやってるのかは分からないけど、たぶん何かやってる奴がいる」

「なるほど……骨人形(スケルトン)ではなく魔動人形(ゴーレム)の仲間ということ、ですか?」

「だとすると近くにいるはず……だけど」


 最初にクシェルが倒したはずの炎の邪妖精(イヴィルズ)は、復活していない。

 となると……ダンジョンの中に術者が隠れているということはなさそうだとダリアは判断する。


「単体なら弱いわ。一気に倒して近くに潜んでる術者をぶちのめ……」


 言いかけたダリアの言葉は、しかしそこで途切れる。

 森の奥から松明のように燃え盛る炎の邪妖精(イヴィルズ)達がぞろぞろとやってくる姿が見えたからではない。

 一際大きな炎の下級巨人(デルム・ゼルト)が現れたからでもない。

 歪な形をしたもはや何なのかも分からぬ炎の化け物が現れたからでもない。

 自分達を囲む炎の化け物たちの中に混ざっている、見覚えのある二つの鎧。

 炎の肉を纏っていてもよく分かる、見慣れたその顔。


「ジャン……エイル……」


 確かめなくても分かる。あの中にはおそらく、ジャンとエイルの骨があるはずだ。

 炎の化け物はそういうものだと理解しているから、そうだと分かってしまう。

 いや、分からされてしまっている。

 何故なら、何体も倒して中を見たのだから。「そう作られている」のだと理解させられてしまった。

 だから、ダリアはその悪意を正確に理解する。


「……そういう、ことね。ジャンとエイルは死んだんだと。ソレが私達の「本物」の仲間だとわざわざ教えてくれたってわけね」


 あれは偽者。そんな僅かな希望を確実に砕く為の悪意。

 言葉ではなく、事実を突きつけ「自分で理解させる」為の醜悪な計算。

 その歪んだ遠回しな嫌がらせにダリアは奥歯を噛み、何処にいるかも分からぬ術者へと敵意を向ける。

 そしてそれすらも嘲笑うように、ダリア達の目の前で炎のジャンとエイルは融合して双頭と四本腕、四本足の歪な半人半馬の化け物のような姿に変化する。


「この……っ!」


 明らかな挑発と共に炎の化け物達は中の骨を鳴らしてカタカタと嘲笑のような合奏をする。

 感傷すら穢し蹂躙する、ねばついた悪意。

 ……だが、その嘲笑は炎のジャンとエイルが爆発によって頭を吹き飛ばした事で静止する。

 崩れ落ちる身体を近くの炎の化け物が吸収し更なる化け物へと進化するが、ジャンとエイルの頭はその化け物の肩にくっつき不気味な肩鎧のような姿になる。


「……この程度ではああなりますか」


 振り返った三人の視界に映るのは、その黄色の瞳を輝かせるクシェルの姿。


「貴女、それ……まさか!」

「問います。あの貴方の仲間と思われる二人……骨が残るのは重要ですか?」


 問いかけるクシェルにダリアは一瞬迷い、しかし「いいえ」と答える。

 残れば埋葬できるのは確かだが、その骨はすでに敵の武器と化している。

 ならば、それをまた利用される形で残しておくのはただの感傷でしかない。


「了解しました」


 クシェルの瞳の輝きが強まると同時に再び爆発が起き、ジャンの頭が頭蓋骨となって空中に投げ出され……続く何度かの爆発で、ジャンの頭蓋骨は完全に爆砕される。

 炎の化け物はそれを吸収するが、再びジャンの頭が何処かに再生されはしない。


「ご覧の通りです。完全に砕くしかないようです」

「……そうね。貴方のその魔眼でどうにかなる?」


 破壊の魔眼。「魔眼」と呼ばれる特殊な能力を宿した眼の中でも特に攻撃的なそれは、空間の魔力に干渉し爆発を起こすとされている。

 クシェルの瞳はまさにその破壊の魔眼であり、だがクシェルは無理だと否定する。


「私の魔眼はこれ程大量の敵を砕ききる程の力を有していません」

「……でしょうね」


 やるならば、魔法でどうにかするしかない。


「……カナメ。貴方の魔動人形(ゴーレム)達はどう? さっきの電撃以上の魔法は使えるの?」

「たぶん無理、だと思う」

「でしょうね」


 そもそも実戦レベルの電撃の魔法を使えるという時点で奇跡に近い。それ以上を望むのは無理というものだとダリアも理解している。

 カナメとしても、せめて追加で作り出せたら頼りになりそうだとは思うが……残念なことに、今残っているイエロードラゴンの鱗では不可能だ。


「だけど……森をちょっと壊してもいいなら、俺がやってみる」


 少し自信なさげに、しかし「出来る」という確信を持って言うカナメにダリアはヒュウと口笛を鳴らす。


「いいわね。もっと自信満々に言えるようなら最高よ……なら私が正面をやる。反対側は頼むわ。ルドガーはサポートお願い」


 具体的にどう出来るかは聞かず、ダリアはルドガーに盾を渡し剣を受け取る。

 ダリアは剣の両手持ち、ルドガーは盾の両手持ち。ダリアはともかくルドガーはこれでは戦えないように見えるが、ルドガーに気にしたような様子はない。


「……やるわよ、ルドガー」

「了解しました、ダリア」

「そこのメイドナイト……クシェルとかいったわね。少しだけ、時間稼いで」


 バチリ、と。スパークする程に大量の魔力が剣と盾に一気に流し込まれた。

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