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レクイエム  作者: 猫の祭り
第1章
9/25

 温もり

 窓から差し込む日光。正直言って、眩しい。せっかく人が気持ちよく寝ているというのに、この温かく気持ちよくもあり、眩しすぎる日光のせいで、夢の世界から出る羽目になった。

 

 「うぅん…」


 なんだろう……起きてはいけない気がする……。けど、起きないといけないのだろう。ハァ……起きたくないなぁ~……そうも言ってられないだろうなぁ……。

 仕方なく、ゆっくりと目を開ける。


 「ん……ここは……」 


 すると、そこには、見慣れない天井が視界に映り込んだ。頭の中にハテナがぐるぐる回る。怠い体を起こす。

 そういえば私は、どこかの森に迷い混んで……それから……。


 ぼふっ……。というのがぴったりなオノマトペ。何かに抱きつかれたようで、視線を下に向ける。やはり見知らぬ女の子がいた。

 ええっと……どういう状況?

 まず、私は森に迷い混んで、倒れた。そして恐らく、ここに連れてこられたと。ここまでは問題ない。

 次にここは、今抱きついてるこの女の子の部屋なのかな?まぁ、これは置いてといて。それよりも、なによりも、なぜ私に抱きついてるこの子が泣いているのか。これが今一番の問題。


 「良かったぁ~、このまま起きないのかと思った」


 ふーん、成る程ね。私が一向に起きないから、死んでしまうのかと思って泣いてたわけね。

 初対面なのに。それを思うと嬉しくなる。

 そのまましばしお互い停止…


 「…」

 「…」


 これじゃ埒が明かない。私から話を切り出す。


 「私はミレイ。…ミレイ・カズサ。あなたは?」

 「私はセレナ。よろしくね。」


 青みがかった黒髪に整った顔で普通にかわいらしい子だ。

 手を出して握手を求めるので、私も手を出す。


 「ああ、よろしく」


 挨拶ついでに聞きたいことを聞いておく。勿論、ここはどこかということを。


 「ここはヨハリフォトという街で、ウィルスという国に属しているの」

 

 満面の笑顔で答えてくれる。

  

 「それよりさ、お母さんとシェリも心配してるから1階に行こ!」 

 そう言うと私の手を引っ張って一階に行く。


 「お母さん、起きたよ~」 


 キッチンに立って料理をしてる女性がいた。この人がセレナのお母さん……


 「あら、起きたのね。大丈夫?気分が悪かったりしない?」


 手を洗いタオルで拭いてから私の方へ歩き始める。

 近くまで来るとしゃがみ私より目線が低くなり、私の頭を優しく撫でる。


 「大丈夫」


 その返事に満足したのか、髪の毛がくしゃくしゃになるくらい撫で始める。とてもいい笑顔で!!


 「あぅあぅ」


 頭が揺れる揺れる。顎を殴られたばりに揺れる。あっそれ、揺れてるの脳だわ。

 急に撫でるのを止めたと思ったら、今度はぽんぽんと頭を叩いてくる。

 気のせいかな?とても楽しんでる風なのは……。

 とても綺麗な人で、体もスラッと細く、長い青みがかった黒髪がよく似合ってる。


 「私はエミネムよ。それにしてもあなた可愛いわね。名前は?」

 「ミレイ。ミレイ・カズサ」

 「そう、ミレイね。よろしく」


 パタパタパタと女の子が走ってくる。

 セレナの妹かな?セレナに顔がそっくりで、当然エミネムにも似ている。

 エミネムが肘より少し髪が長く、セレナはエミネムよりも少し短い。走ってきた女の子は肩に掛かる程度で横に纏めている。。


 「シェリ。名前は?」


 名前はシェリか。雰囲気はまるで子犬みたいな感じ。


 「私、シェリ。シェリ・クロウ。よろしくね」

 「よろしくね、シェリ。私はミレイよ」


 挨拶し終えると後ろからパンパンと手を叩く音がする。

 

 「さぁ。ご飯できたからみんなで食べましょう」


 それを合図にセレナとシェリも椅子に座ろうとする。


 「ミレイは私の隣ね」

 

 セレナが着いてこれていない私の手を取り椅子に座るよう促す。みんな座るのを確認すると、エミネムさんが手を合わせて挨拶をする。


 「いただきます」


 その後、セレナとシェリも手を合わせる。


 「「いただきます」」

 

 私もそれにならえで


 「いただきます」

 

 と挨拶をする。

 何時ぶりだろうか……。こんな風に食卓を囲むのは。話したり、笑ったり、時には、並んでいる料理をセレナとシェリが取り合ったり。それを母親であるエミネムさんが微笑ましく笑い、二人を注意したりと。そんな光景が楽しく、おもしろく、温かく、懐かしく、けれども、私には縁遠い。そんな光景。確かにその場に私はいる。でもいるだけであって、そこにはいない。


 目の前には服を真っ赤に染めた女性が一人、私に寄りかかり力なく倒れる。そんな情景が、何故か脳裏に浮かんだ。そのお陰でスプーンを持つ手が止まる。


 「どうしたの?大丈夫?」


 セレナが俯いた私の顔を覗き込もうとするので、咄嗟に笑顔をつくり取り繕う。

 

 「いや、大丈夫だよ。早く食べよ」


 言った後に後悔した。自分でも理解できていない。なぜあのようなことを口にしたのか……自分らしく振る舞うためか?そもそも自分らしくとは……。

 もやもやしていて、それでなにか自分に問いかけてくるような、そんな蟠りと一緒に紅茶を流し込む。

 今はまだ、知るべきではないと、直感的にそう感じた。

  

 朝食を終え一段落着いた。エミネムさんが本題にはいる。


 「それで、森で倒れてたみたいだけど、これからどうするの?」

 

 聞かれるも何も考えてないので答えられない。ホント、どうしようか?行く宛もない。

 言葉に詰まる私を見てシェリが笑顔で一つの小さな答えを出してくれた。

 

 「ねぇお母さん。ミレイが行く場所ないなら、一緒に暮らすのはダメかな?」

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