4話:農園の広大さを知る。
軽トラのうしろをついていくこと約五分。
さきほど通った道を戻り、途中で横に逸れ、やがて俺たちを乗せた車は停まった。
車を降りてすぐそばには看板があり、そこには『乙葉おれんじふぁーむ』と大きく書かれていた。
そのすぐ背景は一面に、空の蒼と畑の緑だ。
アスファルトから畑道へ変わる境あたりで由愛さんが待ってくれていた。
「ここがうちの畑やで。他にも数ヶ所畑があるんやけど、ここが一番近いところ」
薄手の長袖チェックシャツにジーンズといった装いの由愛さん。さきほどまで下ろしていた髪は頭の両サイドで結われていて、麦わら帽子を首の後ろにかけている。
て、天使すぎる……。
まさに両親の仕事を健気に手伝う田舎っ娘といったところか。
そして、眼前に広がる畑の広さも相当なものだった。
「遠目から見ても思ってましたけど、やっぱり広いっすね……」
「ああ、向こうの端っこが見えないな」
「ここだけで、だいたい1町あるからねぇ」
『1町』がどれくらいの広さなのか(そもそもそんな単位があったのか)この時はわからなかったけど、かなり広いということはわかった。
ここ……畑の最端からは、ある程度視界が開けているにもかかわらず、向こうの端が認識できないのだ。
つまりは、ずぅっと畑が続いているように見える。
ちなみに、1町とは約1万㎡。
さらに【1町≒10反≒100畝】と単位が変わるらしい。
「こんな広い畑が他にもあるんですかぁ……」
「他のところはここより狭いんやけどね。それでも、ぜんぶ合わせたら2町半以上あるかなぁ」
2町……ってことは、この畑より広いのがもう一つ以上あるくらいか。想像できない。
農家ってどこもこんな広大な土地を持ってるんだろうか。
「あれ? ところで、農主さんはどこへ?」
「あぁ、叔父さんは……」
叔父さん? ……てことは、由愛さんは農主さんの姪っ子なのか。
由愛さんの視線を追うと、畑の奥、農機具を押して進んでいく農主さんの姿があった。
キャタピラ足、荷台のついたその農機具には大量の袋が山積みに乗っている。
「もう作業始めてる……。あ、でも心配せんといてね。説明とかのお話は私が全部するから。そもそも、今回のお手伝い依頼したのも私やしね」
「え、そうなんですか?」
「う、うん。あの人はなんでも一人でする! って感じやから……」
ようは農主さんからすれば『バイトなんぞ要らん!』というところだろうか。
そういや、最初からあのおっさ……農主さん、俺のこと歓迎ムードとはいえなかったよな。色々と試されていた(遊ばれていた?)ような感じだったし。
「まぁでも、実際は君に期待してると思うよ。叔父さんも」
「そ、そうなんでしょうか……」
「うん、私が保証するから」
どうにもそうは思えないけど……。でも、由愛さんがそう言ってくれるとそんな気がしてくるから不思議だ。
というかその無垢な笑顔が眩しいっす。
俺のなかにある邪悪なこころが溶かされそうっす……!
「なら存在ごと消えてなくなるな」
「俺の要素って邪悪なこころオンリーなのっ!?」
姉ちゃんひでぇ!
てか急に俺の心を読むんじゃないですよ!
「じゃあ、まずは畑を一回りしよか」
ともあれ、由愛さん主催のバイト説明会がここに始まった。
次話との区切りの都合で文字数が短めですすみません(汗)