支え
はぁ…寒いなぁ~
あれから、もう半年かぁ。いろいろあったなぁ。楽しいことも、苦しいことも、嬉しいことも。なにより、新しい家族もできたし…
何てね。まだ半月しかたってないよ、あれからね。
新しい家族と呼べる存在ができて、まだ半月…
そして、今は買い物から帰ってきたばかり。
私のことを家族と呼んでくれる母親と、その娘2人が住む家の前に佇む。
……
「このままじゃ…いけないよね!!」
パチン
気を持ち直すために頬を叩いて、ポケットからあるものを取り出す。
これを見るたびに、頑張れたんだ。だから…
そうだよ!強く生きるって…お兄ちゃんと決めたじゃない!
なら、くよくよ出来ない。
黒桜を手にしたときから、微かに思い出したことがある。
それは、私にとっては大切なあの人のこと。それ以外のことは……いまだに思い出せてない。だから、何で倒れてたのかとか、そういったことがわからない。
……話がそれたね。なんの話だっけ?ああ、そう。大切な人のことだったね。
その人は泣き虫で気弱な私に、勇気づけたり励ましてくれた。血が繋がっていない、戦うことしかできない、純血の人間じゃない、そんな私を。そんなこと気にも留めていないかのように、気にしていないかのように、何度も何度も助けてくれた。
ある日の月が綺麗な晩。すっかり辺りが暗く、眠る時間になっていた。
……怖い。夢のようだけと、鮮明にはっきりと浮かぶあの光景……。目を瞑ると……思い出す……あの光景……私の意思とは関係なく動く体……命乞いをする人や……理性のない人だったもの……
怖いよ……
脚を抱いて私が啜り泣いていると、微かに歌声が聞こえてくる。その歌は私が生まれる前から、いやそれよりも前に、遥か遠い昔から聞いたことのあるような錯覚に陥りそうになる。
「~~~~」
歌い終えると、硝子窓に手を当てている彼が振り向き、そっと微笑みながら私の方に近づく。
「2年前からお前は、この歌を歌うとよく泣き止んでいた。それは今も変わらないな」
自然と辛さが消えていた。消えるどころか、気が楽になり暖かさを感じた。胸がきゅんきゅんしてたんだ。嬉しくなってたんだ。
「まぁ、まだ子どもだからな」
「私はもう子供じゃないよ」
私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
私は早くお兄ちゃんの背中に追い付きたかった。
「なら、強く生きていかないとな。辛くとも、苦しくとも、それさえ糧として、残酷な宿命に、抗い進むことがお前にならできる」
私の頭を撫でる手を止め、隣にゆっくり腰を下ろして並ぶ。
「それと、お前のその力の使い方は、お前が決めろ。お前自信が考えて決めるんだ。誰かに利用されるでなく、自分で……」
そういうことを言われたのは初めてで、驚いてしまう。
「俺は、お前を守ることができなくなるかもしれないからな……」
伏せられていた顔を上げ、私の肩を掴んで目を見る。彼の瞳は強くて、真っ直ぐで、何事も屈しない。
「これを持っておくといい」
私の手を取り、何かを握らせる。
「これは?」
「お守りだ。必ず君を守る」
……うーん、元気付けにはなったけど…どうして唐突にこの思い出が?それにあの人…気のせいかな?
考えていると。
ガチャッ
「きゃっ!?」
「ひゃう!?」ドテッ
急にドアが開かれお互いビックリする。
「ミレイ、いたなら家に入りなさいよ」
「ううっ、ごめん」
いきなりドアを開かないでほしい。ドアの前でボケッと突っ立てた私も悪いけど。…でもさ、ビックリして尻餅付いたじゃない……。
はぁ~恥ずかしい……
顔に熱が篭る。多分、紅いんだろうなぁ~私の顔……。
何とか平常心を取り戻すべく、取り繕った会話する。
「セレナはどうしたの?」
すると、
「ミレイがあまりに遅いからでしょ!!」
怒られた、めっちゃ怒られた。激怒だ。ハァ……嫌だなぁ~ガミガミ言ってるし。嫌だなぁ~荒れてるなぁ~。
「まったく…どれだけ心配したと思ってるのよ!無事でよかった。早く入りましょっ」
私を心配してくれてたんだ。なんだかぁ…いいなっ!!こういうのは。
けど……ねっ……。言えないよね。道に迷ってたなんて…。べっ別に、方向音痴なんかじゃないんだからねっ!!
とか言ってみたりして。
しかし、まぁ、本当に方向音痴ではないんだけどねぇ~。ここ、けっ~こう分かりやすいし。ずっと突っ立ってただけだし。
小一時間のお説教をセレナお姉様に……ああ、何でもないよ、ただの失言だから。まぁ、セレナに説教された後家に入る。
今はちょうど、エミネムさん…じゃなくて、お母さんとセレナとシェリ、私で夕飯の準備を楽しく笑いながらして、食卓を囲んで夕飯を食べている。
こうやって、みんなで食べるのは今日で最後。
「みんな、明日の準備はしているの?」
相変わらずふわふわぽわぽわしてて、18歳と言っても信じ込んでしまいそうなほど若いお母さん。でもこういうときはちゃんとお母さんしてる。
明日はヨハリフォトの街の近くにある、魔導学園リベルクローツに試験を受けに行く。
「うん!!」
いつも通り代表で元気よく返事をするシェリ。
「その様子だと、大丈夫なのね。じゃあ、ミレイ」
いつになく真剣な表情をするお母さん。どうしたんだろう?何かあるのかな?心して聞かなきゃ!!
「恋ばなぁ~。恋ばな聞かせてよ~。」
「!?」
はぁ~、始まった……。真剣な顔するから何かと思っちゃった私がバカみたい…。
「私も聞きたぁ~い」
「ほら、シェリもお母さんもやめてよ!!それに恋ばなじゃなくて家族の話だし!!お兄ちゃんの話だし!!」
必死に言い訳を…じゃない!!事実よ!!事実、事実を伝えようとすると横から茶化してくる。
「でもさぁ、楽しそうに話すよね~。その人のこと……」
かなりニヤニヤして楽しそうなセレナ。
あぁ~もう!!お母さんに話してたらお姉ちゃんに飛び火とか、ちょ~めんどくさいんですけど!!
「もう、明日の話しに戻すよ!」
「で、彼は何て言ったっけ?」
「お母さん、ヴェルサスよ」
「ヴェルサスってどういう人かな?お姉ちゃん」
「だから、本当に何にもないんだって!!」
本当に、楽しいなぁ~
この眠気くらい。どうと…い…こ…と…な…………