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ハーレム

ハーレム男のハーレム要員です

作者: 黛 カンナ

とある感想を目にして、今までのパターンじゃ無い奴をと、勢いのままに書いてしまいました。

ある日、王子と呼ばれる凄い俳優が私の町にやってくるというのを聞き付けたので、私もその姿を拝もう思った。


ぶっちゃけ、そこまでファンでも無かったが、有名人なら見てみたいというミーハー心だ。


「イケメンは何処にいる~?」


キョロキョロと辺りを見回してみるが、沢山の人がいすぎてよく分からない。畜生、みんな考えることは同じか~


と、ちょっとアレな気分だったのだか...


「俺のことか?」


私の後ろからそんな声が聞こえたので、そっちを振り向くとなんともまぁ美しい青年がいた。アレだイケメンとかそんな次元こえてる。


サラッサラの黄色い髪に黄色い瞳、溢れ出すオーラのせいで腰が抜けそうだ。


「そうそう、貴方ですよ~。良かったらサインください~」


「俺のファンか?」


「そうですよ~」


色紙ないから、ティッシュでいいやと鞄の中をまさぐって、取りだす寸前...


ッチュ


気がつけば額にキスされていた。


「俺の彼女にならないか?」


「いいですよ~」













「とまぁ、こんな感じだよ。彼のハーレム要員になったきっかけは~」


のんびりとした声が響き渡った。


「お前どんだけ軽いんだ!?」


鶴美(つるみ)の幼馴染みである佐吉は教室でそうツッコンだ。


「いや、君が聞きたいっていったんだから言ったまでだよ」


スーパーな俳優、薬王寺(やくおうじ) リアンは、世界中で活躍する踊って歌って演技も出来て、ついでにデザインも出来てマンションも大量に持ち、鶴美曰く、『なんかスゲーアイドル』だ。


「そんなアイドルの恋人て…」


「いや、恋人じゃないよ。ハーレムの一員ってだけだし」


そう言いながら、鶴美は大きなメロンパンを頬張る。


メロンパンを頬張る鶴美は家柄も性格も顔も極普通の平凡な少女だ。


唯一の特異な部分と言えば、世界的な俳優のハーレム要員をしていることだろう。


「俳優のハーレム要員とか~めっちゃいいじゃん。王子格好いいし…あ、メロンパン食べなよ」


平凡で、頭もそこまでよろしくない彼女は、自分の状況をそんな風に思っている。


「いつか、捨てられるぞ」


佐吉は鶴美からちぎったメロンパンを貰いながら、警告を出す。


リアンという、化け物みたいな俳優は、当然の事ながらモテる。

よく週刊誌を賑わせ、半裸のリアンが多数の肉体的な外人美女に囲まれる写真が写ることなんてザラだ。


なので、佐吉の心配は最もなのだが、鶴美はヘラヘラと危機感なく笑ってる。


「うん、もうすぐ捨てられると思うんだよね~…そうなったら、佐吉くん、彼女捨てて私と付き合ってね~」


適当に、深く考えていない頭で鶴美はバカっぽいことを言った。


実際に彼女は、今の状況を軽く考えている。

リアンのハーレム要員は、全員が飛び抜けた美女であり、自分は平凡なので週刊誌にのったことすらない。


鶴美は『スゲー俳優の何百番目かのハーレム要員やってる私スゲー』くらいにしか思ってないのだ。


「分かったよ、そうなったら付き合ってやる」


このバカには馴れたとでも言うように、佐吉は軽く返事をした。



ーー


「あったま~スッカスカぼーん☆」


頭が相当スカスカしている様な、変な歌を歌いながら、高級マンションに入った。


ここは、鶴美が住んでいる所ではあるが、実家ではない。

彼女の実家は、両親が脱税していた事が判明した時に取り押さえられており、両親は現在、海外へ逃亡している。


では、ここは何処の家なのかと言われれば…


「リアンくん帰ってたんだ~」


リアンの家である。


ソファで寝転がりながら、ダルそうに雑誌を読んでいるリアンを発見した鶴美は、ビニール袋をユラユラと揺らしながら、リアンに聞いた。


「味噌カレー作るけど、食べる~?」


「それは旨いのか?」


「美味しいものに~美味しいものを足したら~更に美味しくなるに決まってるじゃーん」


かなりバカっぽい理屈を捏ねながら、鶴美は二人分のカレーを作り始めた。


この高級マンションの15~最上階の主は、リアンである。

現在、日本を中心に活動しているリアンは、ここで鶴美と一緒に暮らしている。


脱税がバレた事で海外へ逃亡した親に一人残された鶴美が『あらまぁ、どうしましょう。そうだ、佐吉の家で世話になろう~』と、呑気に考えていた時に、購入されたマンションである。


その恩があるので、リアンの世話は鶴美が一通りやることになっている。


とは言っても、リアン程の資産家ならば、適当にハウスキーパーでも雇えばいいと思うのだが、それは違うらしい。


リアンは、完璧に近いが、性格や色んな所で人間臭く、面倒臭いので、それを隠す為だろうと、鶴美は考えていた。


「さあ、出来たよ~味噌カレー~」


間延びした声が、リビングに広がる。

テーブルの上に散らかってある、雑誌を片付けながら味噌カレーの入った皿を並べ始める。


「ちょっと待て」


リアンから、静止の声が響いた。


ん?と、鶴美はホケボケとした表情で首を傾げると、リアンは鶴美が片付けた雑誌を引っ張りだし、目の前に叩きつける。


「これを見て…何かを思う事はないのか?」


そういって、見せ付けて来たのは、ゴシップ記事の週刊誌である。

そこには大きく『リアン!巨乳美女とラブホテル!?』と大きく書かれ、何とも色っぽい体と艶やかなドレスを着ている女性と、それを全て打ち消す美貌をこれでもかと、出しているリアンであった。


「わ~リアンくん、格好いいね~」


少しズレたことを言いながら、それ以上の感情を持たないで、味噌カレーを並べていく。


それに苛立ったのか、リアンは週刊誌を鶴美にぶつけた。


何に、怒っているのかは、理解できないが、長年の付き合いで、リアンが超人であっても、完璧ではないと理解している鶴美は、何か嫌なことでもあったのだろうと、結論づける。


「それより~…食べなよ~」


ホケボケしたように笑う鶴美に促され、渋々とリアンは食べ始める。


魅力の化け物であり、絶世の美男子と呼び声の高いセレブな外人男性が、カレーを食べるという、奇妙極まりない食事が開始された。


「そういえばさ~そろそろ海外に本拠地移さないの~?日本だと面倒でしょ~?」


リアンは世界中で活動している。

最近は日本が多いものの、それでもやはり、世界中で撮影を行い、自家用ジェットとヘリでここまで来ているのだ。


「俺が海外に本拠地に移したとして…お前も来るか?」


「絶対やだよ~行きたくない~何言ってんの~?バカじゃない~?」


「……」


その日、鶴美とリアンは一切口をきかなかった。


その後、鶴美が『きっとカルシウム不足だよぉ~食べなさい~』と言いながら小魚を無理矢理リアンの口に放り込み、無視はされなくなったが、リアンの血管がブチ切れたのは、また別の話。





とまぁ、こんな風に鶴美は今の生活をそこそこいいものだと思っていた。


『薬王寺リアン、ついに本命の彼女!もうすぐ結婚か!?』


ヤフトピで、そんなニュースが流れるまでは。


「これ…ヤベーんじゃねーか?つーか、本当なのか?」


佐吉は、スマホのニュースアプリを開いて、鶴美に聞いた。


そこに書かれてある、本命彼女とは、鶴美の事ではなく、メルシアという、姉御でサバサバキャラで有名な、アメリカとのハーフ女優である。


リアンとの共演やベッドシーンも数多く出ており、元々そういう噂が色濃くついていた。

メルシアが「結婚する」と答え、リアンから否定が無かったことで、二人はそういう仲に見られたのだ。


しかし、それだけならば佐吉は鶴美に詳細を聞かなかっただろう。


「なんだかね~私って悪女みたいだよ~二人の仲を切り裂くあ~く~ま~」


ニュースに書かれている内容には、二人の恋の障害として、鶴美を侮辱し、罵倒する内容が、これでもかと、書かれているのだ。


顔写真も貼られており、住んでいるマンションに、学校、更には鶴美の両親が現在海外逃亡をしていることについても書かれていた。


プライバシーの侵害でしかないが、頭の悪い鶴美は余り現状を理解しておらず、ポヤポヤとメロンパンを食べている。


「学校に来る途中でもね~記者さんが沢山来て大変だったんだよ~」


沢山の取材陣に囲まれた朝を思い出してゲッソリする。


『一緒に住んでいるというのはどういう事ですか!?』『遊ばれているという自覚はあるんですか!?』『二人が結婚したらどうする気なんですか!?貴女最低なんですよ!?』


沢山のフラッシュで目がチカチカするな~ぐらいにしか思っていなかったが、流石に不愉快であった。


「リアンからは?」


「連絡が来ないの~」


どうしましょ~と、余り危機感が足りない顔で、ホケボケとそういった。

ニュースの前日あたりから、リアンの連絡は途絶えているのだ。


「今日はコッソリ俺の家に泊まっとけ」


何の下心もなく、純粋に心配と配慮しての言葉だったが、鶴美はニコニコと首を振る。


「今日ね~メルシアさんから食事に誘われて~一緒に食べるの~」


吹いた。

飲んでいたトマトジュースを思いっきり吹いた。


「お前…バカじゃねーの?」


「美味しいご飯とか~食べれるし~メルシアさんっていう有名人に会えるなんて~凄くない~?」


「もうさ、俺の嫁に来いよ、お前を世に放置してたら、心配で胃が痛くなる」


腹が痛くなると答えながら、頭痛のポーズをして、佐吉が呆れたように言った。


「えっへへ~そんときはよろしく~」


佐吉の心配をよそに、鶴美はニコニコと相変わらず笑っていたのであった。


ーーー


「こんばんわ~今日は招いてくれてありがとう~」


フワフワポヤポヤと、呑気そうな笑顔で鶴美はレストランに入った。

夜景の見える最上階であり、貸切にしているのか、他に客はいない。


「いいえ…座ったら?」


豊満な胸と尻を強調する赤いドレスを纏ったメルシアは、不敵な笑みを浮かべて促すと、鶴見はニコニコと笑いながら座る。


「やっぱり、リアンくんが選ぶだけあって、綺麗だね~」


ホケボケと、何の気なしにただ感想を言っただけであったが、メルシアにとっては先攻だと受け取ったらしく、目をスッと細ませた。


「ゆるふわ系と言った所かしら?自分は何も気にしてませんアピール程、ウザイものはないって知らないの?」


ククッと、『貴女の事なんてお見通し』という眼力と、大人の余裕を併せ持った嫌味で攻撃をしかけたが…


「あの~メロンパンってありますかぁ~?」


鶴美はメロンパンを注文していた。


「すみません、メロンパンは…」


黒服の人も困った顔をしている。


「…っ…なに、無視してんの?本当にウザイんだけど」


無視された事に怒りを露にしながら、不自然な程に大きく青い瞳が鶴美を貫く。


「ごめんね~ところで~ご用件は何かな~?」


メロンパンの代わりに、運ばれてきたコースメニューを食べ始めた所で、鶴美は本題へと移らせた。


「貴女…なんでリアンと一緒に住んで、付き合ってんの?」


メルシアも、運ばれてきた食事を食べながら、苛立ちまぎれにそういって。


「顔がよくって~お金持ちで~有名で~ほら、何か凄いみたいだから~」


「貴女って…最低ね」


お手本のように、何も考えておらず、ミーハー全開な鶴美の回答を心底軽蔑したように、そう評した。


「そんな事でリアンの価値を決めるなんて最低だわ、それって彼自身を見てないって事でしょ?私は違うわ、彼が俳優じゃなくなっても、有名じゃなくなっても愛せる。


貴女では論外よ、さっさと別れなさい」


その言葉は本物であったが、現実さに欠けている。

メルシアの言葉は、一応本気ではあるのだが、その深層心理には…


『リアンがそんな事になるわけがない』


というのが、何処かある。



しかし、そんな事を察する能力など無い、もしくはメルシアがリアンをどう思っていようがどうでもいい鶴美は…


「うん、分かった」


アッサリと承諾した。


あまりのアッサリ加減に、ポカーンとしてしまっているメルシアを他所に、鶴美はスマホでリアンに連絡をいれる。


留守電だが、鶴美はそのまま言った。


「『あ~リアンくん?別れよっか。荷物は今日中に出すから安心してね』」


ッピと、言うだけいって、切れた音が店内に鳴り響く。


「これで、いいかな~?」


ニコニコと、屈託のない笑顔でメルシアに聞いた。


「え、えぇ……」


何処か、怯えた様子のメルシアは、それ以降、ずっと無言のままで過ごし、鶴美もニコニコと笑って、最後まで料理を食べた。









「美味しかったな~」


鶴美は、ルンルン気分でマンションに帰っていた。

沢山の記者がいることを想定して、裏口から入り、自分の住む部屋の扉のノックを外して、中へと入る。


「ただい……」


「……」


ムスッとした表情で、リアンが立っていた。

涙を堪えているのか、既に泣きつくしたのか、目と鼻を真っ赤にして、黄色い目に、水玉がついていた。


「あらあら~どうしたの~?」


ホケボケと、鶴美が問えば、もう我慢がならないとばかりに、リアンは思いっきり抱きついた。


大人一人を支えられる腕力が鶴美にある筈もなく、玄関で押し倒されてしまう。


「…っず…んだよ…あれ、マジ…ふざけんな。別れるとか……」


要領を得ず、グシャグシャな声が響く。


「よしよし~」


泣きながら、喋るリアンの背中をポンポンと叩いて、鶴美は安心させるように声をかけた。


「リアンくん、結婚するんじゃなかったの~?」


「んな訳ねーだろ…つーか、それぐらい察しろ……ボケ…アホ……俺がどんだけ……捨てないで」


小さく……けれど、クリアな声を耳元で呟いた。


「捨てないで……ごめん。違うんだ、アレは本当にただの共演者であって、何の関係もない。確かに寝たけど、結婚とかする訳ねーだろ。頼むから嫌いにならないで……」


弱々しく、いい大人が吐く台詞ではない言葉が次々に出てくる。

時おり、嗚咽まぎれに出される声は、痛々しかった。


そんな彼を、鶴美は受け止める。

絶望も、優越感も、抱かず、そのまま受け入れた。


「そっか、そっか~。

私は嫌いにならないよ~だって、リアンくんは格好いいもん~踊って歌えて演技も出来て…他にも色々と凄いとこあるじゃん~

それは、君の今まで積み重ねたものでしょ~?


だから、好きだよ。」


鶴美が最後にそういうと、リアンは窒息死させるかの如く、強く強く抱き締めた。


愛しいとばかりに、これが欲しかったのだと、ばかりに、強く強く抱き締める。


「苦しいよ~。あ、仲直りついでに、何か作るよ~カレーとハンバーグ、どっちがいい~?」


「カレー」


「分かった~だから、一旦離れて~」


「やだ」


「も~」


困ったように、鶴美は笑って、抱き締められたままでニコニコと笑う。


完璧に近くて凄い。

けれど、脆くて弱くて子供っぽくて泣き虫な彼を……


ニコニコと、彼女は笑顔で受け入れるのであった。

鶴美

バカ。酷くバカ。

バカだが、本能的にリアンの扱いを心得ており、無自覚ながらも、リアンの本命で本妻のポジションにいる。


リアン

世界中で活躍している俳優&実業家

最初は暇潰しとして、鶴美といたが、気が付けば深みに嵌まっていた。沢山の女性と付き合っているが、本命は鶴美。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回は、ハッピーエンドぽいのでうれしい。 キチンとリアンは鶴美のことが好きでよかったし、リアンがなにかと可愛らしい面があるので好感度が高い! [気になる点] 前作から名前が古いから大正とか…
[一言] 態度も言葉も軽い。 こういう主人公を量産してほしい。
[良い点] 久しぶりに感想書きま~す! 良い点は、すべてです。(笑) 本当に素晴らしい作品ですよ! 女性目線なのに、男子高校生の私が楽しめるのですから。 完成度も、これまでの黛さんの作品で一番高いので…
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