許せない過去②
体育館の外には、数人の後輩が待っていた。
さきほどまで俺らの試合を見ていたが、いち早く下がってきていた。
「ごめんな、負けちまったわ。」
みんな、悔しそうな顔をしている。自分たちのように思ってくれているのだろう。
言葉を発しようとしているが、かける言葉が見つからないようで視線がそれていく。
「えー、俺からいうことは二つです。ホントはキャプテンの仕事なんだけど
絶賛泣き中だから代わりに俺が言います。こころして聞け。」
「はい。」
全員の目がまっすぐこっちを見る。なんか、良い後輩だと思ってしまう。
「まず、俺らは引退します。もうこれは決定事項です。
うれしい人、悲しい人いると思いますが、とりあえずお前らが次の時代です。
もう、誰も助けてくれない。自分たちで考えて行動すること。」
「次に、チームについて。俺らは何も教えれなかったです。
だから、自分たちのまったく新しいチームを作ってください。
お前らにはまだ先があります。」
「はい!」
多分、俺らよりいいチームになると思う。俺らはあまり仲良くなかったし。
ってか、俺とうちのエースが仲悪かっただけなんだけど・・・
それに、個々の能力なら後輩のほうが上だし、うん頑張れるだろう。
「じゃあ、俺は先生のとこ行かなきゃいけないから。」
「ありがとうございました。」
後輩が礼をしているのをあとに俺はちょっと足のスピードを速めた。
「おいおい、俺はここにいるぞ。」
「あ、先生!おつかれです。」
少し、目が赤い。先生も悔しかったのだろう。
今回のゲームは采配勝負でもあったのだから。読み負けた自分に怒っていたのかもしれない。
「すまんな。俺が不甲斐ないばっかりに。」
「そんな!俺らはやることをやったんで、もう実力差と思ってます。
俺らがちょくちょく練習サボってたのが悪いんですよ。」
しばしの沈黙。言いたいことはやまほどあるが、正直さきほど終わったばかりなので
俺も先生も辛い。それでも、俺はこの沈黙を破る。
「いままで、ありがとうございました。」
「おう。次は受験だから勉強やれよ。」
「・・・考えておきます。」
俺も先生も笑いだす。少し気が楽になった。
正直、さっきの試合の敗因は先生の采配と俺のラストミス。
「高校でバスケはどうするんだ?」
高校で、バスケ、か。正直つらいだろう。
もう一度、あのミスをやりそうで・・・・
俺にとって、最大の消えない過ち。過ぎてしまった過去。
それに、俺の脚だってもう・・・
「たぶん、やらないと思います。いろいろあるんで。」
「そうか。まあ変わるかもしれないからな。
暇になったらいつでも部活に来いよ。」
「はい。」
先生は、監督室に入っていく。俺はそれを見た後「ふー」とため息をついた。
これでようやくやることはやった。
「さて、キャプテンを慰めに行きますか。」