業火の街
手懐けられた移動用の魔物コウヅリで、目的のクリモニアの街へと急ぐ。
ヴェルケンド帝国とクリモニアはそう遠くはなく、馬で30分掛かるか掛からないかくらいの距離だ。コウヅリであれば20分も掛からずに着くだろう。
ただひたすらにコウヅリを走らせる。辺りは何もなく、あるのは緩やかな道のみで、それは少し高いところに行くと周囲を見渡せるほどだ。
だから、情報を入手しやすいく、この場合は空を見ればわかる。
「リーダー。クリモニアの街が見えきました。私たちが来るのを、向こうは予測していると思います。慎重に行きましょう」
「ああ、わかっている」
ごうごうと燃え盛る街により、空は赤く染め上がっている。
「生きている人はいないだろう。それならそれで、任務を遂行しやすくはある」
「ジューダスさん。そのようなことを言うのは、少し不謹慎でしょう!」
ウィナはああ言うが、実際のところはどうなんだろう?
もうすでに街は壊滅的、となれば生存者はいないに等しく、襲撃者と交戦する俺たちからしたら気にせずに戦える。
「お前ら、戦闘中に私情を持ち込むなよ」
はっきり言って、この面子はよろしくない。
ジューダスは冷静な性格。負傷した仲間も戦意がなければ切り捨てるし、戦意があるなら助けることもある。けれど、冷静さがあることで残酷な手段もとれる。
ウィナはそういう手をとても嫌う。なぜ平気でそんな手段をとれるのか、理解に苦しむようだ。基本諦めの悪い性格で、他に手段がないか探す。考えることが真逆。だから、いつもいざこざが絶えない。
アイツなら簡単に、まとめることができるんだろうな……。
コウヅリから降り、そんな想いと共に、燃え盛る街へと足を運ぶ。
ヴェルス……。あんたがいなくなってから、仲間がバラバラなんだ。何とか繋ぎ止めようとしたがな。これが精一杯だ。あれから、もう2年経つんだな……。
今さらだけど、あんたを支えたかったよ……。
ちゃんとな……。