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レクイエム  作者: 猫の祭り
第1章
18/25

 リベルクローツ

 リベルクローツに着いた私達三人は、現在進行形で馬鹿っぽく口を開けている。

 

 「あの、ルミナさん。道、間違えたんじゃないですか?」


 疑問が浮かんだので、馬車を降りながら質問してみる。


 「いいえ、間違えてはいないわ。では行きましょ」

 

 馬鹿を見るような目で言われた。

 だめだ。全然頭がついてこない。

 学園よりも街って聞いた方がまだ現実味がある。

 魔導学園?には一般人らしき人がいるし、家もあるし。

 この人たち一般人じゃなくてリベルクローツ関係者。

 なんてことは…ないよね? 

 でも、何?この街の活気は。王都やその周辺にでもいるかのように賑わってるいけど…… 

 

 うーん。ヨハリフォトの街の近くにあるって今でも信じられないわ。


 「リベルクローツ魔導学園って、この街も含まれることは知らなかった」


 セレナからの質問に答えにくそうにする。


 「そこは微妙なところだけど、そのとおりよ。」


 ルミナさんは進みながら註釈する。


 「リベルクローツ魔導学園とよく言われるけれど、商人達からはリベルクローツ街と呼ばれるわ。他国からはリベルクローツ国とかね。その人たちがここに来る目的によって、呼び名は変わるのよ。だからリベルクローツ自体の正式な呼び名はないわ。」


 成る程。全然知らなかった。「だから、貴方達からしたら、リベルクローツ魔導学園かしらね?」と笑顔で返してくる。

 つまり、整理するとここに住んでいる人もいる。ってわけだ。

 道理で普通に家とか店とかが並んでるんだ。服屋もあるし、飲食店もある。さらに武器屋ですか。

 これはもう1つの国の首都に居るみたいだ。まぁ、違うんでしょ

うけど。

 進みながら勝手に納得していると

 

 「それと、盛大に勘違いしてそうだから付け加えておくわ。

 国ではないから。」


 と言われた。

 うっ、勘違いしかけた…

 でも仕方ないよね。そっ…そうよ!!仕方ない、仕方ないのよ。だって、これは1つの国なんですよ。って言われたら誰もが勘違いするよ。きっとね!!


 あ~、うん…たぶん…

 私だけじゃないよね!

 なんか唐突に、不安になってくるわ。


 「へぇ、国かと思った」

 「うん。指摘されないとずっと勘違いしたままだよ。これ」


 よしっ!!ナイスよ、セレナとシェリ。これで味方ができた。

 なんてバカなことをしていると


 「着いたわ。あとはこれに乗って移動するだけ」


 えっ!?

 これ…何?なんかワイヤーみたいなのに人が10人ほど乗っても余裕が出来そうな、鉄でできたカゴ?が引っ付いてるんですが。


 「早くしないと置いてくわよ?」


 と、先に乗ってしまったルミナさんに急かされる。

 仕方ないね。乗ってから聞いてみるか。

 乗ってみると以外に揺れは少ない。不思議だ。

 ようやく乗った二人は、椅子に腰かける。私は立って窓の景色を眺める。


 少しずつ動きだし、ゆったりとした速度で上昇する。

 少々おっかなびっくりしてるセレナとシェリを、セラさんは微笑ましく思っているのか、楽しそうに見ている。

 それから私に視線を戻すと、手を顎にやりいくつか考えて近付いてくる。


 「以外と平気なのね。驚いたわ」

 「はい。不思議と恐怖心はありません。なんででしょうかね?」

 「普通は初めて、このロープウェイに乗ると怖がったりするのにね。人によりけりといったところかしらね」

 

 ルミナさんは納得気味に頷く。

 私は別のところに頷く。

 へぇ、ロープウェイって言うんだ。聞いたことはあるけど、乗るのは初めてだわ。中も綺麗だし、なによりも景色が良い。

 それも一瞬のこと。


 これを動かすのに人手でないことは考えるまでもない。…恐らく、というか、確信を持って魔石といえる。

 魔法を使えない人でも、魔力自体は誰しもが天性的に持っていて、そしてこの星にも廻っている。魔力は内的に外的に存在しているもので、結晶化したものが魔石と呼ばれる。なぜ、魔物の体内に、魔石があるのかは不明だけれど。


 「魔石…」

 「どうしたの?」


 突如口を開いた私を不思議に思ったのか、顔を覗き込んでくるので「なんでもないですよ~」とふざけるように誤魔化す。

 再び、景色を堪能していると頂上付近につく。

  ロープウェイを降りるとまた、何やら入り口が見える。大きく聳え立つといったほうが正しく思えてくるような、そんな煉瓦造りの入口。


 「おっ!相変わらず早いねぇ。」

 「仕事だからな。」

 「さすが、仕事熱心なルミナだ。そんなことだと、休みたいときに休めなくなるよ~」

 「何よ!じゃあ、こっちも言わせてもらうけど、あなたこそ仕事が雑すぎるの!!どうしてファイルに、あなたの大好きなファッション雑誌があるんだ!?しかも毎回毎回、私のファイルだけに!!」

 

 セラさんがファイルを開いて、挟まっている雑誌を手で叩く。


 「あぁこれ?今度一緒に服でも探しに行こうかなって思っててさぁ。そしたら、ねっ。…痛っ!?」

 

 

 受付嬢が可愛らしく舌を少し出すと、ルミナさんによるファイルを使った鉄槌が下る。


 うわぁー…冗談抜きで痛そう。ちょうどファイルの角で叩かれる。

 

 「今のは痛いね」

 「うん。あの鈍い音は…ね。ミレイお姉ちゃん、気を付けようね。…叩かれないように」


 ファイルによる鉄槌を喰らった受付嬢は、まだ痛いのか頭を撫でながら受付を始める。


 「え~っと、セレナさんとシェリさん、そしてミレイさんね。ではD区の7052番の家を使って下さい。試験は明日の10:00から第一演習場にて開始ですので遅れないでください。午後13:00からの筆記は追って伝えます。今日はお疲れでしょう。ゆっくり休んでください。では、健闘を祈ります。」

 

 受付嬢から鍵と地図を渡される。


 「最初っからそうしろ!…ったく」

 「てへ」


 ファイルを振り下ろすセラさんと、ギリギリ受け止める受付嬢。


 「ごめん!ごめんってば!!冗談だって!!」


 受付嬢の必死な願いが届いたのか力を緩めるルミナさん。

 そして反撃とばかりにおちょくる受付嬢。


 「全くもう、そんなんだと彼氏に振られるよ~?リベルクローツ第一部隊主席総長さ・まに」

 「なっ!?うるさい!!こんなバカは無視していくぞ」

 「行ってらっしゃ~い」


 心なしか顔が赤いのは気にしたら負けよね。

 ルミナさんってクールな人と思ってたけど、いろんな表情持ってるんだね。

 急に歩みを止める。

 ルミナさんどうしたの?

 

 あっ、睨まれた。

 なっ何もないですよ!?ホントホント。お願いだから睨まないでください。正直言って怖いです。


 必死に誤魔化していると再び歩きだす。

 

 無言で…

 ふぅ、にしてもよく恋人いますね。はぁ、ほんと怖い。

 

 「!?総長、お疲れ様です。」

 

 いきなりどうしたの?ルミナさん……


 ルミナさんの視線の先を見ると、背の高い男の子の人がいた。灰色のローブっぽい服を身に纏っている。手には何やら茶色の布が巻かれていて、剣が腰にさしてある。身長は…185cmくらい?声は低くて独特なゆっくりめの口調。肩よりも少し長く伸びた茶色がかった髪に、髭を生やしている。見た目は渋くて格好いい中年って感じ。

 というか、態度変えるの早っ。


 「ん?ルミナ大尉か、相変わらず仕事が早いな」

 「総長の副官を勤めているのですから、当然です」


 さっきから総長と言ってるところから、さっき言ってた主席総長なんだろうけど、相当な忠誠心ですね。

 と感心していると、私たちに目をやる。


 「大尉が無礼をかけなかったか?」

 「総長。余計なことを言わないでください。そんなことしてませんから」


 冷静を装ってるけど、必死なのが犇々と伝わってくる。


 「ふっ」

 

 ルミナさんを見て頬を少し緩ませると、こちらに向き直る。


 「我が部下の無礼、お詫び申し上げる。私は第一部隊主席総長レイ・デア・ヴェルカと申す。以後お見知り置きを」


 微笑みながら軽く一例をする。

 この丁寧さに呆気をとられ、反応が遅れる。


 「えっと、私はミレイと言います」


 私の礼に続き二人も挨拶と礼をする。


 「私はセレナといいます」

 「私はシェリといいます」

 「ふっ、礼儀正しいな。よろしく頼む。それと、ルミナ。仕事熱心なのは構わんが、あまり無理をするな。少しは休暇をとるようにすることだ。」

 「総長がそう仰るのなら、お言葉に甘えて何れは」

 「ではな」


 部下想いのいい人…なのかな?何かが引っ掛かる。


 「何か、貫禄あるよね」

 「うん。すごい人だね」

 

 なんて会話を小声でしている。

 セレナとシェリが気づいてないなら、私の気のせいか? 


 「にしても、年上が好きなんですね。意外でした」

 「そんなに総長は歳をとっているように見える?」

 「えっ?」

 

 ルミナさんが驚きの言葉を口にした。

 えっ?というと、見た目より……若いの!?


 「その反応だとそうみたいね。ミレイはいったい何歳だと思っていたの?」

 「少なくとも35歳くらい」

 「はぁ……年相応に見えないってよく言われるから気になってはいたけど、そんな歳で見られていたなんて……。まだ22歳よ」

 「「「!?」」」


 三人揃って驚きの声をあげたのは言うまでもなく。 


 幾つもの家を通り過ぎると、先程言われた家についてソファーに寛ぐ。

 何かいろいろと疲れた…

 ルミナさんはというと


 「今日はゆっくり休めよ。また明日来る。」

 

 こう告げて帰った。


 1階はロビーとキッチン、風呂場にトイレ、部屋が2つ。2階は6つの部屋がある。ロビーは無駄に広い。何に使うの?って言うレベルで広い。風呂もやたらと広い。これ、4人は入れるよ。

 各階にある部屋は、まぁ普通に1部屋だ。


 木で出来ており、やたらと落ち着きのある家だ。


 今日はゆっくりして眠ろう。

 

 

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