セレナとシェリ
はぁ…眠い
パンパン
「ほら、みんな起きて!!」
手を叩きながら大声で起こす声が響く。
寝ていたいけど、起きないと…
あっ、頭の中真っ白だ…
暖かいな~起きたくないなぁ~嫌だなぁ~めんどくさいなぁ~
…よしっ!
ムクッ
「あら!おはようミレイ。ほ~ら、ミレイも起きたんだからあんた達も起きなさい!!それとミレイは顔を洗ってきなさい」
「…」シーンっ
「ふふっ。まだ寝ぼけてるようね」
無反応の私を見て、微笑ましく思ったのだろうか?
クスッと笑う。
はぁ…だるい…よしっ寝よ…
ボフッ
「へぇ…そんなことをするんだぁ~!!」
何!!この悪寒!?
周りも騒がしい。恐らくこれを感じとりセレナとシェリも飛び起きたのだろう。
嫌な予感がするので、私も飛び起きるが…
…遅かった。
次の瞬間、火山が噴火した…
「ほら、ご飯できたから冷めないうちに、いただいちゃいましょ!!」
さっきまでの逆鱗は何処へやらってな感じで、いつものにっこにっこふわふわぽわぽわなお母さんこと、エミネムさんがそこにはいた。
はぁ…本当…もう見たくないわ…あんなお母さん…
マジ怖い…だって声色は低くて超不機嫌、ご機嫌斜めなのに顔は、とってもいい笑顔なのよ!?ギャップ差ありすぎて怖い…
普段はあんな感じなのに、ちゃんとした二児の母なんだよねぇ。
お皿をテーブルに運びながらそんなことを考えていると、突然後ろから頭を撫でられる。
上を見るとにこにこ笑顔のお母さんだ。
「ありがとっ、ミレイ。早く座りなさい。ご飯食べるわよ」
4人揃って挨拶をし、ご飯を頂く。
パンにスープと、へぇ、野菜とウルフの肉を炒めてるのかぁ。朝からしっかりとした料理だ。
そんな私の心を読んだのか、口を開くお母さん。
「1日のの活力は朝食からとも言うしね。それに、今日は思いっきり食べて今日を乗りきりなさい!今のあなた達に必要なのはエネルギーよ!!」
お母さんの言っていることは間違っていない。今日はだって試験があるんだもの。
それが原因でか、セレナもシェリもテンション上がりっきりだし。
「ミレイは試験をどう思う?楽しみ?」
身を乗り出して、私に楽しみアピールをしてくるシェリ。
「勿論よ!セレナも同じでしょ?」
シェリと同じ質問をする。
すると、胸を張り何故か誇らしく、
「当然よ!やっと夢に近づくことができるんだもの!!楽しみに決まっているじゃない!?」
何か裏があるような、裏というよりも妙に意味深で、それよりも何故か悲壮感が漂っていた。そんな気がした。そう思った確信は何もない。
「さてと。みんな食べ終えてるみたいだし、遅れないように準備をしてきなさい」
私の思考の渦を断ち切るかのようにお母さんが準備するよう促す。
カチャカチャ
食器を洗うため1人で運び始めるお母さんを手伝おうと、3人で食器を重ねているところに
「ふふっ。手伝ってくれるのは嬉しいけど、自分達の準備が先でしょ」
と言い出す。
ほんと。優しくも厳しく、強い人だ。私もこんな人になれたらな…
さて、私も荷物をまとめないと
「ミレイ。ちょっと話があるのよ。いいかしら?」
断る理由はない。なので、頷いて返事をする。
椅子に腰かけていると話始める。
「セレナのあの反応を見て何か、引っ掛かったんじゃないかしら?」
どうやら、あの疑問は間違いではないらしい。
「あなたには話したかしらね?私、夫とは死別しているのよ。私の夫は、冒険者だった」
エミネムさんの夫は冒険者で、そのパーティーにエミネムさんもいた。ある依頼を受理しているとき、予想外の出来事が起きた。いきなり創造するものが現れ、パーティーは全滅寸前に陥る。
そのとき、夫とエミネムさんを守るため、注意を引き付け庇って死んでいった。それでも襲ってくる。だから、夫がエミネムさんを逃がすことに奮闘するも、命を落とした。結局、創造するものの目的も分からぬまま消え去っていた。
夫は常々、娘のセレナに言っていたことがあるらしい。
「冒険者は確かに危険な職だ。けれどね、冒険者になることで、困っている街人や村人を助けることができる。騎士団なども同じだが、彼らは王の言うことしか聞かない。だから、王が民を見捨てたなら騎士団なども民を見捨てる。でも、冒険者はどんな依頼でもこなすことができる。____これは、冒険者にしかできないことだよ。俺はそう信じてる。俺の誇りだよ。」
と。
その夫の死とこの言葉が彼女、セレナを尽き動かす切っ掛けとなった。だから、セレナは必死に冒険者になろうとしていた。
この話をした後、お母さんからは
「セレナはよく無理をするから、気を付けてあげてね」
そう頼まれた。
眠い…ね~む~い~よ~