襲撃
はぁ…眠い
この日は、周囲が一層騒がしかった。
ヴェルケンド帝国の近くに位置する街、クリモニアの街が襲撃されたとの報告が来た。一刻も早く事態の収集を謀るため、急遽フロト陛下がブリーフィングを行うようだ。
「リーダー、そろそろ私たちも行きましょう」
「何度か屋敷に止まって任務を更新してたけど、まさか、こんな日が来るとは。陛下のすることじゃないぜ?」
「緊急時ですからね。それに、今までリベルクローツとヴェルケンドは密接な関係を維持してきたこともあり、頼みやすかった、と言うのが本当でしょう」
任務をこなしていたリベルクローツ魔導学園第一部隊所属パーティである俺たちも、この事態の収集を手伝ってくれるよう陛下が直々に頭を下げた。
民から慕われる陛下の成せる所業、ということなのか、俺にはよくわからんな。
「前リーダーもリベルクローツに住む人を守るため、一人で戦った。それと似たようなことでしょう。自分の地位や立場、況してや自分の命よりも、守りたい大切なものがあると理解している人の本質でしょう。だから、自分を後回しにする。」
だから、たとえ一国を担う存在でも、必要なら頭を下げる。
「誰かがしてくれるから、自分もその人に尽くす。単純なシステムですけど、だからこそ疎かにしやすい。皆が思っているよりも、大切で奥の深いシステムなんですよ。」
ウィナらしい考えを聞けたところで、大きな扉を開き中に入る。
「よし、みんな揃ったな。今から、ブリーフィングを始める」
空いている席に着くと、陛下が席をたち自らブリーフィングを取り仕切る。その様子を見たジューダスは顔をしかめている。
「陛下、それは私の仕事でしょ」
「まぁ、固いこというな。お前にはこれから、現地に出向いてもらわないといないんだから。さて、続けるぞ。」
何でも仕切ろうとするからな。この人は……。
「今回、襲撃されたのはクリモニアという街だ。ここにいるお前たちは知っている通り、襲撃に遇うような街ではない温な街。襲撃された理由も未だ不明。襲撃を知らせてくれたクミレ曰く、襲撃者は二人。一人はフード付きの黒いロングコートを身に纏った細身の人。もう一人は白いローブに白い仮面を着けている女性だそうだ。」
黒いコートに白いローブ、最近よく噂されている奴等か?いずれにしても情報が少ない。偵察班からの情報が欲しいな。
「偵察班は部隊編成をする前に、クミレがここに到着してからすぐに出撃させた。万が一のために魔導兵器も数機連れてな。」
ジューダスが補足をしてくれた。
「こっからが本題だ。その偵察班は重症を負って帰還。得られた情報は、街はすでに崩壊。住人も命かながら逃げ出すことが出来たようだが、ほんの少数で今治療中だ。黒コートによって魔導兵器全て破壊され、撤退を強いられた感じだ。」
この場の空気が一層冷たくなるのを感じた。同様を隠せないといったところか。
「よって、現場に行くのはジューダス、ウィナ、デュマの三人だ。」
まぁ、妥当だろう。不満を持ってるやつがいないと言えば嘘になるけど。
「えっ!?俺達は?俺は行かなくていいの?俺がいないと、戦力半減だよ!?」
「クヤサ、あんたは勝手に突っ込んで撃沈してるだけじゃん……。どの口が戦力半減とか言ってるのよ!」
「まあまあ、その辺にしよ、ね?お姉ちゃん」
「お前はダメだ。敵の戦闘能力が把握できていない以上、お前は反って邪魔になる。さっきも言ったが、敵は相当な手練れだ。連携が崩れると全滅しかねん。ここは堪えろ」
フロトの言う通りだな。でも、それで納得できるかは別の話。困ったなぁ……。
「だからこそ!!俺が力を、~~~」
セレナが横に座るクヤサの口を手で塞ぐ。
「すみません、続けてください」
「~~~っ」
口をふさぐも騒がしい。
「黙れ、あんたは!!」
空いていた右手を手刀にして首の正面を狙う。
まぁ、結局、気絶させるしかないんだ……。
クヤサは見境無く突っ走るタイプだから、カバーする人がいないと大変だけど、それさえできたら彼は本領を発揮してくれる。ただ、この状況では、それが通用しないだけ。
「ここからは俺の予測でしかないんだが、今回の襲撃者は恐らく、最近噂になってる連中だ。よって、三人は奴等を迎撃してくれ。これ以上被害拡大を防ぐために。厳しい戦いになるだろう。くれぐれも、無茶はするなよ。以上でブリーフィングを終える」