夏の夜に、蛍が
星がきれいな夏の夜に 淡い光が ひとつ
「あれはおじいさんだよ」と おばあさんは言いました
生まれた時から いなかったおじいさんが
今 蛍になって
お前に「はじめまして」と言いにきたのだと
暗くしずかな夏の夜に 寂しい光が ひとつ
「あれはおばあさんだよ」と おとうさんは言いました
今年の春に いなくなったおばあさんが
今 蛍になって
おじいさんの姿を探しているのだと
月のまあるい夏の夜に 優しい光が ふたつ
「おじいさんとおばあさんだよ」と おとうさんは言いました
ずぅっと前に 離れ離れになったふたりが
今 蛍になって
何十年もの時を超えて やっと会えたのだと
幸せそうに寄り添いながら
揃ってお前に 会いにきたのだと
ちかちか光り 呼び合うふたりに
わたしは笑いかけました
ふわふわ飛んで 消えていくふたりに
わたしは語りかけました
会いにきてくれて ありがとう
これからもずっとふたりで 仲むつまじく暮らしてね
実話です。
うちの父が、リアルにそう言ったんです。
メスの蛍は飛びながら光らないとか、そういうことを言ったら負けです←
そういう意味のキーワードであります。