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レクイエム  作者: 猫の祭り
第1章
8/25

 悠久の大森林

 今日は眩しいくらいの晴天だ。

 だからキノコや果物、ついでに薬草を探しに森に入って探している最中。


 「ちょっと!あまり遠くにいかないの!」


 すると、元気のいい返事が返ってくる。


 「はーい」


 妹のシェリがニコニコしながらこっちに走ってくる。

 お母さんは仕事で朝早くから出掛けてるし、シェリ1人家で留守番させることもできない。

 だから連れてきた。

 うーん、間違いだったかなぁ?普段あまり森に連れてこず、家で留守番してたからウキウキでテンション上がってるし…

 まぁ目を離さなかったら、大丈夫だよね。 

 視線をシェリに戻す。見当たらない。

 私は焦ってシェリを呼びながら走ろうとする。


 「シェ…」

 「わっ!!」

 「きゃっ!?」


 いきなり後ろから声がしたので跳び跳ねる。

 もうドキドキだ…心臓にわるい…

 ジト目でその原因を見る。いや、睨み付ける。


 「えへへ~」

 

 けど、こんな調子だ…

 なので声を大にして言う。

 


 「あんたねぇ、やめてよ!ビックリしたじゃない!心臓が飛び出るかと思ったわ!!寿命を縮めるつもり!?」

 「お姉ちゃん、驚きすぎだよ」


 言われてしまった。言われたくないことを…。

 何とか注意をそらそうとするが、指摘されたことが恥ずかしく、口調が強くなる。


 「うっ、うるさい。それよりも少しは採れたの?」 

 「うん!ほら!!」


 元気のいい声を出して、両手に持ったカゴを見せてくる。そこには今が旬でこの地域にしかとれないキノコや果物と薬草である。

 ……うん、薬草である!!普通さ、こういうのってさ、カゴが3つあるわけよ、ね。そしたら、普通は分けていれるよね……何で一緒くたなのさ……。これは咎めなければ。


 「ねぇ…」

 「なに?」


 ニコニコしながら首を傾げるシェリ。


 「薬草は一緒に入れないで。後で分けるのが大変だから。これから気を付けてね。家を出る前にも言ったけど、私が持つカゴにキノコと果物。シェリが持つカゴに薬草を入れる。わかった?」

 「はーい」

 「それと、」

 「?」


 わたしはシェリの持つカゴに手を突っ込む。

 シェリは首を傾げるが無視する。

 

 「これは毒があるキノコ。これも毒のある果実。」


 そうやって次々捨てていき、2/3が残った。これはある意味、恐怖を植え付けられる。何?毒物収集のスキルとかあるの君?


 「これからは、私に見せてね」

 「うん!」


 またしても元気のいい変事が返ってくる。悩みなんて無さそうなほどくったいない笑顔。ほんと楽しそうだ。連れてきて正解だったかな?毒物混入は想定外だけど。


 「シェリ」


 名前を呼ぶとキョトンと首を傾げる。


 「シェリ、もう少し奥に行こうと思うけど大丈夫?疲れてない?」

 「うん!大丈夫!!」

 「わかった。じゃ、行きましょ」


 進むと森が深くなる。そんなことおかまいなしにどんどん進む。シェリは心配そうな顔をし、私の服の裾を掴む。そうこうしながらも、果物などを収穫していく。


 「ねぇ、お姉ちゃん…」

 「大丈夫。ほら」


 指を指すと、森が深く辺りが暗いところにひとつの小さな明かりが射し込んでくる。

 そこまで走ると、幻想的な場所に出る。

 今抱えてるもんだい……世界情勢や紛争、種族間の争い。それに貧富の差。それらすべてが遠い場所での出来事と思わせるような、そんな場所。

 中央に大きな、とても大きな樹が1本立っていた。それを囲むように色鮮やかで色とりどりの花が咲いている。

 その樹には密が出ているのか大きな蜂や虫、様々な生物がいた。なかにはウルフや熊までも。けれど襲う様子はなく、むしろ此所はみんなの場所。とでも言っているかのように己の主義主張はなく、穏やかな空間だった。

 時には熊とウルフが、他の魔物同士がじゃれあっていたり、お昼寝をしていたり。みんながみんな楽しそうで、仲が良さそうにしていた。各々、その時間を満喫しているのである。

 この場所は、森で迷子になったときに見つけた場所で、みんなは知らない。

 このまま見ているだけでも和むが、中央にある樹のところまでいく。


 「おっ、お姉ちゃん…」


 シェリは不安や恐怖心が強くなり私に隠れるよう抱き付く。

 そんなシェリの頭を撫で、先に樹の麓に行く。

 魔物や動物が一斉にこっちを向く。が、すぐに自分の世界へと入り込むもの。また、そうでないものもいる。


 「お姉ちゃん…」


 小声で私を呼び、引き返そうと潤んだ瞳で訴える。

 それを無視してまた進む。

 魔物や動物は様子を見るだけで何をする気配もない。

 それでも未だに怯えるシェリに頭を撫でながら言う。

 

 「こっちが危害加えなければ襲ったりしてこないよ。」


 そう。理由はわからないが、ここの魔物は襲ってこないのだ。不思議なことに。

 暫くは、そのままでいたが、それでも離れない。けれど、ここに来たときとは違い、落ち着いてはいる。

 もう樹の近くにいるので適当に座る。

ちょうど昼時だろう。先程採った果物を2つカゴから取りシェリに渡す。

 シェリは私から受け取った果物を食べ始める。

 それを横目で見つつ私も食べる。


 「うまっ!!」

 

 甘いけどしつこくなく爽やかで口のなかで溶けるような味、瑞々しく実自体も凄く柔らかい。


 「美味しいね、お姉ちゃん」


 シェリも大満足らしくもう食べ終わり、もの足りなさそうな顔をしてる。


 「もう1個だけね。あとはお母さんにあげるんだから」


 今日は珍しくキノコがあまり採れなかったが、この果物が沢山採れた。だから渡すのは1個だけじゃなくともいいのだけど、出来ればケーキにも使いたいしね。お母さんの誕生日ケーキに。


 「だから、あと1個だけね。」

 「うん、ありがと。」


 嬉しそうにまた食べ始める。今度はゆっくり味わって食べてる。


 私も食べてる途中だった果物にかぶりつこうとしたとき、小さな何かが寄ってくる。見るとエンシェントウルフの子どもだった。産まれてまもないのだろう。それほど小さかった。

 

 「わぁ、かわいい」


 それを聞いたシェリがもきゅもきゅ口を動かしながら、私を足を跨いで覗いてくる。


 「本当だぁ。かわいいね、お姉ちゃん」


 私と同じ感想を述べる。

 エンシェントウルフの子どもは臭いにつられたらしく、カゴの縁に前足をかけ果物を食べようとしている。カゴから果物を取りだし置いてやる。すると、小さな口で必死に食べ始める。

 いつまにか数が増えているが気にしない。増えたと言っても2匹増えたぐらいだ。全然果物1個で足りる。


 にしても樹の根元が気になる。何故あんなに様々な魔物や動物が寝そべっているのか。そのくらいなら気に求めないが、その寝そべっている形だ。それが気になる。まるでなにかを囲むように。

 果実を食べ終えて近付いてみる。


 すると、


 そこには女の子がいた。魔物や動物が囲っているのはその子を守るためなのかな?

 すぅすぅと寝息を立て気持ち良さそうに寝ている。

 整った顔立ちに白い肌。綺麗な金髪。ボロボロで不釣り合いな服を着ていて、私よりも1つ年下?なのかなぁ…

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