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変わり者の物語  作者: あなぐま
第4章 道の先
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第44話 紅蓮の炎

 鋭い槍の一刺しを、大剣が弾いて火花が散る。

 レイは更に槍を振るい続けた。


 レイは護衛だった三人のカドムをあっという間に倒し、僕には残像にしか見えない攻撃を矢継ぎ早に撃ち込んでいる。ヴォルフは座ったまま全てを打ち落としていた。始めて見る魔族同士の戦いは僕の想像を超えていた。あれに援護なんてとんでもない。近付くどころか、飛び散る火花に触れただけで体が灰になりそうだ。


 でもそれは周囲を囲む黒の兵達にしても同じ筈だ。

 だからこそ、目下の標的はこの僕なんだろう。

 好都合だ。彼等にはレイが決着をつけるまで付き合って貰う。


「どこに行った!」

「逃がすな! 殺せ!」


 ガラガラと低い音で大勢の兵が声を掛け合っている。上位種であるカドムはともかく、彼等カドモスが言葉を使うのは初めて聞いた。でもその判断は正しい。僕の手品は、早々に種が割れたみたいだ。


 でも、種が割れても防ぐ手段はない。

 僕は剣を振るい、周囲の兵を背後から斬り捨てた。


「そこか!」


 すぐに気付かれた。カドモスの姿で集団に紛れていた僕に、一瞬で全方向から視線が集まる。慌てて再び姿を変えた。間一髪で羽虫に変わり、四方から振り下ろされた剣は僕を捉えられず空振りした。でもこの混戦で、この薄闇。消えたようにしか見えないだろう。ネズミの姿で兵達の足元を逃げ回り、そして再び兵の姿で紛れた。


 カドモス。

 彼等に固有の名前はない。

 同じ種族が、同じ装備で、同じ目的の下に動いている。


 軍隊としては正しい姿なんだろう。フェルディアにいた役人達だって似たようなものだ。彼等はいわば統率性の代わりに個性を失った、ある意味での顔の無い男達。集団戦なら最強だ。でも変わり者が相手となると、数の力は弱点にしかならない。


 兵が互いを疑い、動揺し始める。それを見て僕は更に姿を変えた。

 闇に溶ける黒い鱗に覆われた、大柄なドラゴン。

 大きく息を吸い込み、咆哮を上げた。


「なんだ、こいつは……!」


 尾を振るい、爪を振るい、動揺した彼等を散々に蹴散らしてから姿を消す。再び紛れられたと知ったカドモス達は遂に同士討ちを始めた。


 団結が弱まったところを外から襲い。

 再び団結し始めたところで内から崩す。

 僕は、まるで悪夢だな。


 でもそうも言っていられない。本命はあくまでレイの方だ。


 彼女は苦戦していた。槍が一度もヴォルフに当たっていない。鞘に収まったままの黒鉄の剣で全て弾かれていた。どうなんだろう。本当にヴォルフが不死身なら防ぐ必要すらないはず。それを防いでいるという事は、槍の力は本物なんだろうか。それともただ弄んでいるだけなんだろうか。


 ヴォルフ。あいつを倒せば全てが終わるんだ。これ以上戦わなくていいんだ。

 僕が援護に入っても、何も出来ないのかも知れない。

 でも何でもいい、何かないだろうか。

 僕でも、あいつに何か。


「っ……!」


 体が竦んだ。

 ヴォルフがこちらを見ている。

 こんなに離れていても見られているのが分かった。


 漠然と僕がいる方向を見ている訳じゃない。この夥しい数の兵の中から、僕だけを見分けて睨んできている。やっぱり、ヴォルフには僕の変身が見破られている。見分ける方法なんてない筈だ。でも、敵意を向けた途端にこれだ。


「まさか……」


 心を読まれてるのか。


 でも、そんな事をされたら何も出来ない。奇襲なんて不可能だ。まさかレイが苦戦しているのはそういう事なのか? 一瞬注意を向けた僕ですらこれだ。ましてあの至近距離で、あれだけの敵意をぶつけているレイの動きは完全に見切られている筈だ。


 ……いや、やめよう。

 ここで僕が黒の兵に突破されたら、レイが挟み撃ちになる。


 僕は任せてと言って、彼女は任せると言った。なら今は自分の戦いに集中する。彼女は全てを背負ってここまで来た。ようやく、ここまで来たんだ。その最後の戦いだけは誰にも邪魔させない。それこそが僕の役割。僕がここまで来て、僕がここにいる意味なんだから。



***



 黒の平原での決戦は拮抗していた。


 同盟軍の動きに精細さが戻り、何倍もの数を誇る魔族軍を攪乱し続けている。そして押される一方だった戦線を徐々に押し返し始めていた。


 対する魔族軍は乱れ切っていた。総司令である魔族が討たれたという話も風に紛れて聞こえてくる。そしてその奇跡的な反撃の報は、前線から離れた同盟軍本陣にまで届いていた。トロールに蹂躙されるばかりだった兵達が巻き返し、一際厄介だったパイプのトロールも灰色の魔術師が単身で引き付けている。


「ふはははは! どうした! もっと攻めて来んか!」


 パイプは巨大な剣を振り回して迫ってくる。魔術師は機敏な動きでそれを躱し、なおかつ自分を囮に注意を逸らさせない。綱渡りのような戦い方だ。


「そろそろですね」


 だが自身の限界だけは見誤らない。

 煙幕を張り、逃げる。

 何も卑怯ではない。陽動が潰れては本命も終わりなのだ。


 魔術師は足音を消しながら煙を縫って走る。そして山と積もった瓦礫と残骸の裏に転がりこんだ。


 そこには既に多くの先客がいた。トロールの目を逃れたここは簡易の避難所のようになっている。装備や資材が集められ、動けなくなった者達が手当てを受けていた。そして今や司令官となった赤毛の少女が、冬の球を通して軍全体を指揮し続けている。


「状況は。何か突破口は見つかりそうですか?」

「無い。だがさっきよりかは大分マシだ。後はあの子さえ守れれば」


 マキノは兵の一人と手早く打ち合わせた。すぐに戻らなければ蜘蛛は再びメイルを探し始める。そして蜘蛛の前から姿を消すのはこれで二度目。休憩は次で最後。早々に蜘蛛を倒す算段を付けなければならない。マキノは腰を下ろした。


 あのパイプのトロールは、倒れない。

 指輪の従者であるトロールの死体を、蜘蛛が無理矢理動かしているのだ。


 レイの指輪を拾った当初は、クライムも似たような状況だった。あのお姫様を何とかクライムから引き剥がそうと、当時はマキノも散々調べたものだ。今となっては懐かしいが、蜘蛛の指輪はレイの指輪より数段厄介だった。


「まるで、意地悪な謎々を出されている気分ですね」


 出題文は同じなのに、傾向も解法も全くの別物なのだ。

 時間はない。マキノは必死に頭を働かせる。


 倒す方法は三つ。蜘蛛本人を倒す事、指輪を破壊する事、動かなくなるまでトロールを破壊する事。二つ目が一番手っ取り早い。要はクライムの時と同じだ。肝心の指輪が見当たらないが、恐らくトロールの体内に埋まっているのだろう。つまりあの巨体から小さな指輪を見つけ出し、それを的確に抉り出す必要がある。


 しかしその力がない。まったく、「魔法の無効化」など反則だ。これだから魔法使いは嫌いなのだ。上等である。連中が起こす奇跡など理屈で解体し、地に墜として踏み躙ってくれる。


 手品には種があり、奇跡にも法則がある。法則、例えば効果範囲。蜘蛛が使う無効化は、本人を中心に範囲的に作用している。そう、離れれば魔法は使える。


 ならば遠距離から撃てば当たるだろうか。

 当たらない、範囲内に入った途端に霧散する。

 では魔法以外の手段なら有効打が得られるだろうか。

 もう試した、通じない。

 しかし無効化自体も魔法のはず、本人の近くに空白地帯があるのだろうか。

 論外だ。無効化は定義効果でなく発射効果、空白など理論上存在しない。

 それなら……。


「時間切れです」


 思考し続ける自分をマキノは戒めた。突破口は戦いながら見つけるしかない。兵から新しい剣を受け取り、腰を上げた。周囲を彷徨くトロールはこちらに気付いていない。今の内に静かに忍び寄り、再び仕掛ける。


 耳障りな絶叫が聞こえたのは、マキノが一歩踏み出そうとした、丁度その時だった。


「痛い! 痛い! くそ、何だこれは!」


 マキノの胃がひっくり返った。トロール達が一斉こちらを振り返って血の気が引く。思わずマキノも振り返ると、ここに避難所があると大声で宣伝している馬鹿は冬の魔法使いだった。気絶していれば良いものを、目を覚ましたのだ。


「冬の方! お願いです! 声を抑えて!」

「私に触るな! あのケダモノめが! 殺してやる!」


 こちらの台詞だ。既に声に気付いたトロール達が猛然と走ってきているが、せめてこれ以上面倒事を起こされる前に始末をつけてくれようか。


 兵士達が群がって冬を押さえ、口に布を詰めようとする。冬はそれでも人間離れした力でそれに抗っていた。そして倒れたまま、右手で地面をまさぐっている。


「くそ、杖は! 私の杖はどこだ! 杖さえあれば……!」

「彼等を殺しますか? 心配せずともあなたの杖は壊された。これで私と同じ、忌むべき杖無の魔法使いという訳ですね」


 マキノがつい悪態をつくと、冬は叫びながらますます暴れた。だが杖のない冬にはもう魔法が使えない。その間もトロール達がどんどん近づいてくる。蜘蛛もすぐに来るだろう。


 避難していた兵達の頭は防衛から撤退に切り替わった。少女と、氷の球と、戦場の地図。これさえあれば指揮に支障はない。彼女を抱えて逃げ回るのだ。負傷兵と冬はここに置いていくしかない。時間はない。すぐに動く。人手がいる。


「魔術師! お前も……!」


 そしてマキノに協力を仰ごうとして、言葉を飲み込んだ。マキノは今までにない険しい顔で、喚き続ける冬を睨みつけていた。そこにあの胡散臭い笑顔はない。何を考えているのだろう。何か考えがあるのだろうか。一発逆転の秘策が。


「あなたは、本当に、どうしようもない男ですね」


 そんな周囲の期待に反して、マキノの口から出たのは、悪態の続きだった。


「これでも私は、あなたを認めているつもりでした。あなたに勝る魔法使いはいなかった。知識に深く、着眼は鋭く、創造性もある。一種の目標として捉えていた事もありました。気に食わないからこそ、せめて劣るまいと。しかし……」


 深く、深く、ため息をつく。


「蓋を開ければこの程度です。私は、自分が恥ずかしい。あなたのどこに認める所があったのでしょう。はっきり言って見るに堪えない」

「なんだとこの杖無しが! 貴様こそ魔術師を名乗る事すらおこがましい! いや、人間と口を利く事すら許されん野良犬だ! 目障りだ、今すぐ消えろ!」


 それは今する話だろうか。呆気に取られる兵を振り払い、冬は折れた足を庇いながらマキノににじり寄る。


「本当に視野の狭い男ですね。人同士の関係を、上下でしか測れない」


 マキノは虫けらでも見るような目で、冬を見下ろした。

 そしてぽつりと言葉を続ける。

 それが冬の逆鱗に触れた。


「だから、実の妹の事にも気付けないんです」


 冬が止まった。

 唇をわななかせて、マキノを見上げる。


「なん、だと……。私が、何に気付いていないと……」

「何に? さて何でしょうね。工房から出て妹君に会えば、すぐに気付くでしょうが」

「はぐらかすな! 貴様、妹に! 氷雨の魔法使いに何をした!」

「気になるんですか? しかし宮殿では既に周知の事実ですし、王の承認を得て手続きも済ませました。後は私と彼女の問題です。戦争が終われば私達は二人でこの国を離れますし、そうだ。あなたも姪の顔くらい一度は見ておいた方が……」

「おのれ!」


 冬が立ち上がってマキノを殴り飛ばした。折れた脚のまま、痛みも意に介さない様子で肩を怒らせている。兵達もメイルも、この窮地にあって尚いがみ合い続ける二人の男に、空いた口が塞がらない様子だった。


「やはりか、やはりそう言う事か! 初めて会った時から気に食わなかったのだ! だが氷雨が目をかけ、工房に所属した貴様を、始末する事など出来なかった! 間違っていたとも! 貴様は一日でも生かしておく事は許されなかったのだ!」


 そのまま、冬は宙を掴むような仕草をした。

 周囲が、急激に冷え始める。


 吐く息が白くなり、地面に霜が降り、風に乗った氷の粒が光を反射してキラキラと輝いた。それが冬の右手に集まっていく。幻想的な光景だった。氷の粒は宙に呪文を綴り、魔法陣を形作り、次第に冬の手に、流れてきた粒が集まって氷の杖が形作られていく。


「素晴らしい……」


 鬼の形相で自分を睨みつける冬も気にせず、マキノはその魔法に目を奪われていた。まるで時間が巻き戻っているかのように魔法使いの杖が修復されていく。そして杖が形を成すと同時に冬の力も蘇る。折れた脚が氷で繋ぎ合わされ、破れていた衣裳が綴り直され、フワリとその場に浮く。


 杖が完璧に修復されると同時にマキノは逃げ出し、冬は杖を振り下ろした。


「死ね!」


 復活を果たした冬の一撃は、巨大な氷塊となって叩き落された。マキノはそれを回避し、代わりにすぐ傍まで来ていたトロールが直撃を食らう。それを見てトロール達は冬に向かって一斉に襲い掛かった。冬は忌々しそうに歯噛みした。その周囲に次々と氷の武器が生成され、地面からは氷の甲冑が何体も湧き出してくる。


「どいつも……、こいつも……! 殺してやる! この場にいる全員、皆殺しだ!」


 武器が放たれ、甲冑が走り、兵達が我先へと逃げ出した。皆殺しにされては堪らない。第一の標的となったマキノはトロールを巻き添えにできるように走り回り、そして冬の死角を掻い潜ってメイルを拾った。


「何とかなりましたね。ご無事ですか?」

「無事だけど、え? マキノって冬の妹と、あれ?」


 氷の球と地図を抱えながら、メイルは顔を真っ赤にしていた。

 そんなメイルを片手で抱えながら、マキノは苦笑する。


「本気にしないで下さい。あの男を怒らせる為に出まかせを言いました」

「そ、そうなの? でもボク、実はマキノと氷雨の魔法使いが一緒にいるの、見た事があって、その……」


 真っ赤になったままメイルが言葉を濁らせる。さていつの事を言っているのか。そして邪推を極めた冬はともかく、この少女は男女の仲にどんな想像を膨らませているのだろう。非常に興味深い。


「個人的な付き合いがあるのは否定しませんよ。根も葉もない嘘なんて通じませんから」

「そっか。あの、ごめん、ボク、てっきり……」

「勘弁して下さい。そんな簡単な話なら苦労はないんです。本当に、私がどれだけ……」


 走りながら、彼女の冷ややかな目が頭に浮かぶ。

 その彼女から言われたのだ、少しはメイルの事を見習えと。


 まったくだ。この少女は嘘偽りなく、ありのままの自分を晒して同盟軍の信頼を勝ち取った。対して自分は心の傷に付け入るような方法しか思いつかず、躊躇なく実行した。この少女には、自分や冬のような大人にはなって欲しくないものである。


「死ね! 死ね! 死ね!」


 頭の足りない悪態と共に、大魔法を乱発し敵を蹴散らす冬の魔法使い。なんとも痛々しいが、蜘蛛の効力の範囲外であればこの魔法使いに負けはないだろう。もっともこのまま蜘蛛の接近を許し、範囲内に入られれば元の木阿弥だ。どれだけの魔法使いだろうと、あの蜘蛛の前ではただの人間と同じなのだから。


「……おや?」


 急にマキノは足を止めた。


 辺りでは冬の怒りが無差別に巻き散らかせ、人も魔物も逃げ惑う阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。マキノもすぐに離れなければならない。だが今、何かに気付いた。メイルが不安そうに見上げると、マキノは呆けた顔で固まっている。


 そしてすぐに、それはそれは悪い顔で笑った。


「……ああ、なんだ。そういう事でしたか」



***



 蜘蛛はパイプに新しい草を詰めながらのんびりと歩いていた。見つけ出した兵の残党がトロール達に囲まれているが、今やその全員が氷の雨に晒されて訳の分からない事になっている。とは言え蜘蛛本人が来たならばそこまでだ。すぐに終わらせようと、蜘蛛はパイプに火をつけ、大きく息を吸い込む。


 そこへポンと小石が飛んできた。


 土煙の向こうから、投げ渡されるように飛んできた小石。蜘蛛は咄嗟にそれを掴み、目の前に掲げて訝し気に凝視する。


 それが突然、内側から爆発した。


 持っていた右手が滅茶苦茶に傷つき、破片が掠って顔が裂けた。弾ける一瞬、確かに感じた。あの石には魔法が宿っていた。蜘蛛の無効化の範囲内でだ。失くした玩具を見つけた子供のように蜘蛛の口角が上がる。あの男が戻ってきた。


 それを証明するように、大きな軌跡を描いて次々と小石が飛んできた。

 十や二十では効かない。とんでもない数だ。


「くくっ! まだ愉しませるか!」


 大斧を振るってそれを払う。小石は次々と弾けて蜘蛛を襲うが、最早トロールの体からは血の一滴も流れない。構わず前へ迫り、魔術師を潰そうと武器を握る。


 だが、そこにいたのは赤毛の少女の方だった。腕一杯に魔法を込め終わった小石を抱えている。その泥だらけの手を見て思い出した。地中の賢者は素手で穴を掘る地下の種族。腕の力なら人間以上。投擲など得意分野。つまり。


「囮か」


 土煙を破って、横から灰色の魔術師が飛び込んできた。地面を蹴って蜘蛛の顔へ手を伸ばす。直前に気付いた蜘蛛はそれを避けた。反撃に振るった拳が魔術師を吹き飛ばす。骨をも砕く重い一撃を受けて魔術師は地面を転がり、だが平気な顔で立ち上がる。その手に持っていた物を見て蜘蛛は笑みをこぼした。


「手癖の悪い奴よ」

「滅相もない。少しお借りしただけです」


 マキノが右手に持っていたのは、蜘蛛が咥えていたパイプだった。


「それにしても魔物を相手に体を張るとは、貴様やはり魔術師とは思えんな」

「昔取った杵柄という奴です。当時も結局は惨敗し、今もこの有様。褒められた物でもありませんが」

「くく、抜かせ小僧。勝機ありと見てこそ挑んできたのだろうが。気付いたのだろう?」

「ええ。すっかり騙されましたよ」


 マキノはパイプをくるくると弄びながら、間合いを測るように蜘蛛の周囲を歩き出した。


「魔法の無効化。見せつけられた時は驚きましたよ。魔族の実力は聞いていましたから、あなたなら机上の空論さえ実現できるのだと、己を納得させるしかありませんでした。でもあなたの力は、厳密に言えば魔法の無効化ではない。このパイプですね?」

「正解だ。魔術師」


 マキノは落としたパイプを踏み潰し、その煙を完全に止めた。

 答え合わせをするように言葉を続ける。


「杖を壊された冬は随分と小気味い目に遭っていましたが、トロールに殴られれば普通の人間は粉微塵です。しかし彼は自分の体を内から魔法で強めていたから無事だった。その魔法は無効化されなかった。何故か。あなたの無効化は、このパイプの煙に触れた魔法のみを散らすものだからです」


 パイプの残骸を蹴散らして、マキノは再び歩き始める。


「冬は普段から無意識に使っていたから気付かなかったのでしょうが、要は煙に触れさえしなければ、私達の魔法も有効という事になる」

「それで貴様も己が体を強めておる訳か。くく、満点だ」

「体の中に魔法を通す術は、つい先日友人に教わった所です。外部に魔法を発するのではなく、内部に魔法で干渉する。そう考えれば打てる手も多い」


 砕けた腕さえ動かして見せるテルルの身体強化の魔法。冬の魔法も同種であり、蜘蛛の指輪もそうだろう。小石の中に熱を生み出し、即席の炸裂玉にしたのもその応用だ。


「パイプを奪っても滞留した煙は消せませんが、これでようやく五分。早々に決着をつけさせて貰います」

「ほう。では分かったのか? このトロールのどこに指輪があるか」

「さてどうでしょう」


 マキノは足を止め、その場にあった大槍を拾い上げ、握り込んだ。


「すぐに分かります」


 その言葉と共に武器に魔法が流れ込む。

 赤熱して煙を吹き、先端が伸びて鋭く尖った。


「ほう」


 蜘蛛は軽い感動を覚えていた。ただ一撃の為に極限まで強化された大槍。闇小人が鍛えたボルフォドールの槍を思い出させる。使えば間違いなく砕けるが、代わりに易々とこの体を貫き、その矛先は間違いなく指輪を正確に突いてくるだろう。


 弾く事も躱すことも容易い。

 だが今の彼なら人間の限界を超えて動きかねない。

 ならば、迎え撃つまで。


「行きます!!」


 マキノが地面を蹴った。


 槍を構えて真っ直ぐ突っ込んでくる魔術師。下手に捌けば此方の斧が砕けるだろう。だから、蜘蛛は大斧を振り上げ、小細工諸共全てをまとめて叩き潰しにかかった。魔術師が肉弾戦など挑んできたツケだ。小手先の悪足掻きでは覆せない現実を知るがいい。蜘蛛が力強く一歩踏み込む。


「っ!?」


 だがそこで踏み込んだ足が。

 地面を、踏み抜いた。


 ガクンと蜘蛛の体勢が崩れる。右足が完全に穴に嵌っていた。今更になって赤毛の少女の手が汚れていた事を思い出した。もう笑うしかない。この期に及んで、落とし穴とは。


「くくっ、卑怯な」

「滅相もない」


 マキノは走りながらポイと槍を投げ捨てた。所詮は蜘蛛の注意を足元から逸らすための虚仮脅し。そして指輪の位置を掴んだというのもハッタリだ。


「宝探しに付き合う気などありません」


 勢いそのままトロールの傷口に手刀を突っ込み、内部の魔法に干渉する。クライムからレイの指輪を引き剥がす際、最初に思いついた方法だった。加減を間違えればどうなるか分かっていた為お蔵入りとなったが、それでも一度くらい試してみたかったのは、内緒だ。


 そして今は加減する必要もない。魔族の指輪。散々見てきた従者を操るその魔法を出鱈目に増幅、暴走させる。耐え切れなくなったトロールの体が、ぼこりと膨らんだ。


「これなら、どこにあろうが関係ない!」


 トロールの体が、内側から爆散した。衝撃と共に千切れた破片が四方に飛び散り、巻き添えを食ったマキノも盛大に吹っ飛ばされた。無様にも地面に突っ込み、遅れて飛んできた鎧の欠片で頭を打つ。


 爆発の余韻が空気に溶け、煙が徐々に晴れていく。

 マキノは痛む体を起こして、ため息交じりに荒い息を吐いた。

 とんでもないゴリ押しだったが、なんとか倒したようだ。


「……それにしても」


 辺りに散らばるのはバラバラになったトロールの破片。

 指輪が壊れるなり体から抜けるなりすれば御の字だったのだが、これは酷い。


「やはりこの方法は、クライムさんに試さなくて正解だったようですね……」


 当の本人がここにいれば、真っ青になりながら当たり前だと喚いていただろう。レイの方は、どうだろう。案外あのワクワクした調子で乗って来るかも知れない。


「マキノ! 大丈夫!?」


 爆発に気付いてメイルが駆け寄ってきた。マキノは座り込んだまま返事をしようとして、代わりに口元を押さえる。魔法を体に通し過ぎた。次の瞬間盛大に吐血し、しかし吐いた分を残さず飲み込む。心配をかけないようにと思ったのだ。だがメイルは泣きそうな顔で隣に座った。ばれている。


「マキノ、もう休んで。これ以上、無茶しないで」

「……敵いませんね。でも大丈夫です。後、少しですから」


 マキノはメイルの手を借りながら再び立ち上がった。目の前のトロールは倒したが、相手は蜘蛛だ。この油断した瞬間を狙って、別の蟲傀儡が襲って来ないとも限らない。蜘蛛には、それだけの余裕があった。


「……」


 マキノはトロールの残骸を見下ろす。


 体は見る影もなくバラバラで、胸から上が辛うじて形を残している。よく見れば左肩の傷から銀の指輪が見えていた。抉り出して破壊しようかとも思ったが、既に指輪にはヒビが入り、蜘蛛の魔法も消えかかっていた。だがその顔は、おぞましい笑みを浮かべたままだった。


「まだ、聞こえていますね。ご感想は?」

「ふ、ふふふ。そうだな。愉しかったとも」


 蜘蛛の態度は変わらない。真面目に戦っていないのも分かっていた。だからこそ、終始余裕の表情でいたのも当然だ。


 だが、それだけではない気がした。

 胸騒ぎがする。


「……最後。気を抜きましたね」


 嫌な予感のままに、マキノは倒れる蜘蛛に訊いた。

 大勢の兵士が戦う音も、魔物達の唸り声も、今は遠くに聞こえる。


「あの時、あなたが気を抜く要素はなかった筈です。本気でないから諦めもしない。つまりあの瞬間に気を抜いたのは、あなたではない」


 マキノの言葉を、メイルは理解できない。

 肩を貸しながら、不安そうにマキノを見ていた。


「あなたは複数の体に別個に固まる事で、世界各地で暗躍してきた。ここでも同じ筈です。私の前にいるあなたの他にも、何人もの蜘蛛が戦場に散っていた。そして当然、黒の城にも。レイさんとクライムさんを、殺したのですか」


 質問したところで真面目に答える筈もない。

 それでもマキノは訊かずにはいられなかった。

 そして蜘蛛は、不気味に笑うばかりだった。


「く、くくく」


 その笑いがマキノの心を搔き乱す。

 大事な何かを見落としている気がした。


 蜘蛛は何人にでも体を分けられる。人数の上限は分からない。だがその利点を最大限に活かすとしたら、表で派手に暴れておいて、裏から隠れて頭を叩く。つまりは陽動だ。実際そうやってレイとクライムの下にも手が及んでいるだろう。


 だが、それだけなのか。

 倒されてなお、不敵極まるこの笑み。

 大事な何かを見落としている気がした。

 この決戦において、最も致命的となるのは、何だったか。


「……しまった」


 すぐに思い至った。

 蜘蛛の笑いが、それを証明している。

 だが手遅れだ。余りにも遅すぎた。


 指輪が砕け、事切れる直前、蜘蛛はマキノを見て、嗤った。




「勝った」



***



 鎖が砕ける音がした。


 それは戦場の兵達に留まらず、この大地のあらゆる者達に同時に聞こえていた。


 大事な何かが失われたのが感じられた。砕けたのはただの鎖ではない。まるで世界を支える柱の一つが折れたような感覚だった。実際に失われたのは、五百年前からこの地に根付く古代の魔法。八人の魔法使いが各々起点となる神殿を築いて施した、命綱となる封印。


 魔王を縛る、最後の枷だった。



***



 バラバラと鎖の破片が落ちる中で。

 ゆらりと、ヴォルフが立ち上がった。


 僕の耳にも、レイの耳にも、この場にいる全ての衛兵達にもそれは聞こえていた。


 背筋が凍る。

 レイが咄嗟に距離を取った。

 今までヴォルフを縛り付けていた鎖が、全て弾け飛んでいた。


「待たせて、くれたな。モーリス」


 低く、深く、ざらざらとした声が謁見の間に響いた。

 五百年ぶりに立ち上がったヴォルフが、僕とレイを捉えていた。


 心臓が早鐘を打っていた。嫌な汗が全身から出ている。ヴォルフは、動けない筈だったんだ。彼を縛る封印の最後の一つは同盟軍が守っていて、僕らは首の皮一枚の所で間に合って、この決戦にまで持ち込んでいた筈だったんだ。


 それが突然砕けた。

 理由は分からない。

 分からないけど、現にヴォルフは立っている。

 そして赤い目で僕らを睨みつけたまま、大きく、大きく口を開けた。


「っ……!」


 その口腔からは、熱の赤い光が漏れ始めている。

 顎を無理やりこじ開け、頬が裂けて亀裂のような口が開かれていく。

 その奥からは噴火前の火口のように、紅蓮の炎が噴き出てきていた。


 僕は、僕達はこれを知っている。かつてモラルタの街で見た、岩のドラゴンが炎を吐く直前の予備動作。街を滅ぼし、森を焼き払い、湖さえ消滅させる、あの一撃。あれが来るのか。今、ここで。


「させるかああ!!」

「レイ!」


 レイが槍を振り上げて突っ込んだ。ヴォルフの口からはいつ炎が撃たれても不思議はない。明らかに間に合わない距離、間に合わない速度なのにレイは走り出してしまった。


 無理だ。

 何が起きているのか分からない。

 でも、このままだとレイが死ぬ。


 そう考えた後の僕の動きは、速かったと思う。

 戦っていた衛兵達を蹴散らして走った。

 翼を生やして、獣の脚を作って、考え着く限りの方法を取って走った。

 ヴォルフの口に炎が集まる。レイが前を走っている。全てがゆっくり見えているようだ。


 でも彼女だけは守りたい。

 その為に僕はここに来たんだ。

 今度こそ僕は、大事な仲間を守ってみせる。


 そして遂に、僕の手がレイに届いた。最後に一度地面を強く蹴り、レイを横へ押しのける。振り返ったレイと目が合った。逆光でどんな表情かはよく見えない。でも僕はただ、最後に触れたレイの背中が暖かくて、ただそれだけが嬉しかった。間に合った。間に合ったんだ。



 眩い光が、放たれた。



 一瞬激しい熱さを感じて、すぐに感覚がなくなる。

 目の前が真っ白になって何も見えなくなった。

 いや、何か、見える。

 見えている筈もないのに、光の向こうに何かが見えた。


 それは、僕の故郷だった。ケプセネイアの村、涙が出るほど懐かしい景色だ。そこにはみんながいた。父さんも、オデオンも、キアランも、何もかもが昔のままだった。


 みんな、こんな所にいたのか。

 ずっとずっと、探していたんだ。

 探して、探して、探し続けていた。

 無理だと分かっていても、諦められなかった。


 そして、その光の更に向こうに誰かの影が見えた。サラだ。幻覚なんかじゃない。確かにそこに、必死に手を伸ばす髪の長い女性の影が見えていた。


 その手を取る事を、どれだけ待ったか。炎の塔から落ちる彼女を、僕は必死に助けようとして、彼女も確かに手を伸ばしてくれていて。そして今、ようやく掴める。何から伝えよう。何から話せばいい。あの星空の丘の話の続きがしたい。落ちる彼女が何て言おうとしたか、その続きが聞きたい。


 ああ。


 僕は……。


 これで、ようやく……。




「クライム!! いやああぁ!!」



***



 炎の一撃は巨大な黒の城、その頂上を吹き飛ばして空を焦がした。


 世界を赤々と染める紅蓮の炎を、同盟軍も、魔族軍も、魅入られているかのように見ていた。戦場が止まっていた。誰もが目を奪われていたのだ。そしてその圧倒的な炎は止まるどころか増々強まり、徐々に、その目標を空から地上へと移していく。


 暗雲が掻き消され、空を飛ぶ鳥達が灰になり、遠くに見える山の頂上を吹き飛ばし、その山肌を舐めるようにして麓にまで射線が下がる。


 未だ激戦の続く砦の街、アストリアス。

 アレクは頭上に迫る炎の渦を見て、すぐに戦闘を中断した。

 見れば既にフェンリルの姿はない。つまりここも、炎に呑まれる。


「逃げろお前ら! リューロン! 抱えるだけ抱えて、走れ!」


 遥か遠くから放たれている炎は延々と空気を焼き続け、障害物の丘を消滅させ、そして街を端から順に呑み込み始めた。尖塔が消え、城壁が無くなり、街が一直線に削られていく。アレクは必死に足を動かしたが、後ろから走ってきたリューロンがそれを咥えて街を疾走した。



***



「メイルさん! 掴まって!」


 マキノがいたのは、完全に炎の射線上だった。防ぐ手段はない。酷使し尽くした体を更に酷使し、なりふり構わず体中に魔法を通して走り続けた。メイルは悲鳴をあげながらマキノにしがみ付く。


 頭上から地獄が迫り、視界の端から炎が迫る。それはそのまま瓦礫となった本陣を呑み込み、トロールの死体を呑み込み、そして逃げる二人に迫っていった。



***



 同盟軍本陣に直撃した炎を見て、ウィルは身が凍る思いだった。だが考えている暇はない。炎は戦場を着実に縦断し、こちらにも迫っている。


 その周囲で戦っていた騎士達もカドム達も同時に動き出す。己が主の復活を悟り、歓喜の表情で炎を受け入れるカドムもいた。山猫のディグノーを斃したカドム・ロアも同じ気分だったが、彼にはまだやるべき事がある。死体に背を向け、翼を生やして飛び立った。


「待てよ……!」


 その足を、掴まれた。


 掴んでいたのは、ディグノーだった。既に右腕を失い、胸から心臓を貫く三本もの剣を生やしたまま、それでも獰猛な表情で目を輝かせている。


「どこへ行く。まだ、俺は負けてねぇぞ……!」


 歯を剥き出して笑うその顔には正気と狂気が両立していた。

 体に刻まれた禁術の刺青は戦士の証。

 戦いとは勝負。勝ち負けとは生死。

 我が人生は戦いそのもの。

 それこそが一族の誇りであり。

 怒りの精霊との契約をその身に刻んだ、我が全て。


「この、狂戦士め!」


 ロアは剣を抜いてそれに斬りかかり、ディグノーは笑いながらそれを迎え撃つ。

 そして二人の剣が交わる直前、全てが眩い光に呑まれた。



***



 謁見の間が丸ごとなくなり、朦々と煙を吹く黒の城。

 その煙を突き破って、二人の魔族が姿を現した。


 一人は水鳥の翼を生やしたレイ。

 一人は竜の翼を生やしたヴォルフ。

 二人は翼で一度空気を掻き、一気に近づいて打ちかかった。


「よくも!!」


 レイは泣きながら槍を振るった。激情に任せた力づくの攻撃だ。ヴォルフが槍を躱し、外れた切っ先が大きな塔を粉砕する。城が、橋が、薙ぎ払われるように破壊されていった。だがヴォルフ本人には掠りもしない。


「繊細さの欠片もない。鈍ったな、レイ」


 五百年ぶりに体を動かしたとは思えない軽やかさで、ヴォルフは黒の城上空を飛び回っている。レイは完全に翻弄されていた。急接近して打ちかかっても素手で叩き落とされ、城の外壁に追い詰めて撃ち込んでも余裕でそれを受け止められた。


 だがレイは手を緩めない。

 もう後には退けない。

 これ以上、何も奪わせない。


 思いつめれば思いつめるほど動きが単調になるのも分かっていた。それでも止まらなかった。最後に自分を見た、ほっとした表情のクライムの顔が頭から離れない。倒さなければならないのだ。何が何でも。何としても。


「くそ! くそ!」


 渾身の一撃を手刀で叩き落され、レイは空中で大きく体勢を崩す。そして錐揉みしながらも城に足をつき、再び体勢を整える。レイがヴォルフから目を離したのは一瞬だった。だが。


「敵から目を離すなと、教えただろう」


 その一瞬の隙に、ヴォルフは腰の剣に手をかけていた。

 そして鎖に邪魔される事もなく、何に阻まれる事もなく、抜き放たれる。


 黒い柄、黒い鍔、黒い剣身。

 黒鉄の剣、アルノダイト。

 かつて闇小人の鍛冶師に打たせた、世界最強の剣。


「っ……!」

 

 レイの全身が総毛立つ。鞘から解放され、再び世界にその身を晒した剣は歓喜に震えているようだった。空気に触れた瞬間黒い炎を噴き出した剣を、ヴォルフがゆっくりと振り上げる。レイはその威力を十二分に知っていながら、咄嗟に防御の構えを取ってしまった。


 そして世界を縦に割る、魔王の一撃が振り下ろされる。

 不死殺しの槍が真っ二つに砕けた。

 レイは何も分からないままそれに呑まれる。


 漆黒の一撃は巨大な黒の城を易々と砕き、一気に地面にまで到達して地の底まで貫いた。一瞬遅れて城が爆散し、巨大な瓦礫が四方に飛び散った。地下の製鉄所が衝撃で吹き飛び、赤々とした溶鉄が噴出する。そこにあるとも知らなかった火山が、一気に噴火したようだった。


 戦場は大混乱だった。瓦礫が部隊を丸ごと押し潰し、溶鉄が陣形を丸ごと呑み込んでいく。まるで世界の終わりだ。


 未だ炎の残る剣を手に、竜の翼を生やした男がゆっくりと空から降りてくる。先の一撃で夥しい数の巻き添えがありながらも、黒の軍は歓声と共にそれを迎え入れた。列を作って道を開け、槍で地をついて王の帰還を世界に鼓舞する。


 魔王が、戦場に降り立った。



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