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レクイエム  作者: 猫の祭り
第1章
11/25

 妖刀 名刀

書きたかった刀の登場。

 ティナさんに笑顔で見送られる。

 冒険者ギルドから出ると帰ろうとするエミネムさんを止めて、ある店によってもらう。

 

 「着いたわよ。ヨハリフォトの武器屋はここよ。他にもあるけど、ここが一番規模が大きいわ。」

 「ありがと」


 礼を言い店内に入る。

 物凄い数の剣や銃、ナイフといった様々な武器がおいてある。武器に限らず防具までも。


 「それにしてもどうしたの?急に武器屋に行きたいって言い出したりなんかして。」

 「さっき、ティナさんが愛用する武器があるなら第二試験の時に持参して構わないと言ったでしょ。恐らく、その第二試験を重点的に見ると思う」 


 そう告げると感心したように手を叩くしぐさをする。

 

 「ああ、成る程。よく分かったわね」 

 「でないとあんなこと言わないでしょ?だからよ。第一試験も評価に入るかもしれないけど、それよりも一番重点的に評価するのは第二試験。第二試験を行う理由はその人の実力や傾向を見るため。そんな試験にわざわざ、普段使いなれた獲物じゃなくて、使いなれない訓練用の獲物を使わせるはずがない」

 

 それに、これはあくまでも個人的な興味本意なんだけど、掘り出し物がないかなぁ~と思ちゃってるわけですよ。

 そう確信する理由はちゃんとある。この街はかなり広い。それに近くには森もある。だったら掘り出し物があっても良さそうじゃない?では早速、物色してみますか。

 と、ウキウキ気分でいると話しかけられる。


 「ミレイって近接武器を使うの?」

 「うん。使ってみたいかな?」 


 表では笑って答える。

 ……嘘。実際に剣を使って戦ったことがある。勿論、人の命も幾度となく奪ってきた。研究の成果を私に出させるため、魔物ではなく人の手によって造り出された魔物、モンスターも相手にした。人工的に強化された人とも相手した。

 んんん?そんな記憶はないのに、何故かそんな感覚がある。既視感というやつだ。気を取り直して物色開始する。

 だめだ、無い。無さすぎる。どうしてこんなにもいい武器がないんだ!!良いなぁと思って手に取ると、構成してる素材からダメだったり。質もそうだけど、造った人の技術が悪い。私は剣じゃなくて刀がほしいんだ!!

 あまりに刀が無さすぎて一人でイライラしていると慌ただしく誰かが入ってくる。


 「何があったのかしら?」

 「さぁ?」

 

 気にすることなく物色……ってそれどころじゃない。今の人が運んでた布に包まれた荷物の中に重たく冷えた空気が感じられた。この感覚、間違いない。だって、なによりも、その荷物からは20mちょい離れているのに、押し潰されるかのような重たくて冷たい独特な感覚が伝わるんだから。これは異常としか思えない。それにどことなく、懐かしく思えた。

 挙動不審になりそうなほどの興奮を抑え、店員とその荷物を運んできた二人の方をじっと見る。

 

 「やっとか」


 えっ?私じゃないよ、今の。

 後ろを見ると、漆黒のロングコートに身を包んだ私より3つ2つ年上くらいの少年がいた。腰下まで伸びた綺麗な銀髪、ピンクと紫の中間色のような瞳に猫のごとく細長い瞳孔。膝下まであるロングコートをタートルネックの上に纏い、黒とサブに赤色あしらったロングブーツ。コートの左前の内側の裾から、ちろっと紫っぽい羽のような装飾が見えている。冷たい表情で中性的な顔立ちに細身の少年だ。

 まっまさかね……。それよりそれより、向こうは店主が血相変えて出てきた。なにやら進展があったらしい。やっぱり掘り出し物?

 店主が大声をあげる。


 「何だこれは!!本物か!?」


 なになに?なによ、なんなのよ?


 「えっ、ええ。本物です。この異様なほど黒く綺麗な刀と、まるで対になっているかのような白銀の刀。この2作品…間違いなく本物です。どうしましょ?捨てます?」


 何でさ!!何で捨てるのさ!!捨てるくらいなら譲ってよ!!そんな心の叫びをよそに話を進める。


 「俺に呪われろと言ってるのか!?」

 「いやいや、そうは言ってないですよ」


 運んできた男は迫り来るような勢いの店主に後ずさりする。にしても、呪われる?急に話がとんだ?


 「ミレイ。何を話しているのかしら?」

 「呪いとか言ってたね」


 店員が他に案があるのかと言いたげな表情を向ける。


 「安く売るしかないだろ。まぁ、」

 「世界単位で見てもかなり有名で薄気味悪さを持つ名刀、黒桜。それに対となる妖刀、村正。」


 店主の声を遮った少年が話題の中心となっていた刀のところへ歩きながら言う。


「君は?」

 

 ニヤッと口角を曲げ店主の話を無視し、少し高くどことなく高貴さを感じさせる声音で話を続ける。


 「店主さん。その和の国の刀。妖刀村正をくれないですか?勿論代金はお支払います。」

 「しかしこの刀の恐ろしさは知ってるでしょ。子どもに渡すわけにはいかない。」

 「当然、有名ですからね…」


 顔をしかめる店長。


 「あなたはその刀を処分するのに困っている。私はその刀がほしい。ちょうど良いと思うが?」


 その落ち着いた様子に身動ぎする店主。

 キョロキョロと忙しないエミネムさん、あなたはどうしたの?

 置いてけぼりのエミネムさんは放っておいて、私も欲しいかな。黒桜は聞いたことのある品物だし。何で名前が分かったって?簡単よ。少年が妖刀村正といって、店員が対になる刀といった。昔から妖刀村正と名刀黒桜はペアでよく語られていたから、対といったら黒桜しかないなとね。


 

 「あのう、店長さん。私、黒桜欲しいんですけど…」


 固まる店主と店員。店主は少し考えると諦めたような顔になる。

 

 「はぁ…好きにしろ。金はいらん。」


 完全に呆れてる。


 刀を受け取るとどっかへ行ってしまう少年。

 続いて私も受け取ろうとすると


 「本当にいいのか?この刀。黒桜のことは知ってるのか?」

 

 質問をしてくる。

  

 「勿論。向かってくるものに一切の容赦を与えず、漆黒の刀身は優美さをもつ……でしょ?」

 「はぁ、ほらよ持ってきな」


 受け取ると一瞬背筋が凍った。なぜ私が、この刀に必要以上に興味を示したのか……理解できそうだった。この刀とは、私が倒れる前に既に手にしていて、共に……戦った?完全に理解はできないけど、でも、お互いあるべき姿というか、あるべき場所に帰れたような感覚を覚えた。

 

「その刀は持ち主を選び、選ばれたものが持つと桜という花が舞うそうだ。だが、その優美さとは裏腹に、漆黒の刀身が闇より深い黒色になるのは、血肉に触れたとき。だから、気味悪がられるんだ。その刀は」


 そんな話しを聞いて振りたくなった。振るだけのスペースはあるので持ち柄に手をかけて鞘から抜く。


 「軽っ」


 ん?何か落ちてきた。周りを見ると綺麗な薄く淡いピンクの色をした花弁が舞っていた。あまりの軽さで驚いて刀に気をとられてたのね。

 綺麗だ。やっぱり、懐かしい感じがする。


 「ミレイ。これが桜なのかしら?」

 「うん。そうみたい」


 エミネムさんは見惚れていた。



 店を出ると用を終えたので家に帰宅することにした。。


 「お帰り、お母さんとミレイ」

 「お母さんとミレイ、お帰り」


 セレナとシェリが迎えてくれる。


 「私、少し出掛けてくるから」

 「ええ、帰ってきたばかりなのに?」


 残念そうにするシェリ。こうして、誰かに迎えられるのっていいね。なんか。


 「早く戻るのよ」

 「行ってらっしゃーい」 


 みんなに告げると森に行く。

 複数のウルフと遭遇。 


 「これは都合がいいわ」


 ウルフが走る。

 同時に私も走る。

 ウルフが噛みつこうと高くジャンプする。それを下に避け、切り裂く。綺麗な花が舞う。それに重なり血も舞う。刀身は血肉をに触れることの歓喜の証しに黒く、闇よりも黒く染まる。

 真っ二つになったウルフが落下する。私は体勢を整え集まり出すウルフに向かって走る。

 

 「残り……7匹」


 神経を集中させる。

 あの研究所の出来事を思い出す。ん?研究所?まぁいいか。

 私だから出来る。と…そう心なしに感じた。

 

 魔方陣を形成しながら走る、ウルフの元へ。向かってくるウルフ3匹は切り裂く。その都度歓喜する刀。

 ウルフの近くに立つと刀を地面に突き刺し、魔法を放つ。

 私を中心に灰色のエネルギーがドーム状に膨らみ、爆発を発生させウルフ4匹が塵となる。


 研究所での一連の出来事のように。


 「さ、帰ろう…」


 刀を地面から抜き、一振りし鞘に鞘に収める。

 このときの私の顔は冷たい表情をしていたのだろうか。


 桜の花が虚しさと共に、虚空を舞う。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「記憶の欠落、いや封じたのか。……仕方ないか。今は思い出さない方がいい」


 木陰を背に一人そこにいた。

どうするかねぇ

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