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レクイエム  作者: 猫の祭り
第1章
12/25

 支え

はぁ…寒いなぁ~

 あれから、もう半年かぁ。いろいろあったなぁ。楽しいことも、苦しいことも、嬉しいことも。なにより、新しい家族もできたし…

 

 何てね。まだ半月しかたってないよ、あれからね。

 新しい家族と呼べる存在ができて、まだ半月…

 そして、今は買い物から帰ってきたばかり。

 私のことを家族と呼んでくれる母親と、その娘2人が住む家の前に佇む。


 ……


 「このままじゃ…いけないよね!!」


 パチン



 気を持ち直すために頬を叩いて、ポケットからあるものを取り出す。

 これを見るたびに、頑張れたんだ。だから…

 そうだよ!強く生きるって…お兄ちゃんと決めたじゃない!

 なら、くよくよ出来ない。


 黒桜を手にしたときから、微かに思い出したことがある。

 それは、私にとっては大切なあの人のこと。それ以外のことは……いまだに思い出せてない。だから、何で倒れてたのかとか、そういったことがわからない。

 ……話がそれたね。なんの話だっけ?ああ、そう。大切な人のことだったね。 

 その人は泣き虫で気弱な私に、勇気づけたり励ましてくれた。血が繋がっていない、戦うことしかできない、純血の人間じゃない、そんな私を。そんなこと気にも留めていないかのように、気にしていないかのように、何度も何度も助けてくれた。


 

 ある日の月が綺麗な晩。すっかり辺りが暗く、眠る時間になっていた。

 

 ……怖い。夢のようだけと、鮮明にはっきりと浮かぶあの光景……。目を瞑ると……思い出す……あの光景……私の意思とは関係なく動く体……命乞いをする人や……理性のない人だったもの……

 怖いよ……

  

 脚を抱いて私が啜り泣いていると、微かに歌声が聞こえてくる。その歌は私が生まれる前から、いやそれよりも前に、遥か遠い昔から聞いたことのあるような錯覚に陥りそうになる。



 「~~~~」


 歌い終えると、硝子窓に手を当てている彼が振り向き、そっと微笑みながら私の方に近づく。

 

 「2年前からお前は、この歌を歌うとよく泣き止んでいた。それは今も変わらないな」

 

自然と辛さが消えていた。消えるどころか、気が楽になり暖かさを感じた。胸がきゅんきゅんしてたんだ。嬉しくなってたんだ。


 「まぁ、まだ子どもだからな」

 「私はもう子供じゃないよ」


 私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 私は早くお兄ちゃんの背中に追い付きたかった。


 「なら、強く生きていかないとな。辛くとも、苦しくとも、それさえ糧として、残酷な宿命に、抗い進むことがお前にならできる」


 私の頭を撫でる手を止め、隣にゆっくり腰を下ろして並ぶ。


 「それと、お前のその力の使い方は、お前が決めろ。お前自信が考えて決めるんだ。誰かに利用されるでなく、自分で……」


 そういうことを言われたのは初めてで、驚いてしまう。

 

 「俺は、お前を守ることができなくなるかもしれないからな……」


 伏せられていた顔を上げ、私の肩を掴んで目を見る。彼の瞳は強くて、真っ直ぐで、何事も屈しない。


 「これを持っておくといい」

 

 私の手を取り、何かを握らせる。


 「これは?」

 「お守りだ。必ず君を守る」



 ……うーん、元気付けにはなったけど…どうして唐突にこの思い出が?それにあの人…気のせいかな?


 考えていると。


 ガチャッ

  

 「きゃっ!?」

 「ひゃう!?」ドテッ


 急にドアが開かれお互いビックリする。


 「ミレイ、いたなら家に入りなさいよ」

 「ううっ、ごめん」


 いきなりドアを開かないでほしい。ドアの前でボケッと突っ立てた私も悪いけど。…でもさ、ビックリして尻餅付いたじゃない……。

 はぁ~恥ずかしい……

 顔に熱が篭る。多分、紅いんだろうなぁ~私の顔……。

 何とか平常心を取り戻すべく、取り繕った会話する。


 「セレナはどうしたの?」

 

 すると、


 「ミレイがあまりに遅いからでしょ!!」


 怒られた、めっちゃ怒られた。激怒だ。ハァ……嫌だなぁ~ガミガミ言ってるし。嫌だなぁ~荒れてるなぁ~。


 「まったく…どれだけ心配したと思ってるのよ!無事でよかった。早く入りましょっ」


 私を心配してくれてたんだ。なんだかぁ…いいなっ!!こういうのは。

 けど……ねっ……。言えないよね。道に迷ってたなんて…。べっ別に、方向音痴なんかじゃないんだからねっ!!

 とか言ってみたりして。

 しかし、まぁ、本当に方向音痴ではないんだけどねぇ~。ここ、けっ~こう分かりやすいし。ずっと突っ立ってただけだし。


 小一時間のお説教をセレナお姉様に……ああ、何でもないよ、ただの失言だから。まぁ、セレナに説教された後家に入る。

 今はちょうど、エミネムさん…じゃなくて、お母さんとセレナとシェリ、私で夕飯の準備を楽しく笑いながらして、食卓を囲んで夕飯を食べている。

 こうやって、みんなで食べるのは今日で最後。


 「みんな、明日の準備はしているの?」


 相変わらずふわふわぽわぽわしてて、18歳と言っても信じ込んでしまいそうなほど若いお母さん。でもこういうときはちゃんとお母さんしてる。

 明日はヨハリフォトの街の近くにある、魔導学園リベルクローツに試験を受けに行く。

 

 「うん!!」


 いつも通り代表で元気よく返事をするシェリ。


 「その様子だと、大丈夫なのね。じゃあ、ミレイ」


 いつになく真剣な表情をするお母さん。どうしたんだろう?何かあるのかな?心して聞かなきゃ!! 


 「恋ばなぁ~。恋ばな聞かせてよ~。」

 「!?」


 はぁ~、始まった……。真剣な顔するから何かと思っちゃった私がバカみたい…。


 「私も聞きたぁ~い」

 「ほら、シェリもお母さんもやめてよ!!それに恋ばなじゃなくて家族の話だし!!お兄ちゃんの話だし!!」


 必死に言い訳を…じゃない!!事実よ!!事実、事実を伝えようとすると横から茶化してくる。


 「でもさぁ、楽しそうに話すよね~。その人のこと……」


 かなりニヤニヤして楽しそうなセレナ。

 あぁ~もう!!お母さんに話してたらお姉ちゃんに飛び火とか、ちょ~めんどくさいんですけど!!


 「もう、明日の話しに戻すよ!」

 「で、彼は何て言ったっけ?」

 「お母さん、ヴェルサスよ」

 「ヴェルサスってどういう人かな?お姉ちゃん」

 「だから、本当に何にもないんだって!!」


 本当に、楽しいなぁ~

この眠気くらい。どうと…い…こ…と…な…………

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